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相性の二重人格

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 という言葉で表せるような気がしたのだ。

                 郁美の真実

 店の受付で、
「予約していた者ですが」
 ということで、指名嬢の名前を言った。
「葛城様ですね? お待ちしておりました」
 ということで、まずは、コース、時間の確認を行い、お金を払ったところで、
「こちらでしばらくお待ちください」
 といって、待合室に案内された。
 そこには、3人ほど、待機している男性がいて、彼等は、無口で、それぞれに、スマホを弄っていたり、マンガを読んでいたりした。ミニターではテレビが映っていたが、誰も見てはいなかった。
 静かにたたずんでいるようだが、異様な雰囲気であることに変わりはない。見るからに、
「皆さん、何度も経験あるんだろうな」
 ということで、
「これが、待合室での正しい待機方法なんだ」
 と勝手に思い込んでいた。
 すると、スタッフが、
「こちらにご記入ください」
 ということで、一枚の用紙と、筆記具を持ってきた。
 そこには、アンケート的なものというよりも、その日の要望を書く欄があったのだ。
「なるほど、最初に聞いておいて、部屋に入ってからの時間を有意義に過ごそうということか?」
 ということくらいの察しは葛城にはついていた。
 初めてだったので、あまり過激な希望などあるわけもなく、無難なところで答えておいたので、すぐに、用紙を埋めることができた。
 順番通りに案内されるので、最初からいた人が、すべていなくなるまでに、約15分くらいかかっただろうか、その間誰も入ってこなかったので、自分一人が残る形になったのだ。
 その日、指名した女の子の名前は、
「静香嬢」
 という名前だった。
 他の客は。皆、スタッフが番号札の番号を呼ぶことで部屋の外に消えていくという感じだったので、一人残った葛城は、スタッフに呼ばれるのを、今か今かと待っていたのだ。
 すると、意外にも、そこに現れたのは、男性スタッフではなかった。
 制服を着た女の子が現れ、最初は、
「何だ? 何が起こったんだ?」
 と、自分とは関係のないことだろうと思っていたが、彼女が葛城のところにやってきて、
「こんにちは、静香です」
 というではないか。
「えっ?」
 というと、彼女はその表情に対して、にっこりと笑顔で、まるで、勝ち誇ったような顔を見せるが、その顔にあどけなさがあったので、心地よさしか感じなかった。
「さあ、こっちですよ」
 といって、待合室から、自分を誘い出してくれた。
 あとから知ったことだが、
「この店は、待合室に誰もいなくなれば、女の子が待合室まで来てくれる」
 というサービスをしているということだった。
「どうして来てくれたのか?」
 というのを静香に聴いてみると、
「他に誰もいない時だけね」
 という。
「どうして?」
 と聞くと、
「だって、もし待合室に他にお客さんがいるとして、その人が自分の本指名だった場合、お互いに気まずいでしょう?」
 というのであった。
「本指名とは?」
 と聞くと、
「二度目以降のお客さんということで、私たちからすれば、馴染みのお客さんね、これは馴染みの飲み屋の場合でもそうでしょう? もし、常連さんが、他のお店に乗り換えようとしているかも知れないということが分かれば、これほど気まずいことはないでしょう? でもそれはお客さんの自由でもあるので、それだったら、知らぬが仏ということで、お互いに知らないことが幸せだってことになるのよ」
 というのだった。
「へぇ、いろいろあるんだね?」
 と聞くと、静香は、
「お客さんは、こういうお店初めて?」
 と聞くのだった。
「ああ、初めてなんだ」
 といって、そこでやっと、自分が初めてだということをいうことができて、少し肩の荷が下りた気がした。
 そして、さらに彼女の顔を再度見ると、
「やっぱり、初恋の女の子とは、まったく違った感じだったな」
 と思い、がっかりした気分ではあったが、それよりも、逆に安心した気分にもなっていたのだ。
 店に来るまで、何度となく気持ちが、上がったり下がったりした。
 しかも、対面してから、最初は、
「自分が、初恋の人をイメージして店に来たはずなのに、すぐにそのことを忘れていて、顔を見ても何も感じなかったというのは、似ていないということを自分の心の奥が感じたからなのかも知れない」
 と思ったのだ。
 こうなったら、
「まな板の上の鯉」
 も同じことで、
「初めてきたということに負い目を感じる必要もない。何しろ、静香も自分が初めてだということを告白すると、まるで子供の用にはしゃいでいた」
 それを見ると、
「いかにも、学生服が似合う女子高生」
 という感覚だったのだ。
 静香と恋人気分だと思うと、
「自分が高校生に戻った」
 という気がした。
 この店を選んで、この店に来るまでは、自分が高校生に戻った感覚になるなどということを想像もしていなかった。
 何といっても、
「今まで知らない大人の世界に入りこむ」
 ということで、あくまでも、
「制服はシチュエーションでしかない」
 と思っていたのだ。
 しかし、この部屋に来て、
「高校生に戻った気がする」
 という感覚でありながら、実際には、
「まな板の上の鯉」
 なのであった。
 それこそ、どこか矛盾した感情なのに、心地よさがある。
「これが、風俗の魅力なんだろうか?」
 と葛城は感じたのだ。
 そして、時間たっぷりに無事に、
「童貞喪失」
 というものを終えた。
「どう? 味気なかったんじゃない?」
 と言われ、図星だったことで、うろたえてしまったが、その様子から確信したのか、何も言わなかったが、その笑顔が、
「なんでも知っている」
 と言わんばかりの余裕を感じさせた。
 静香という女性は、服を脱ぐと、明らかに大人の女性だった。
 ぽっちゃりしていたが、制服姿には、
「幼児体形」
 というものを思わせ屋が、服を脱いでからは、なぜか、
「母親」
 という感覚を覚えさせたのだ。
 しかもその母親というのは、実の母親ではなく、郁美の母親である、
「義母」
 だったのだ。
 確かに、義母は、父親よりも、かなり年下で、妖艶な雰囲気を醸し出しているが、年齢的には、まだまだ当時は40代前半だったので、
「年の離れた姉さん」
 といってもいいくらいだった。
 ただ、その頃までは、母親を、性的な目で見たことはなかった。
 その理由の一つとして、
「義母を性的な目で見てしまうと、妹の郁美まで、性的な目で見てしまうことになりそうで怖かったのだ」
 それを感じた時、
「はっ」
 と何かを閃いた気がした。
 というのは、
「自分にこれまで彼女ができなかった」
 ということだった。
 確かに、父親が再婚するまでと、自分が大学を卒業するまでくらいは、
「モテないのは、自分の責任」
 ということになるだろう。
 そして、
「その延長線上で、今がある」
 と思っていたが、風俗に行って、静香を見て、そこで、義母を感じたその時、何かを悟った気がしたのだ。
 そもそも、静香を選んだのは、
「初恋の人のイメージ」
作品名:相性の二重人格 作家名:森本晃次