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時代に曖昧な必要悪

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 ということであれば、ここまで両親の存在を意識する必要もないといえるのではないだろうか?
 確かに、
「誰も気づかない」
「バレることはない」
 と思ったとしても、まったく音を立てなかったということであっても、まったく気にならないわけではない。
「いつどうなるか分からない」
 と少しでも思えば、思った瞬間、それだけでストレスとなるということになるであろう。
 それを考えると、
「両親との同居は、やはり許容範囲では絶対にない」
 と思えたのだ。
 だが、
「旦那から受けるのは、癒しだけでいい」
 と思っていたはずなのに、いざ、二人で暮らしてみると、
「なぜこんなに味気ないんだ?」
 ということで、まるで、それまでの旦那から受けてきた、
「癒し」
 というものが、どんなものだったのかということを、まったく忘れることになってしまったのだ。
 というのは、
「環境が変わったから?」
 ということなのか、それとも、
「結婚ということで、旦那が、釣った魚に餌をやらない」
 ということになるからなのかと感じていた。
 確かに、
「愛撫はたんぱくだ」
 ということを感じさせられた。
 しかも、セックス自体が、
「自己中心的で、気を遣うということを忘れてしっまったのか?」
 と考えてしまったのだ。
 しかし考えてみれば、
「親に気を遣いたくない」
 という思いから、親との別居を選んだ」
 ということであり、それは、
「すべてにおいて、気を遣いたくない」
 ということからきているのだと思うと、
「あの人は、本当に無神経で、結婚したとたん、セックスというものに飽きが来たのではないか?」
 と感じるようになったのだ。
 確かに結婚したとたん。
「毎日この人と」
 と考えると、うんざりしてしまい、食べ物でも、
「同じものを一か月も続けられると、見るのも嫌になる」
 ということと同じである。
 それが、お互いの夫婦というものに対しての、考え方、いや、感じ方の違いであり、それが、
「男であるか、女であるか?」
 ということで変わってくるということになるのだろう。
「しかも、これが、もし親と同居ということになれば、却って緊張感から、また違った会館に襲われるのではないか?」
 とも感じた。
 最初は、
「旦那がそんな気持ちになったとすれば、悪いのは私なんだ」
 と思うようになっていたが、しかし、それが次第に変わっていった。
「旦那が変わるのは、仕方がないことで、それが男と女の違いだ」
 として割り切ろうとしたが、それが、さらに間違いだということに気づいた。
 それは、
「旦那が飽きが来ているのであれば、私も同じではないか?」
 と考えたのだ。
「もし、旦那が浮気しようものなら、私の方もしよう」
 と思うようになった。
 そもそも、
「熱しやすく冷めやすいタイプの聡子の方が、飽きやすいということになるのであれば、まずは、旦那に浮気をしてもらい、その前提で、自分の言い訳ができる状況を作っておいて、自分も浮気をするのであれば、自分に罪はない」
 と思ったのであった。
 旦那の浮気は、すぐに発覚した。
 旦那は、
「ウソをつくのが下手」
 ということで、それが、旦那のいいところでもあり、悪いところでもあった。
 それを分かっていて、利用してやろうと考えたのだ。
 旦那の浮気相手は、会社の事務員という、
「べたといえばべた」
 という関係であった。
 旦那の方でも、
「浮気を見つからないようにしよう」
 とは思っていただろうが、
「あの女房がまさか疑って、浮気の証拠をつかむというようなことまではしないだろう」
 ということを考えていたのだ。
 人間というものは、
「策を弄する人間は、自分が同じことをされる」
 ということには、なかなか気づかないものだ。
「まさか」
 ということを感じていたとしても、結局、必要以上なことを考えたりはしない。
 それは、
「面倒くさい」
 ということが頭の中にあるからだろう、
「自分が面倒くさいと思うようなことを、女房がするわけはない」
 と感じていた。
 それは、旦那が決定的なことを忘れているからであり、いや、
「忘れている」
 というわけではなく、
「最初から意識をしていない」
 といってもいいだろう。
 つまり、
「嫉妬」
 というものであった。
 女である聡子は、
「旦那に対して嫉妬心を燃え上がらせた」
 ということであるが、逆に旦那の新吉は、彼女に嫉妬心というものを抱いたことはなかった。
 考えてみれば、大学時代に、彼氏ができて、
「東京で結婚してもいい」
 とまで思っていたにも関わらず、彼はもちろん、浮気を事実をすることはなかったと思うが、
「いずれ、お互いに忘れなければ結婚しよう」
 ということになったくせに、ここまで他人事になれるということか?
 と思うほど、嫉妬心が湧いてこない人だった。
 そんなことを聡子はどこまで分かっていたのかということで、ただ、
「嫉妬はするかも知れないが、東京で彼氏がいて、下手をすれば、東京で結婚しるかも知れない」
 ということを感じている彼女のことを分かっていないというのは、
「普通であれば、考えにくい」
 といってもいいだろう。
 だが、実際には、
「別れることにはなったが、結婚寸前位にまで気持ちが移った相手」
 ということであり、今から思えば、
「新吉があまりにも嫉妬してくれない」
 ということで、彼に嫉妬をさせたいがために、東京で彼氏を作り、
「まるで、当て馬のようなやり方」
 ということに仕立て上げようとしたのかも知れない。
 彼は当て馬になったわけだから、相手に浮気をされようがどうしようが、彼に関しては、そこまでのショックはないだろう。
 ただ、
「情が移る」
 ということはあるもので、
「私は自分がここまで情に脆いとは思ってもみなかった」
 と考えていたのだった。
 その時に、嫉妬を少しもしなかったので、
「私のことなどどうでもいいのか?」
 と思っていて、
「それだったら、こっちも遊びでいいや」
 と感じたからこそ、数年間も、彼が結婚の話を持ち出さないことに、焦りもなかったのだ。
 逆に、
「どうして、どの時点で、我に返ったかのように結婚というものを考えたのか?」
 ということを感じたのだった。
 結婚してから、聡子の方では、
「仕事と家事の忙しさ」
 ということで、毎日があわただしく過ぎていった。
 そのせいもあり、二人とも、
「子供はいらない」
 ということで話をしていて、聡子は、旦那が子供がほしいと言い出せば、どうなるかということを考えていたが、旦那はあくまでも、
「子供はいらない」
 といっていたのだ。
 仕事も忙しいということで毎日のように遅く帰ってくる。
 しかも、結婚当初の頃に比べ、遅くなる率が増えてきた。旦那がいうには、
「それだけ責任のある仕事を任されているからな」
 というのだ。
 確かに、昔のように今は、
「仕事を家に持ち帰ってする」
 ということは許されない。
 個人情報保護の観点からである。
 それだから、
「責任のある仕事を任された」
 という言葉には説得力があり、疑うのは失礼だというものだ。
作品名:時代に曖昧な必要悪 作家名:森本晃次