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真実と事実の絡み

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「マスゴミが放送している」
 ということだってあるかも知れない。
 それを思えば、ちょうど時間帯が、夕方の帰宅時間ということで、テレビでも、ちょうど、
「夕方の報道番組の時間」
 ということである。
「騒ぎが起こる」
 ということは、避けることはできないだろう。
 そんな時間帯だったので、問題の部屋の前を通る住民の中には、怪しげに覗き込んでいるような人もいた。
 そもそも、この悪臭は、このフロアに充満しているので、文句を言いにこようとしている人もいたが、さすがに事情も分からない人は、その吐き気で近寄ることができなかったのだろう。
 警察がやってきて、鑑識もやってくる。無言で規制線が敷かれ、次第に、
「事件現場の様相」
 というものが築かれていったが、刑事のポーカーフェイスの表情を見ていると、まるで、泊まっているかのように見え、それが却って、
「あっという間の出来事」
 と感じさせるのであった。
 しかし、表に出された。
「とにかく悪臭がひどいので、一時期退避していただけると助かります」
 ということであった。
 しょうがないので、隣の旦那と管理人は、管理人室に戻ることにした。
 旦那の方は、一言奥さんに声を掛けてのことだったが、
「だったら私も」
 ということで、奥さんも管理人室に引き上げていった。
 奥さんとしても、この悪臭の中で、部屋にいるというのは、うんざりだったことだろう。
 刑事と鑑識の捜査が始まった。
 実際に奥に入ると、そこには一体の死体が転がっていた。明らかに腐乱が始まっていて、
「この臭いだからな」
 と、刑事の一人が言った。
 この刑事は、名前を樋口刑事という、最近、この管轄である、
「K警察署刑事課」
 に所属しているベテラン刑事であった。
 彼は、最近コンビとなった河合刑事を連れてやってきていた。
 河合刑事は、ここ、数年で交番勤務から刑事課に赴任してきた、いわゆる、
「ホープ」
 といわれる、これからの刑事だったのだ。
 二人は、鑑識に話を聞きながら、そそくさとあたりを捜索していた。
 パッと見、二人の刑事の共通に感じられたのは、
「この部屋には、生活という感じがしない」
 ということであった。
 確かに、生活するのに、最低限のものは置かれていたが、ここで、作業をするということはなかった、ちゃぶ台と言えば大げさだが、簡易のテーブルは置かれているが、モノを書いたり、作業をする、机やイスというものがあるわけではない。
 タンスもなく、洋服を掛けるのに、最低限必要なものがあるだけだった。
 冷蔵庫も、中古なのか、しかも、そんなに大きなものが置かれているわけではなく、さらには、電子レンジはあるが、調理をするための、肝心のガスコンロが置かれているわけでもない。
「これなら、ウイークリーマンションの方が揃っているんじゃないですかね?」
 と、河合刑事が呟いたが、まさにその通りだった。
 その証拠に、表の郵便受けには何も入っておらず、一階には集合ポストがあるのだが、そこに行ってみると、宅配のチラシなどはあったが、郵便物が配達されたあとはなかった。
 新聞も取っている様子もなかったのだが、これは、最近では、
「新聞を取る」
 という人が、スマホの普及でどんどん減っているということから、あてにはならないということで、あまり気にすることではないだろう。
 二人の刑事が今一番気になっているのは、
「一体、いつ頃死亡したんですかね?」
 ということであったが、鑑識に聴いてみると、
「詳しいことは司法解剖でないと分かりませんが、少なくとも、死後10日は経っているんじゃないですかね?」
 ということであった。
「なるほど、10日も経っているのに、郵便物もそんなにないというのは、この部屋の状況から考えて、この部屋は、住居として使っていたかどうか、怪しいものですね」
 ということであった。
「死因は?」
 と聞くと、
「何か紐状の者で首を絞められているようですね」
 と言いながら、
「ただ、見る感じでは争ったり暴れたりした様子はないので、眠っているところだったかも知れないですね」
 ということであった。
 だが、そこには、眠っていたということを思わせるものはなかった。
 寝床が敷かれているわけでもなければ、その人が着ている服は、寝床に入る服というわけではない、
「この状態で眠っていたということは」
 と、河合刑事が呟くと、
「そうだ、たぶん、睡眠薬か何かを飲まされたんじゃないかな?」
 と樋口刑事は、いうのだった。
 樋口刑事は、そうつぶやいてから、数少ない部屋の物色を始めた。
 まずは、この男が着用していたであろう服を探ってみた。着ている服のポケットからは何も発見できなかったが、架けてある背広のポケットに、定期入れと名刺入れがあったので、そこを見てみると、免許証があり、
「被害者は、貝塚洋一。52歳」
 ということが判明したのだった。

                 貝塚の殺害

 貝塚洋一というと、最近、スナックのママと結婚した、会社社長だということは、賢明な読者諸君には分かっていることであろう。
 しかし、実際に物語の中で、動的に、それも、
「事件」
 ということで出てきたのは初めてであろう。
 会社はそこまで大きくはないが、何とか会社経営に励んでいて、今のところ、
「殺されなければならない理由」
 というのも出てきているわけではない。
 ただ、この場面において、疑問と思われることが結構ある。
 まず、
「なぜ、この部屋で、貝塚が死んでいるのか?」
 ということであるが、どうやら、
「死後10日が経っている」
 ということであるが、まず考えられることとして、
「被害者が、その間、行方不明だったはずなので、その捜索願というものが出ていなかったのか?」
 ということである。
 読者諸君は、被害者の貝塚が、
「会社社長である」
 ということから考えると、捜索願が出ているかどうか、そのあたりが問題だったことだろう。
 ただ、10日くらいであれば、人によっては、特に、独り者などであれば、
「10日くらいなら、休暇を取って、ふらりと旅行に出るというくらいの人は、少なく無いだろう」
 と思われた。
 特に今のように、世知辛い世の中、
「気分転換に旅行する人が増えている」
 という話を聞いたこともある、
 少し前は、
「世界的なパンデミック」
 というもののせいで、行動制限がかかっていたりしたので、その反動からか、旅行者も増えたのではないだろうか?
 そして、もう一つ不思議なのは、
「この部屋の雰囲気」
 ということである。
「生活臭が感じられない」
 ということで、これでは、
「世間の喧騒から離れたい」
 という気持ちがあってか、家に帰るのが億劫だったりして、
「誰にも黙って自分の空間がほしい」
 ということで、自分の小遣いで借りることができるくらいの部屋を借り、
「そこで、自由な時間を得る」
 という人も昔にはいたということを聴いたことがあるが、雰囲気は、
「いかにも、一人で暮らしている」
 という雰囲気に見えるが、いろいろ見てみると、
「男女一対の生活用品が置かれている」
作品名:真実と事実の絡み 作家名:森本晃次