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 というものであった。
 実際には、かなりセンセーショナルな話なのだが、彼女の言い方が、そこまでの悲惨さを与えない。下手をすれば、
「悲惨な過去」
 ということでありながら、彼女の中で、
「自慢げに話している」
 という感覚から、
「その、センセーショナルな過去も、まるで、自分の武勇伝だ」
 と思っているのではないだろうか?
 それは、高校時代のことだったという。
 彼女は、子供の頃から、母親に虐待的なことを受けていた。
 さらに、その母親は浮気性で、
「容姿がきれい」
 ということで、
「男をとっかえひっかえしていた」
 というのだ。
 それがある意味、
「ルミには幸した」
 といってもいいだろう。
 母親が何度も何度も愛人をコロコロ変えることで、男がルミにかかわることはなかった。
 もう少しでも長く一緒にいれば、
「ルミに対しても食指を伸ばしてくるクズ男」
 というのもいたはずだとルミは思っていたことだろう。
 そういう意味では、
「助かった」
 と思っている。
 しかし、母親が、男と別れるたびに、そのイライラを娘にぶつけてきたのだ。
「殴る蹴る」
 というのは、日常茶飯事。
 ただ、それも、
「男と別れた時だけ」
 ということなので、ルミとしても、
「そのうちに、こんなこともなくなるだろう」
 と思いながら、結局、数年、同じことが繰り返されたということであった。
 そして、さすがに、高校になると、家を飛び出した。
「暴走族のグループに入るくらいまでグレていた」
 ということなのだが、
「グレて当たり前」
 という環境にいたのだから、暴走族グループは、そんな彼女を受け入れた。
 そして、夜はスナックで、住み込みで働きながら、グループの活動に参加していた。
 その時、ルミは、
「男には興味がなかった」
 というより、今まで見てきた男は、
「母親にダニのように食らいついてくるクズ男」
 なのか、あるいは、
「世の中の裏の部分を何も知らずに、普通に暮らしている」
 という、
「甘ちゃんな坊ちゃん」
 というようなやつしかいないわけなので、
「そんな状態で、どうやって男に興味を持てばいいんだ?」
 ということであった。
 しかし、彼女は、
「母親からの遺伝」
 ということになるのか、
「かわいいというよりもきれい」
 ということで、端正な顔のパーツから、男が放っておくわけはなかった。
 実際に、スナックなどではチヤホヤされた。
 それを、
「男として見ているわけではないが、チヤホヤされることが、こんなにも嬉しいことだったなんて」
 ということで、
「ちやほやされる」
 ということから、
「自分が女王様になれる素質がある」
 ということに気づいたことで、余計に性格が、
「まわりを見下すように見えてくる」
 というのであった。
 だから、彼女のことを好きになる男性もいれば、逆に
「お高くとまりやがって」
 ということで不信感を抱く男もいた。
 そういう意味で、彼女は、
「オンナに対しては、ほとんどが敵」
 ということであったが、
「男に対しては、敵も多いが味方も多い」
 ということである。
 しかも、敵味方、それぞれが紙一重のようであり、しっかり見定めないと、
「誰が敵で、誰が味方なのか」
 ということを分かっていないと、
「いずれひどい目に遭う」
 といえるであろう。
 そういう意味で、ルミは、それを見に染みて感じることになった。
 それは、ルミにとっては不本意なことで、
「ルミに対して恋心を抱いていた男性が、ルミに冷たくあしらわれて、自殺未遂を起こした」
 ということがあった。
 ルミは、
「自分のせいだ」
 という意識はなかった。
 しかし、まわりは皆、男性を気の毒だと思い、彼の友達、さらには、彼を好きだった女性が中心になって、普段から嫌いだったルミを懲らしめようと機会を狙っていた連中に火をつけたことで、ルミが、
「ひどい目に遭う」
 という土台が出来上がったのだった。
 土台が出来上がってしまえば、あとは早かった。
 彼らの中の、
「処刑行為」
 というものを、そのまま遂行すればいいだけだった。
 いわゆる、
「集団リンチ」
 というもので、男が混じっていることから、暴行も入るので、さらにひどいものとなっていた。
 ルミも、必至に虚勢を張るが、
「多勢に無税」
 ということで、結局は、逆らうこともできず、彼女の中では、屈辱に震えながら、時間が過ぎていくのを待っているしかなかったのだ。
 それから、彼女の
「二重人格性」
 というものが、鮮明になってきた。
 それまでは、裏に回った性格というのはあるのだが、自分の中で抑制していて、
「決して、表に出さない」
 ということだったのである。
 実際に、表の部分はあまり変わっていない。
 もちろん、
「暴走族グループに入っている」
 などということであったり、
「かつて、母親に迫害を受けた:
 ということなどは想像がつかないというほど、
「おしとやかな性格」
 だったのだ。
 実際に、頭がよく、表に現れた性格が、
「彼女のすべてだ」
 といっても、表しか知らない人は、誰もがそう信じて疑わないだろう。
 しかし、ウラを少しでも知っている人は。
「裏の彼女というものを想像することは容易であり、最初にウラを気づいた時点で、彼女の感性が、ウラの性格を明らかにするように誘導する」
 ということだったのだ。
 だから、彼女には、敵も多ければ味方も多い。しかし、敵が勢力が強いのと、それぞれの性格が強いことで、味方がまったく目立たない。
 そういう意味でも、彼女のウラを知っているという人は少ないわけで、一度知ると、その人は基本的には敵に回ってしまう。
 それなのに、
「味方も多い」
 というのは、彼女の裏にあたる部分の中に、
「人を引き寄せる何かがある」
 ということで、彼女なりの、
「引き寄せの法則」
 なるものが潜んでいるということだろう。
 そんな彼女が、身に着けたものが、
「人を洗脳できる」
 ということであり、それができるようになったのが、
「暴走族の仲間から暴行された時だった」
 ということである。
 それを彼女は、村雨に話した。
 それを聞いて、普段は人に同情などしたことがなかったくせに、村雨は、その時初めて、誰かに同情したのであった。
 それが、ルミだというのは、
「普段は自分のことを話す」
 というそぶりもないくせに、実際に話してくれたわけであり、それがしかも、
「ベッドの中」
 という、
「ある意味一番心を通わせる場所」
 であったことが、村雨を感動させ、その感動が、
「彼女の相手を洗脳する力だ」
 ということに気づいていなかった。
 実際に、村雨は、
「自分が誰かに洗脳されるということなど絶対にない」
 と思い込んでいただけに、彼女の依頼にびっくりした時も、
「殺害を依頼された」
 ということに対して悩んでいる時も、
「自分が洗脳されている」
 とは思わなかった。
 むしろ、
「洗脳されている」
 と感じると、すぐに、
「ヤバい」
 と感じ、相手から去ってしまおうと考えるだろう。
 それがなかったということは、
「洗脳」