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相性の二重人格

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 という感覚で、性的欲求による緊張感が薄れてくるのであった。
「こんな感覚は久しくなかったな」
 と、確かにかつて感じたことのある感覚だったことを覚えているのだが、なつかしさというよりも、
「初めて感じるはずなのに、何かおかしい」
 という気持ちも強かったのだ。
 昼下がりを風俗街に向かうというのも、何かおかしな感覚だった。
 その日は久しぶりの平日の休みだった。普段はあまり使わない年休だったので、今までは、国家の方針で、年間5日は使わなければいけないという年休は、会社に任せていたが、今回は、法律が変わって初めて自分から、
「この日、年休がほしい」
 と言ったのだ。
 そもそも、その日を、
「童貞喪失日」
 と決めておいたからのことだった。
 写真の女の子は、風俗街に近づいていくうちに、誰に似ているかということが次第に思い出せる気がした。
 そして思い出してしまうと、もう疑いようのない感覚であることが分かると、冷めてきたのがなぜなのかというのも分かった気がした。
 その女性は、高校生の頃、好きになった初恋の相手だった。
 しかも、自分の中で、彼女は、
「永遠の女子高生だった」
 といってもいいだろう。
 だから、コンセプトが、
「制服」
 ということで、コスチュームが制服だったのと、彼女が好んでしていた髪型である、
「ポニーテール」
 を見て、直観で、
「初恋の彼女だ」
 と思うと、頭から離れなくなったのだった。
「正直、顔は隠しているので、余計に初恋の相手がどんな顔をしていたのか?」
 ということは、完全に忘れてしまっていた。
 思い出そうとしても、顔を隠していることで思い出せなくなってしまったようで、それが、苛立ちを呼んだのだ。
 しかし、その苛立ちが却って、
「この子に会いたい」
 という感情を掻き立てた。
「初恋の彼女に似ている」
 というだけで選んだわけだが、最初は若干の躊躇があった。
 しかし、なぜ若干の躊躇があったのか、それが分からなかった。そもそも、躊躇するとすれば、それが、若干というのが中途半端に思えたからだ。
「そっか、自分が高校時代に中途半端な感情しかなかったので、彼女と付き合うことができなかったんだ」
 と思ったのだ。
 中途半端な気持ちというのは、
「この人が好きだ」
 という感覚よりも、
「告白して、あしらわれたら、恥ずかしくて、次の日から顔を合わすこともできない」
 と、まずは、あしらわられることが前提で考えていた。
 だから、
「顔を合わすことができない」
 と感じると、
「学校にいけない」
 ということで、自分が引き籠ってしまうと思ったのだ。
 そして、その引き籠るという感覚が、まるで、実際に起こることを予感させたことで、まるで、
「正夢を見ている」
 という感覚に襲われた。
 だから、世間で言われる、
「引きこもり」
 というものを、普段から意識していた理由がその時に分かった気がしたのだ。
「俺が何かをしようとすると、絶対に失敗し、結局は、誰にも顔を見せることができなくなり、それが引き籠りになってしまうのだ」
 と感じたことを思い出すと、風俗嬢の女の子たちが、顔を隠していることと、自分の気持ちがリンクした気がしたのだ。
 もちろん、
「顔バレしないため」
 ということは分かり切っているのだが、自分の高校時代に思っていた、実際にはしたことはなかった、
「引きこもり」
 を彼女たちにも感じさせ、その思いが、自分の気持ちの中で、誤解には違いないが、リンクする気持ちを感じさせたのだ。
 それが、
「懐かしい」
 という気持ちを思い起こさせ、実際には、
「引きこもったことなどない」
 にも関わらずのなつかしさに、矛盾を感じることで、彼女との対面が近づく自分が、次第に冷めてくる感情を抱いてきたのを感じさせた。
「キャンセルするか?」
 とまで思ったが、
「キャンセルすると金を取られる」
 と書いている。
 もちろん、そんなことは当たり前であるが、別に、
「金がもったいない」
 と思ったからではなく、
「キャンセルということ自体が、逃げてるようだ」
 ということで、
「引きこもりは仕方がないが、逃げるという感覚は嫌だ」
 と感じたのだった。
 だから、
「楽しみなはずなのに、どこか引っ込み思案なところがある」
 という不思議な感覚に、何か、こそばゆい者があり、それが、不思議な感覚を思わせるのであった。
「初めての風俗街」
 昔のように、客引きがいるわけではないが、店の前には、店の人なのか、男の人がいてみたり、おばさんがいたりした。
 目を遭わせるのが嫌で、わざと見ないようにしていたので、相手がこっちを見ているかどうか分からなかった。
 中には、
「お兄さん、店は決まった?」
 といってくる人もいたが、それを無視して歩き続けた。場所は分かっているつもりだったからだ。
 途中に、何軒か、
「無料案内所」
 という建物があった。
 その日は、遅れないようにということで、かなり早く出かけてきたので、正直、時間が少し余ってしまったのだ。
「まだ、30分近くも予約の時間まであるぞ」
 ということなのだ。
 後学のつもりで、立ち寄ってみたが、半分は、
「気持ちを落ち着かせるため」
 ということであった。
 中には、無言で広告を見ている客がいて、案内所の人は、あまり自分から声を掛ける様子はなかった。
「なるほど、心得ているんだな」
 と思った。
 だから、葛城も、
「なるべく顔を合わさないように」
 ということを考えていた、
 声を掛けないということは、
「相手のアイコンタクトを待っているのかも知れない」
 と思ったのだ。
 相手が、何か聞きたいと思っても、声を掛けることを憚っている人であれば、目で訴えるということもあると考えたのは、葛城自身が、
「人とのコミュニケーションを取るのが苦手だ」
 ということを考えているからだったのだ。
 だから、葛城は顔を合わせることなく、自分が目指している店の広告を探した。
 そこには、女の子全員が映っていて、ネットで見た時の顔に比べれば、若干、露出が大きい気がしたのだ。
「なるほど、ここは風俗街だからなのかも知れないな」
 と感じた。
 そう思うと、
「すでに、自分は敵の城の内部に潜入しているんだ」
 ということを覚悟するべきなのだと感じたんおだ。
「さらにまだ時間があったので、いろいろな店のいろいろな女の子を時間が許す限り見てみよう」
 と感じた。
 そこにいた時間は、たぶん、15分くらいだっただろうか。店の中にいる間は、結構長かったような気がしたが、案内書を出て、実際に、目指す店に向かっている間に思い出してみると、
「あっという間だった」
 という気がしてならなかった。
「ここまでくれば、逃げるわけにはいかない」
 と感じたと言えば、ウソになるかも知れない、
 すでに、覚悟はできていて、これから起こるべきイベントを単純に楽しみにしていた。
 これは精神的な余裕というわけではなく、
「初めてのはずなのに、初めてではない」
 という感覚になっているからということではないだろうか?
 そう、初めてではないという感覚から感じた思いは、
「冒険」
作品名:相性の二重人格 作家名:森本晃次