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真実と事実の絡み

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 という様子だったのだ。
 それを見ると、
「一人で自由気ままに」
 というよりも、
「愛の巣」
 という雰囲気に感じられるというのが、河合刑事と、樋口刑事の考えだった。
 となると、
「同居人というか、ここでの愛の巣の相手が、今のところの容疑者」
 ということになるが、
「果たしてそれがどういう人なのか?」
 ということが問題になるが、
「その人がどんな人なのかを知っているとすれば、第一発見者である、管理人と隣人であろう」
 ということで、一通り物色を終えた二人の刑事は、第一発見者に事情を聴くことにするようにしたのであった。
 実際に部屋の捜索において、目新しい情報が出てくることはなかった。
 生活用品としての、女性と思われるものは残っていたが、
「その人が誰なのか?」
 ということを特定するものは、出てこなかったのだ。
 刑事は、警官に案内されて、管理人室に向かった。管理人室にいた二人は、あまりのことに驚愕の状態なのか、まだ、緊張が解けていないようで、
「ひょっとすれば、一言も発していないのかも知れない」
 と思えるほどだったのだ。
「どうもお待たせしました」
 と言って刑事が入ってくると、それまで凍り付いていた空気が氷解したかのように、急に風が吹いてきたかのように思えた二人は、思わず、壁にかかっている時計を見た。
 時間にして、すでにこの部屋に入ってきてから。30分くらいが経っているようだったが、何しろ時間が凍り付いていたと思っているので、感覚的には、
「数分しか経っていないような気がする」
 というのが、管理人と、隣人の気持ちだったのかも知れない。
「通報していただいたのは?」
 と聞くと、実際に現場を見ているわけではない奥さんが、
「はい、私です」
 というと、
「奥さんは、現場を見られたわけではない?」 
 と、樋口刑事が聞くので、今度は、旦那がそれを聴いて、
「ええ、まずは警察に通報するのが先決だという思いと、女房をこのまま、悪臭のある部屋に連れていくわけにもいかないと思ったので、聯絡をお願いしました」
 と言った。
 それを聞いた樋口刑事が、
「なるほど、私たちも、悪臭が漂っているという通報だったので、尋常ではないと思ってきてみましたが、やはりこういうことだったわけですね?」
 というと、
「ええ、私どもも、実際に中を見てから通報するべきか考えたのですが、悪臭が本当にひどいのと、どちらにしても、警察に通報する必要があると判断しましたので」
 ということで、先ほど感じた、
「動物なのか人間なのかの判断はつかなかったが、そこに間違いなく、何かの死体が転がっているということは間違いない」
 と感じたというのを、話したのだった。
 すると、樋口刑事は、
「お二人は、それを人間の死体だと思われたわけですね?」
「ええ、そうです。部屋にはカギがかかっていましたので、部屋を開けるために、管理人を呼びに行ったわけです」
「もし、カギが開いていれば、管理人を呼びにいくことなく、ご自分で確認されましたか?」
 ということを樋口刑事は訊ねた。
「ええ、たぶん、そのままの勢いで中に入ったと思います、一度できた覚悟は、きっと管理人を呼びに行っている間に、萎えてしまうと思ったからで、その覚悟が勇気として持続できなければ、その場にいることが辛いでしょうから、そう思えば、最初に感じた、覚悟と勇気を保つために、私は、一人でも入ったと思います」
 と隣人は言った。
 それを聞いて、奥さんは頷いていたが、その顔は青ざめていて、その時の、亭主の顔が、きっと今までに感じたことのないような雰囲気であることに、ビクビクした思いがあったのだろう。
「恐怖は伝染するもの」
 ということで、
「その場での三人の恐怖は次第に伝染しているようだった。
 それも、一つの恐怖がまるで、
「ウェイブのように、流れている」
 と言ってもいい気がした。
 昔、スポーツ観戦などで、肝心な場面などになると、まるで、
「人文字を描いている」
 というような雰囲気で、波を描くのだ。
 観客の興奮と感動が、大きな波となって、スタジアムを魅了し、
「それが大きな力となって、ひいきチームを後押しする」
 というのが、
「ウェイブ効果」
 というものであろうが、
「最近では見なくなったのは、寂しい限りだ」
 と、河合刑事は感じていた。
 そもそも、サッカーが好きな河合刑事は、中学時代などは、よくスタジアムに行っていた。
 たまにであるが、巻き起こるウェイブには、毎度感動を与えられ、
「これが、スポーツ観戦の醍醐味なんだな」
 と思うのだった。
 それは、
「感動の、伝染のようなものではないか?」
 と感じていたのが、まるで昨日のことのように思い出されるのが、河合刑事には懐かしさを感じさせるのであった。
 ここにいる三人が、警察が来るまで、どれだけ不安だったのかということは、最初に管理人室に入ってきた時に感じた、
「凍り付いた部屋の雰囲気」
 で分かるというものだった。
 悪臭がしてきた瞬間、たぶん、
「嫌な予感」
 というものを直観したことだろう。
 そして、次第にその予感が大きくなってくる。それは、
「悪臭というものが止まらないばかりか、どんどん強くなってきているからであろう」
 そして、河合刑事が想像したこととして、
「管理人を含めた三人が三人とも、お互いに、同じようなことを感じ始めた」
 ということを意識したからではないだろうか。
 というのも、
「その時初めて、三人は、その間の恐怖が、伝染しているということに、初めて気づいたのではないか?」
 と感じたからだ。
 これが、
「三すくみ」
 なのか、
「三つ巴」
 なのか。
 とにかく、
「三つ」
 ということが何かのキーワードになっているのではないかと感じるのであった。
「三すくみ」
 でだったり、
「三つ巴」
 という考え方は、似ているようで、まったく違うという意味で、
「似て非なるもの」
 と言ってもいいだろう。
 三つ巴というのは、それぞれの三つの力が均衡していて、リーグ戦などで、最終的に、3つが同率でトップを取った時など、トップを決める時には、
「巴戦」
 というものが行われるものである。
「三つがそれぞれ総当たりを行い、先に連勝した方が優勝」
 というものである。
 なぜなら、
「総当たりの際に、最初の二戦を戦ったものが、一勝一敗であった場合、次の戦いで、どちらが勝っても、一勝一敗にしかならないということから、先に連勝した方が、巴戦を制する」
 というやり方である。
 つまりは、
「連勝しないと甲乙がつかないというだけ、実力が均衡している」
 と言ってもいいだろう。
 これが、
「三つ巴」
 というものだが、これが、
「三すくみ」
 ということになると、まったく違う。
 というのは、
「力が、三つの場合においては均衡しているが、それぞれに関しては、歴然とした力の差がある」
 ということである。
 つまり、
「じゃんけん」
 であったり、
「ヘビとカエルと、ナメクジ」
 のような関係をいう。
「ヘビはカエルを食べ、カエルはナメクジを食べる。しかし、ナメクジは、ヘビを溶かしてしまう」
作品名:真実と事実の絡み 作家名:森本晃次