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念には念を

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「その信憑性は、本当であれば、欺瞞でしかない」
 と考えられるが、その考えがあっても、信じるしかないというジレンマを、
「市民はどうしていいのか分からない」
 と感じていることであろう。
「なるほど、あなたは昨日のことが気になってきてみると、まさか、こんなことになっているとは思ってもみなかったというわけですね?」
「ええ、そうなんです。それで、ここを見ていると、警官の人に呼び止められたので、さっきの話をしたというわけです」
 と斎藤は答えた。
 樋口刑事は、その話を聞きながら、そばにポーカーフェイスで立っている警官を横目に見ると、彼が頷いたので、
「言っていることに間違いはない」
 と感じたのだ。
「あなたは、何か起こっているのではないかと思ったからここに来たわけですよね? 殺されているという予感があったんですか?」
 と聞いてみたが、
「ま、まさか、そんなはずあるわけないじゃないですか」
 と大げさに答えた。
 これは、
「本当に最初から分からなかった」
 ということを、
「素直に表現している」
 ともいえるが、もっと考えれば、
「ひょっとしてと思っていたが、それをここでいうと、じゃあなぜ、その時に通報しなかったのか?」
 という状況判断のミスを責められる気がして、しかも、実際に人が死んでいるのだから、
「本人として、その自責の念を掻き立ててしまうことになる」
 と考えさせられるのが怖かったと言ってもいいだろう。
 それを考えると、樋口刑事には、
「どっちなのだろう?」
 ということがすぐには分からなかった。
 ただ、
「何かに怯えている感覚」
 というのはあったのだ。
「何か気になることでも?」
 と樋口刑事は、
「助け船」
 のつもりで話を聞いてみた。
「ええ、実はあれから昨夜の、不届きな様子を思い出していると、どうも、不埒なことをしているとしては、何かおかしいと思ったんです」
 というので、
「何がおかしいと?」
 と訊ねると、
「動きという意味でですね。確かに、セックスをしていたのだとすれば、上下運動は普通にあると思うんですが、その動きが、上下の中に、身体をひねるような動きもあったんです。露骨な言い方をすると、確かにそのような異常性癖といえるようなプレイもあるとは認識していますが、あそこまで不規則なのは、興奮を煽るというよりも、むしろ、苦しみを感じているようにも感じたんです。それを離れてからずっと気にしていたんですが、それをやはり露骨に聞くわけにもいかないし、時間内に、公園内を見回る必要もあるので、気にはなったけど、気にしないようにしようと考えるようになったんです」
 と斎藤はいった。
「その動きというのは?」
 と樋口刑事が聞くと、
「そうですね、下から上の動きが強かった気がするので、下にいる誰かに、首を絞められている。まるで、プロレスの技にでもあるようなものに感じたんです」
 という。
「その時に戻って確認するというところまでは、その時はなかったということになるわけですね?」
 と聞くと、斎藤は、黙って頷くだけであった。
 それを見て、
「斎藤という男は、それだけ曖昧な感覚だったんだろうな?」
 ということを考えると、
「もう少し怪しい方に寄っていれば、殺人事件になることはなかったかも知れない」
 ということで、
「殺人未遂で済んだかも?」
 と考えると、悔しい気分になるのだった。
 それは、一緒に話を聞いていた、河合刑事にも言えることで、その気持ちの強さは、むしろ、河合刑事の方が強いくらいだと言ってもいいだろう。
「若手で血気盛んな有望刑事」
 と言われているだけのことはあるというものであった。
「うーん、当然車の中の人は、君には気づいていないということだね?」
 と樋口刑事がいうと、
「はい」
 と斎藤は答えた。
「じゃあ、君は、その時車の中にいたのは、一人ではなかったかも知れないとは感じるが、今となってはその分かるすべがないと思っているわけだね?」
 と聞くと、
「ええ、その通りです」
 と斎藤は答えた。
「殺人事件であることが分かっていて、死因が絞殺だったが、服毒もしている」
 という今のところの話を、斎藤の証言は、完璧に近いほど、補っているかのようだと言ってもいいだろう。
 齋藤の話は、どこか要領を得倍ところがあったが、これ以上追及しても、話が堂々巡りで、いたちごっこになりそうな気が、樋口刑事にはしたので、
「とりあえずは、目撃違憲ということで、ここまでにしておこう」
 ということで、斎藤は、
「お役御免」
 ということになった。
「もし、また何か思い出したことがあれば、遠慮なく話にきてください」
 と、樋口刑事が丁寧に話をしたことで、
「樋口刑事は、まだまだこの斎藤という男が何かを知っているということで、警察の敷居を低い状態にしておいたんだな」
 と、河合刑事は感じた。
 すでに、河合刑事は、樋口刑事の気持ちを分かっているかのようで、その話を、
「事件解決の、第一の足掛かり」
 とでも思っていると感じたのだ。
 だから、河合刑事も黙っていて、そのまま樋口刑事に着き従う気持ちで、樋口刑事と一緒に、第一発見者のところに向かった。
 すでに第一発見者は、警官にいろいろ聞かれているようで、すでに発見してえから時間も経っているということで、そこまで緊張することはなかったのだ。
 だが、斎藤氏のように、昨日から気にしている人間に比べて。
「たった今」
 ということであり、しかも、実際に
「死んでいる姿」
 というのを目の当たりにしたのだから、気持ち的に落ち着かないのも、無理もないということであろう。
「いやいや、大丈夫ですか?」
 と、樋口刑事は、少し大げさに労った。
 何といっても、自分が第一発見者になったばかりではなく、
「何があったかは分からなかっただろうが、同僚の斎藤氏が、自分の発見した死体と何やらかかわりがあるのではないか?」
 ということで、恐ろしいというよりも、
「気持ち悪い」
 という感覚の方が強かったのかも知れない。
「自分の知らないところで、何やら勝手に暗躍している」
 というように思えたことで、余計に気になるということになるのだろう。
 警官が相手をしていたが、樋口刑事がこちらに向かってくると感じた警官は、二人の刑事に敬意を表し。
「あちらの刑事さんが、お話があるようだ」
 とばかりに、第一発見者の男性も、
「やっときたか」
 とばかりに、待ちくたびれた様子を、表情に皮肉として浮かべていたのだった。
「これは、どうもお疲れ様です。我々は、K警察署の、樋口と、河合です」
 と言って、警察手帳を提示した。
「私は、この公園の管理スタッフの清水と言います」
 と言って頭を下げながら、こっちを見ている斎藤氏を気にしていた。
 齋藤も、清水が気になるのか。チラチラ見ている。二人は何か仕事以外で関係があるのだろうか?
「清水さん、あなたが発見された時のことをお伺いしたのだが」
 ということで話をすることになった。
「私は、この公園を、朝と夕方に掃除や警備をしています。夕方は、ほとんど警備が主ですが、逆に朝は、掃除が主で、警備は前の日の補足程度ですね」
作品名:念には念を 作家名:森本晃次