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相性の二重人格

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 兄妹といっても、結構年齢が離れている。
「義母と義妹と、どっちが近いんだっけ?」
 というほどの年齢差だった。
 それを思えば、
「オンナとしての意識は、義母の方が近いのかも知れないな」
 という思いから、
「最近では、義母に対しても、オンナをしてみている自分を感じてしまったりした」
 といえる。
 しかし、すぐにそれは打ち消した。
 やはり、義母に対して感じる思いは、
「母親という感情だ」
 と思うのだ。
 それは、
「母親というものが、死んでしまったことで、母親に対するあこがれが絶対にある」
 ということから。そもそも、義母を受け入れたと思っていたからである。
 いくら、義理の息子とはいえ、娘がまだ中学生に入るくらいの若いお母さんに対して、
「オンナをしてみないわけはない」
 それを、
「母親として感じることができたのだから、オンナとして見るよりも、母親として見る方が強かったに違いない」
 まあ、
「男の子には、母親が必要だ」
 などという年齢でもない。まだ、小学生くらいであれば、それも無理はないのだろうが、思春期を越えてきた男に子には、そんなことはいえないだろう。
 ただ、
「妹に対して、好きになる感覚を、自分の中で、許せないと思っているのだとすれば、それを排除するというために、母親の存在を必要としたのかも知れない」
 だから、そういう意味で、
「血がつながっていない」
 ということは、よかっただろう。
 ただ、今度は、その思いが偏りすぎて、
「今度は、妹に気持ちが移ってしまったことで、自分の気持ちが許せない」
 という、
「どっちに転んでも、許せない気持ち」
 という、一種のジレンマに陥ってしまったのだ。
 そう考えているうちに、
「こんなに揺らぐくらいだったら、却って、血がつながっていてくれた方がいいのではないか?」
 と思うようになった。
 そう思うようになると、まるで、
「それを待っていた」
 でもいうかのように、その話が現実味を帯びてくることがあったのだ。
 それが、
「私。今度結婚しようと思っているの」
 という、郁美の告白だった。
 郁美はいう。
「お兄ちゃんは、私のずっと憧れだったの。言ってみれば、好きだったのね。でもお兄ちゃんは好きになってはいけない人だったの。お兄ちゃんには、何のことだか分からないと思うんだけどね」
 という。
 いきなりそんなことをいわれても、
「いやいや、何を言っているんだい」
 と口では言ったが、なんとなくその気持ちが分かる気がして、そして、それが、
「自分にとって、一番言われたくない」
 と思っているということだと分かっていた気がする。
 それを分かるのか、郁美は、抵抗することもなく、白状した。それは、
「いうつもりになっているので、一気に言ってしまわないと、最終的に何も言えなくなる」
 ということであった。
 だから、意を決して、郁美はいう、
「じっつは、お兄ちゃんと私は、血がつながっているの」
 というではないか、
「えっ」
 過去に何度か考えたことではあったが、
「物理的にありえない」
 と考えることで、簡単に討ち消してきた考えだった。
「どういうことなんだい?」
 と訊ねてみたが、
「私のお父さんは、今のお父さんであって、お父さんとつながっているのよ」
 というではないか。
「えっ、じゃあ、僕と郁美は、異母兄弟で腹違いの兄妹ということになるのかな?」
「ええ、そういうこと」
 と言った。
「それをどうして君が知っているんだい?」
 と言われ、郁美は、
「お母さんから聞かされたの」
 という。
「どういうことなのか、よく分からないんだが、じゃあ、あの親父は不倫をしていたということなのか?」
 と聞くと、
「ええ、そういうことね。しかも、お父さんは、あなたのお母さんと結婚している時、私のお母さんがあなたのお父さんの会社にパートで勤めていたことがあったんだけど、その時に手を付けたということね」
 ということであった。
「君のお父さんは?」
「お母さんが私を知グルマザーとして育ててくれていた時に、結婚してくれたんだけど、私を育ててくれていたお父さんも、私が小学生の時に死んでしまったの。だから、またシングルマザーになったんだけど、そんな時、お父さんと出会ったらしいの、しかも、私のお母さんのことを、お父さんは覚えていなかったらしくて私の母にプロポーズしてきたということなのよ」
 というではないか。
 それを聞いて、葛城は、
「驚いた」
 というよりも、正直、
「呆れた」
 と思った。
「それで、お母さんが承知したということだね?」
「ええ、義父が亡くなって、途方に暮れていたという時で、しかも、最初はシングルマザーだったけで、義父と結婚して幸せな生活が手に入ったのに、それが、また一転、シングルマザーということで、お母さんは、前のように、私を育てる自信をすっかり失っていたということだったのよ」
 という。
「でも、人情的に、親父と結婚するという気分になれるものなのだろうか?」
 と言ったが、
「それだけ、背に腹は代えられないということだったんでしょうね。それだけお母さんは大変だったということでしょうし、私を育てるということを最優先に考えたことで、自分のプライドを捨てたということだと思うの」
 と言った。
「その気持ちは分かる気がする。俺も、母親を亡くしているので、肉親が亡くなるという気持ちは分からなくもない」
 というと、
「ええ」
 といって、寂しそうに答えたのだった。
「じゃあ、親父は、君が実の子だということを知らないのかい?」
「ええ、知らないと思うわ、少なくとも、お母さんが話しているとは思えないし」
 ということであった。
 お父さんとお義母さんは、愛のない結婚だったということか?」
 というと、
「お父さんがどう考えていたかは分からないけど、お母さんには、その気はなかったdしょうね」
 ということであった。
「愛のない結婚」
 ということを考えると、
「なるほど、確かにこれほど、情けないということはない」
 と思えるのだった。
 それにしても、父親の所業は、
「実にお粗末」
 といってもいい。
「知らぬが仏」
 というべきか、それとも、
「運命のいたずら」
 というべきか、
 その事実が、結局、どういうことに繋がるのかということは、
「神のみぞ知る」
 ということである。
 こんな、本来であれば、
「墓場まで持っていこう」
 と思うような秘密であり、少なくとも、
「義母は、そう思っているであろう」
 と思えるようなことを、郁美はなぜ話したのだろうか?
 しかも、郁美自身も、
「結婚したい人がいる」
 という本気なのか分からない告白で、明らかに、
「家を出ようとたくらんでいる」
 といえるようなことをしているのだ。
「郁美は、結婚したいと思っているその男が好きなのか?」
 と聞かれて、何も言わずに、答えようとしない。
 そこで、郁美は、
「自分のことを思い図ってくれている」
 という葛城の気持ちが熟すのを待っているかのように、まるで、その場が、
「我慢比べ」
 でもあるかのようにお互いに耐えていると、そこで、
「私を抱いて」
作品名:相性の二重人格 作家名:森本晃次