小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

表裏別離殺人事件

INDEX|16ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

「被害者が風俗嬢」
 ということで、どこか、
「差別的」
 とまではいかないが、
「自分の想像を絶する世界」
 ということで、
「過大妄想のようなものがあった」
 といってもいいかも知れない。
 ただ、樋口刑事もいいところまでは行っていたのだが、
「最後の一押しがなかった」
 ということであった。
「風呂の栓を開けて、さらにお湯を出していた」
 というのは、要するに、再度風呂に入る」
 ということであった。
 それは、犯人の計画であり、その計画というのが、
「警察ならそこまで考えてくれるだろう?」
 という計画だったのだが、悲しいかな、樋口刑事にはそこまで思わなかった。
 というのは、
「実は、犯人が、もう一人誰かを呼ぶつもりだった」
 と思わせようとしたのだ。
 もしこれが普通の客であれば、いいのだが、中には、
「スカウト」
 という連中もいるわけで、店を契約をし、
「人気嬢を引き抜く」
 ということを商売にしている連中がいる。
 だから、ホテルの部屋をフリータイムで貸切って、その間に数人の女の子を呼ぶというっことだって普通にあるだろう。
 ホテルの人は、それくらいのことを分かっているので、怪しむことはない。
 組織としても、
「警察はホテルの人からも話を聞くだろうし、それくらいのことは分かり切っている」
 というように警察に対して、
「過大評価」
 をしていたといってもいい。
 しかし、そこまで警察は考えなかった。
 そもそも、
「風俗をあまり知らない樋口刑事が最初の担当だった」
 ということも、犯人側には失念していたことだろう。
 だが、捜査本部では、そのことが話し合われた。
 そこで、
「俺は本当に無知なんだな」
 と、樋口刑事は、感じたが、
「待てよ?」
 とも感じたのだ。
「あくまでも俺が気づかなかっただけで、捜査本部のほとんどの人は、実際に見ているわけではないのに、話を聞いただけで、分かっているではないか?」
 と感じると、
「何か、からくりがあるに違いない」
 と考えたのだ。
「フェイクということはありませんかね?」
 と樋口刑事は言った。
「自分は、そこまでまったく思いつかなかったのに、皆さんは、お話を聞いただけで、すぐに事情を看破することができたわけじゃないですか? 犯人だって、きっと看破されるということを分かっていたのだとすれば、その裏に何かあると思うのは無理なんでしょうかね?」
 というのだった。
「いやいや。それは考えすぎではないか?」
 という意見が多数だったが、樋口刑事は、どうにも納得がいかなかった。
「お前だけが気づかなかったということで、それを悲観してなのか、まわりにその考えを押し付けるのは、どのようなものか?」
 と考えていることは、他の刑事の、
「樋口刑事を見る目」
 で分かるというものだった。
 だが、樋口刑事は、そのことにあまり気にすることはなかった。
 その上で、さらに、
「自分なりの考えを組み立てる」
 ということであった。
「動機というのは、どうなんでしょうかね?」
 と樋口刑事がいうと、少し、その場が重苦しい環境になった。
 捜査副本部長といってもいいくらいの、
「現場の責任者」
 という意味での、
「桜井警部補」
 が、口を開いた。
「そうなんだ。この事件で考えたところが、動機という意味で、被害者を恨んでいる人も、いないわけではないが、殺したいというほど恨んでいる人がいるとは思えない。それは捜査員が聞き込みを繰り返す中でも同じなんだ」
 ということであった。
「じゃあ、あと考えられることとして、彼女が殺されることで、一番得をする人というのはいるんですかね?」
 と聞いてみたが、
「それも、今のところは皆無なんだ。彼女が、莫大な遺産を相続するということであったり、彼女に弱みを握られているというような人も今のところ、捜査線上に上がってくるわけではないんだ」
 ということであった。
 つまりは、
「容疑者になりそうな人が出てこない」
 ということであった。
「そうなると、まわりの人間関係の敷居を低くするか、さらに広く探ってみるかということをしないと、何も出てこないということになるんでしょうか?」
 と樋口刑事はいうのだった。
 それを考えながら、初動捜査の中で感じた疑問点を書いたメモを開いてみていた。
「お湯の栓の出しっぱなし」
 ということであったり、
「ガウンを脱ぎ捨てている」
 ということであったりが問題だったが、それも、
「樋口刑事の勘違い」
 ということで実際には、まわりの意見に納得させられたのだが、そこで簡単に転ばないのが樋口刑事であり、それが、彼のいいところでもあった。
 樋口刑事が気になったのは、
「女性が乱れたというのは分かっているが、男性側が、最後まで満足できたのか?」
 ということが、軽い疑問として残っていた。
「男性の中には、最後までいかなくても、満足する人もいるからな」
 ということであった。
 そういう意味で、それを逆に感じると、
「実際には、いくことのできない身体だったのでは?」
 ということである。
 最近では、
「LGBTなどということで、性同一性障害」
 というものがある。
 そのことが、樋口刑事の頭をもたげてきたのだ。

                 大団円

 実際の実行犯が、
「普通の男性ではない」
 ということになれば、話は変わってくる。
 それを知られたくないという思いから、
「犯人は男だ」
 ということにしたかったのかも知れない。
 そうなると、
「スカウトではないか?」
 と思わせることは、犯人側にとっては、
「実に都合のいいことであろう」
 そのための、偽装工作だと考えれば、最初に感じた不思議なことも理解できるというものだ。
 そこに、さらに
「逆転の発想」
 というものが含まれていると考えたのは、
「樋口刑事だった」
 からだろう。
 樋口刑事は、自分の考えが至っていなかったことを恥ずかしく感じた。
 そこで、
「新しく勉強した」
 という頭で持って、再度事件を見た時、他の人に見えない疑問が浮かんできたことから、この発想が生まれたのだ。
 しかし、
「男性が、それだけで満足する」
 ということをできるものか?
 と考えた時、
「部屋が必要以上に荒らされていたというのも、満足したことへのカモフラージュだったのだ」
 元々、男としての機能がない人を男として見せようというのだから、カモフラージュは絶対に必要であり、それが、
「ひょっとして看破されるのではないか?」
 と思ったとしてもそれは、
「無理でも通すしかない」
 と考えた時、一種の、
「一カバチかという賭けに出た」
 といってもいいかもかもしれない。
 そこまで考えてくると、
「まったく逆な方向からも見えてくるものもある」
 というもので、まさか犯罪組織も、警察がそこまで見えているとは思わないとタカをくくっていたのだ。
「自分たちが計画したことを、自分たちがやられる」
 ということに気づかないということが、やつらにとっての、
「命取り」
 ということだったといってもいいだろう。
作品名:表裏別離殺人事件 作家名:森本晃次