複数トリックの組み合わせ
ということになってきた。
それまでの
「父親の威厳」
というものは地に落ち、
「家族全員で努力しないと、家族が先ゆかなくなる」
ということで、
「体裁を取り繕ってばかりはいられない」
という時代に突入したのだった。
そもそも、時代は、
「父親の威厳」
というものが、少しずつなくなっている時代に入っていたのかも知れない。
それまで、
「給料袋というものに、現金を入れての、現金支給」
というものが、給料だったのだが、それがそのうちに、
「銀行振り込み」
という形に変わった。
これで、
「銀行も儲けがあった」
ということであるが、もっといえば、
「ある事件を発端に、現金支給というものが、銀行振り込みに変わっていった」
ということであったが、その事件というものが、
「三億円事件」
というものであった。
この三億円事件というのは、
「ある会社の給料を運ぶために、現金輸送を行っていたが、それに目を付けた犯人が、白バイ警官に扮し、結局は、その現金をせしめる」
ということに成功し、大きな社会問題を引き起こしたのだった。
幸いに、死人もけが人も出なかったが、
「給料を運ぶ、現金輸送車が襲われた」
ということで、企業もさすがに、
「現金支給」
というものが怖いと思ったことだろう。
それから、
「給料の銀行振り込み」
というものが普及してきて、結局、
「現金支給」
というのは、
「アルバイトくらいしかない」
という時代になってきたのであった。
その頃までは、
「給料日には、お義父さんが給料というお金を持って帰ってくれる」
ということで、
「父親の威厳」
というものが、形になって現れるという日があったのだが、銀行振り込みというものになってから、その、
「父親の威厳の日」
というものが、なくなっていったのだ。
殺害依頼
そんな、バブル崩壊から、
「家長制度」
というものも崩壊してきたことで、次第に、
「我慢をしない」
という風潮が出てきた。
「我慢をして、頑張っていけば、最終的に老後などの保障が待っている」
という時代ではなくなってきた。
将来においては、
「年金制度」
というのが、崩壊してくることになるのだが、それまでは、
「一つの会社にずっと勤める」
ということが、ステータスのようになっていて、それにより、
「終身雇用」
であったり、
「年功序列」
というものが当たり前という時代になってくるのであった。
それにより、
「理不尽なことであっても、会社で頑張っていけば、年齢とともに、出世と、給料の増加は保障されているようなもので、結局。理不尽なことのために、我慢をする」
ということで、
「父親は、家族のために、我慢をして仕事をしている」
ということで、
「家において、父親の威厳というものが守られる」
ということになるわけである。
しかし、
「バブルの崩壊」
とともに、
「年功序列」
だけではなく、
「終身雇用」
すらなくなってきた。
今までのような、
「会社に入れば、最後まで勤め上げるのが当たり前であり、途中で辞めるというのは、我慢が足りないからだ」
と言われていた時代ではなくなってきた。
もちろん、中には、今でいうところの、
「ブラック企業」
として、本当に理不尽な会社があり、
「新卒の募集人数が結構ある」
という会社は、一見、
「門戸が広い」
ということで、何も知らない人は、
「いい会社であり、新人を育てることに長けている」
と考えるかも知れないが、ウラを返せば、
「嫌になって辞める人が一年以内にたくさんいる」
ということを見越して、最初から
「辞める社員ありき」
ということで、社員を雇っているということなのである。
ここでも、
「表面上だけを見ていると、裏に潜んでいるものを見ることができずに、信じてしまうことで、取り返しがつかないということになる」
ということなのであろう。
ただ、今では、
「今、ブラック企業と言われている会社の考え方が、昭和の時代には当たり前だった」
というのも事実である。
特に今の時代では、
「コンプライアンス」
というものがあり、
「嫌がらせ」
ということである、
「ハラスメント」
というものが、昭和では当たり前だったのだ。
だから、そんな当たり前のことと言われていた時代でも、
「さらにブラック」
と言われた時代があったのだから、これ以上の理不尽さというのはないといっても過言ではないだろう。
だから、その時代や、今の時代の良し悪しというのは別にして、
「昭和時代の人は、今から見れば、相当に我慢強かった」
といえるであろう。
そして、
「我慢ができなくなった」
あるいは、
「我慢しなくてもよくなった」
と言われる時代が、どこかをターニングポイントとして存在し、今の時代に繋がっているということであろう。
その時代というのが、考えられることとして、一番大きいものが、
「バブルの崩壊」
ということであったというのが定説であり、間違いないといえるのではないだろうか?
その証拠としての事例は、実際には山ほどあるかも知れない。
一つは、
「我慢して、一つの会社にしがみつく」
ということがなくなったということであろう。
そもそも、バブルの崩壊ということにより、
「会社の方が、社員を首にする」
という、リストラ政策をしてくるわけなので、本当は、辞めたくない会社なのかも知れないが、辞めなければいけないという立場に追い込まれるということだってあったのだ。
実際には、
「年功序列」
や、
「終身雇用」
というのは、
「日本独自の社会」
とも言われていて、昔から、欧米などの先進国では、
「実力至上主義」
ということで、
「実力さえあれば、いい会社にいくらでも行けるし、引き抜きにも遭う」
ということになるのだった。
ただ、あくまでも、
「実力重視」
ということなので、年齢を重ねても実力がなければ、出世も給料のアップも望めないといってもいいだろう。
完全実力主義ということは、あくまでも、
「企業と人間の契約」
であり、そこには、明記されてはいないだけで、
「実力主義」
ということが、社会の常識となっているのだった。
日本も、
「実力主義」
ということに舵を切ったというか、
「舵を取らざるをえなくなった」
ということであるが、それでも、昔からの考え方が、そう簡単に切れることはなく、根底として、
「終身雇用」
という考えは残っているのだった。
ただ、経済はどんどん悪い方に向かい、さらには、
「無能な政治家たち」
による、
「国家運営」
によって、国家が赤字体制からの脱却ができず、さらには、
「厚労省の怠慢」
ということによって、引き起こされた
「消えた年金問題」
というものが、決めてとなり、結局は、
「遅かれ早かれ訪れていた」
と言われてはいるが、目の前に大きな問題として立ちはだかっているのが、
「年金制度の崩壊」
というものである。
これは、
「バブルの崩壊」
作品名:複数トリックの組み合わせ 作家名:森本晃次