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真実と事実の絡み

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「ここまでひどいとは思わなかった」
 と感じたからだ。
 そして、明らかにこの臭いは尋常ではない。少なくとも、警察案件であることには間違いないということで、まず奥さんにとりあえず、
「警察に通報」
 ということで、部屋に帰らせた。
 その臭いから、少しでも遠ざけてやるという配慮と、
「少しでも早く警察に通報してもらおう」
 という考え方からであった。
 警察に通報させておいて、このまま放っておくわけにはいかない。実際に、ここまでひどい異臭がするということは、考えられることは二つだった。
 実際には、その二つとも、悪質であることに違いはないが、その正体に対して考えたのは、
「死体が転がっている」
 ということだった。
 ただ、それが、
「動物の死体だ」
 ということも考えられ、最悪の場合、
「殺害された人間の死体」
 とも考えられるからだった。
 なるほど、死んでからしばらくたてば、その腐乱状況から、異臭がしてくるというのは当たり前のことだ。
 それが、
「動物だ」
 ということは考えにくいと思われた。
 もし、動物であれば、何があったか分からないが、保健所に通報すれば済むことなのに、それを放置してしまうと、少なくとも、異臭で回りに迷惑をかけるということで、
「何かの犯罪を形成する」
 ということになるだろう。
 少なくとも、賃貸マンションの部屋に、動物の死骸が放置されているわけなので、管理人に訴えられるのは当たり前である。
 そもそも、放っておけばおくほど、異臭がひどくなり、そのうちに、
「その部屋は開かずの部屋」
 ということになり、それが下手に評判になれば、
「このマンション自体が、商売者にはならない」
 ということになる。
 住民はでていってしまうだろうし、そのための住民に対しての弁償ということもなきにしもあらずということだ。
 しかも、新しく住民を入れようとしても、出ていった人からうわさが広がり、不動産屋も扱ってはくれないだろう。
 それだけでも、民事にしても、刑事にしても、その状況は、
「迷惑行為」
 などということで済まされることではない。
 そんな状況になるのを分かっていて、動物を放置するということは、普通の精神状態であればありえない。そうなると、
「動物の死骸」
 ということは可能性が低いだろう。
 そのことを、管理人は、自分の仕事上分かっていた。
 だから、
「一周回るくらいの考え」
 ということから、
「万が一にも、動物ということは考えられない」
 と思ったのだろう。
 しかし、奥さんは、オンナということもあり、
「直観で判断することから、ひょっとすると、動物の死骸」
 ということも考えたかも知れないが、もっと直接的な考えとして、
「人間の死体しか考えられない」
 と感じたのだろう。
 だから、旦那には、二人の声が和音のように響いて聞こえ、それが、理由までは分からないが、
「嫌な予感」
 というものを感じさせたのだろう。
 それを思えば、
「三人が三人とも、その度合いは違うが、考えていることは、同じところにたどり着いた」
 ということになるのだろう。
 実際に、男二人は、それぞれに考えの幅が違っていたが、
「十中八九、人間の死体が転がっている」
 ということを感じていたので、最初扉を開けた時の、真っ暗な部屋が、若干暖かさを感じさせると思ったのだ。
 それは、
「異臭によるもの」
 ということなのか、それとも、
「暗闇の中での湿気を感じさせるからなのか、とにかく、息苦しさは、吐き気を催していた」
 もう、ここまでくれば、
「人間の死体以外のものが転がっているということはありえない」
 と思えてきた。
 二人とも、今までに、
「人間の死体」
 というのを見たことはなかった。
 管理人の方は、仕事上、マンションの近くで死んでいる動物を見つけたり、住民からの通報によって、
「動物の死骸がある」
 ということで、
「保健所に届け、さらに、立ち合いをさせられる」
 ということも、何度かあった。
 だから、
「動物の死骸」
 ということであれば、
「気持ち悪い」
 ということではあるが、だからと言って、放り出すということができるわけもないのだった。
 ただ、それが、
「動物の死骸」
 ということであっても、
「人間の死骸」
 であっても、やることは同じだ。
 つまりは、
「処理をしてもらえるところに連絡して、処理をしてもらう」
 ということであった。
 動物の場合は、
「保健所」
 ということであり、人間であれば、
「警察」
 ということになるのだ。
 ただ、人間の場合は、通報しただけで終わるわけではない、
 それが殺人事件ということであれば、
「捜査をすることで、犯人を捕まえる」
 ということが残っているのだ。
 そもそも、それ以前に、
「その死体が誰であるか?」
 ということから始まり、
「殺害方法、殺害時刻、さらには、犯人が被害者を殺さなければならない動機」
 というものを警察の方で、捜査をするわけだが、これが、
「第一発見者」
 ということになれば、簡単に済むことではない。
「嫌になるくらい、同じことを違う刑事に話さなければならない」
 ということで、第一発見者だって、一般市民ということで、こういうことに慣れているわけではないので、警察に質問されても、正確に覚えていることを話せるわけはない。。
 警察だって、
「目撃者は気が動転していた」
 ということで、少しくらいは、
「いくら証言を得たとしても、それをすべて鵜呑みにできるわけではない」
 ということくらいは分かるのではないだろうか?
 それを考えると、
「今まで第一発見者になったわけではない」
 ということで、自分の証言が捜査に影響するなどと考えると、
「緊張してしまって、何も言えないかも知れない」
 というのも、無理もないことだろう。
 実際に、警察に通報はしているので、まもなくやってはくるだろう。
 ただ、実際に、
「死体を発見した」
 ということでの通報ではないので、警察としても、慌ててくるようなことはないと思えた。
 しかし、
「怪しいと感じたところで、すぐに通報する」
 ということは、
「事件捜査に大切だ」
 と勝手に、管理人が思い込んだことだったが、逆に、旦那の方は、
「こんなに早く通報してもいいものか?」
 と感じた。
 何しろ、
「人騒がせ」
 ということで終わる可能性がまったくないとは言えないからだ。
 旦那の方とすれば、
「十中八九、死骸がある」
 ということを感じながらも、警察への通報を、少しためらったのだから、管理人からすれば、
「人間の死骸があるのは間違いないので、その先はどうすればいいか?」
 ということから考えていると思っていいに違いない。
 それを考えると、
「管理人の方が、落ち着いている」
 ということなのか、それとも、
「自分たちよりも慣れている」
 ということなのか?
 と考えたのだが、どちらにしても、
「あと1時間以内には、このあたりはパニックになるだろう」
 ということは間違いないと思えた。
 規制線が張られ、表には、パトカーが数台駆け付けてきて、中には、
作品名:真実と事実の絡み 作家名:森本晃次