相性の二重人格
「男と女の関係において」
と思えば、
「これが本当の大人の世界を覗いたことになるのではないか?」
と感じたのだった。
特に、相手が義母であり、大人になったその時の感覚が、
「俺にとっての義母は、本当の大人への階段だったのではないか?」
と感じたではないか。
しかも、昨日までは、
「郁美のことばかりを意識していて、それが、大人になり切れない自分の結界のようなものではないか?」
と思っていた。
しかし、実際に蓋を開けてみて、その結界の正体を見た時、
「そこにいたのが義母だった」
と考えると、それは、自分の中の何が影響しているのかを考えさせられたのだ。
その日の義母は、確かにおかしかった。
確かに、
「大人になったことで、見えなかったものが見えてきた気がする」
ということで、大人というものを感じたからだ。
ただ、義母が、
「何かをしたから、余計に、自分の身体が反応したのでは?」
と思ったが、最初はそれが何なのか分からなかった。
だが、義母に対して、静香を感じさせ、二人がシンクロしているという感覚に陥ったのだが、それが、
「匂いというものである」
と感じさせるまでに少し時間が掛かった。
それを、
「フェロモンだ」
と感じると、
「ああ、静香の部屋でも、感じた匂いで、安心感を感じさせたのを思い出した」
と思った。
「安心感が余裕を生む」
ということで、それまで童貞というものを自分が何故意識していて、意識したゆえに、捨てることができなかったのかを感じた。
それは、
「モテない」
ということを理由に、
「捨てる相手は、好きになった人でないといけない」
などと、まるで、教科書に書いていることのような感覚で、
「自分を納得させ」
さらに、
「正当性を示そう」
ということで、
「自分がいつも正しい」
と思いたかった。
ただ、そう思うということは、
「絶対的な正義が自分にないといけない」
ということで、少しでも、まわりが認めないことはしてはいけないと思うようになっていた。
もっとも、これは、親父の性格に現れているということは前から感じていて、
「これこそ遺伝なんだ」
ということで、
「こんな遺伝、ない方がいい」
と思っていたのだ。
ただ、そんな父が、義母と結婚した時も、
「父親なりの優しさからではないか?」
と思うようにした。
そうでもしないと、自分の意志を確認することもなく、勝手に再婚してしまったのに、義母も、郁美も何も文句を言おうとしない。
それだけ、父親に、
「カリスマ性のようなものがある」
ということなのか、それとも、
「洗脳してしまった」
ということなのか?
ということを考えてしまった。
どちらも、あまりいいイメージは持てないが、逆にいえば、
「カリスマ性がなければ、二人を救うこともできない」
と、父親擁護の感覚を、葛城が思っていたのだった。
「父親なんて、どこが偉いんだ?」
と最近は思うようになっていた。
それは、義母と郁美が、最初に家に来た時のような目を父親に対してしなくなったからだ。
最初の頃は、明らかに、
「慕っている目」
というものがあり、それは、息子の葛城ですら、
「嫉妬」
のようなものを感じるほどであった。
しかし、今となって感じるその視線は、
「慕っている」
というものはなく、そもそも、視線を父親に向けるということはなかった。
特に、義母には感じられることであり、それこそ、まるで、
「結婚したことを後悔しているのではないか?」
と感じることだった。
そういう意味で、
「就職してから、家を出ることができた」
というのは、本人たちには言えないが、
「ありがたいこと」
であった。
「こんな息苦しさからは、一刻も早く逃れたい」
と思ったのだ。
少しでも離れれば、また違った目で二人を見ることができるからなのであったが、だから、今は時々実家に帰ってくるようになったのだ。
しかも、
「童貞喪失」
というのがこの時期になったというのは偶然ではなく、
「今大人になれば、二人の気持ちも分かるかも知れない」
ということで、
「俺はこの時のために、童貞のままいたんだ」
と思うことで、ちょうどいい、
「自分を納得させられるタイミング」
ということでの、
「童貞喪失だった」
ということになるだろう。
それを思えば、
「この日の義母の自分に対しての態度」
というのは、
「前から想像していた」
いや、
「夢に見ていたことが、まるで、正夢となって現実に起こったことではないか?」
と感じるのであった。
続郁美の真実
童貞喪失から数日が経った時のことだった。
葛城は、家にいる時、それまで、
「まさか?」
と思っていたことを知ることになった。
そのことを知ってしまい、その事実が自分に、どのように影響してくるのか?
ということを考えると、それこそ、
「まさか?」
という心境になってくるということを想像もしていなかったということになるだろう。
今まで、自分が考えていたことで、気になったのが、やはり、
「郁美のこと」
ということであろう。
最初はさすがに、
「妹だ」
ということで、意識してはいけないと思っていた。
しかし、それを意識しないといけないと感じたのは、
「郁美が、俺のことを意識しているように感じる」
ということからであった。
「俺は兄貴なんだ」
ということで、確かに、
「血のつながりがない」
ということで、好きになっても構わないというのは。
「理屈の上で」
ということであった。
しかし、
「恋愛感情には、誰にも言えない」
という感情であり、
「そこには、大なり小なりの、秘密めいたものがあるはずだ」
ということであった。
それが、自分たち二人の間には、
「血のつながりがない、義理の兄妹だ」
ということであった。
これが、本当に血のつながりがあるということであれば、曲がりなりにもなのかも知れないが、
「諦めがつく」
ということになる。
しかし、諦めようと思っても、
「血のつながりがない」
という事実を考えると、
「妹を好きになっていいんだ」
と感じるのだ。
そこで、
「いいんだ」
ということになってしまうと、自分に対して、
「甘え」
というものが生まれてくることになる。
そう思うと、
「最初から一刀両断であれば、こんなにも悩むことはないんだ」
と思うのだ。
そんなことを考えていると、自分でも分からないうちに、
「意識してはいけない」
と思いながらも、知らず知らずのうちに、見てしまっているのだった。
「郁美が、こっちを意識するようになったのは、こっちが見てしまったからだ」
ということになるということを、その時の、葛城は分かっていなかった。
その時、郁美は、非常に戸惑っていた。
それは、
「兄から見つめられることに戸惑った」
ということなのか、そもそも、
「男性と付き合ったことがなく、免疫ができていないことで、そこで意識してしまったのか?」
ということを感じていた。