小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

時代に曖昧な必要悪

INDEX|7ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

「親に対して遠慮と、気遣い」
 というものから、精神的な圧迫のようなものを感じてしまったので、一緒に暮らすことがきつくなってきたと思っていた。
 しかし、二人で暮らしていた時には、
「これが当たり前なんだ」
 と感じていたり、
「両親と一緒にいないだけでも、今が一番幸せなんだ」
 と感じていたのだが、
「それが間違いだった」
 ということに気づいてきたのだ。
 最初は、
「旦那が優しい」
 と思っていた。
 普段は、本当に優しいが、たまに、夜などちょっとした暴力をふるうようになっていた。
 それを、
「自分が妻として至らないところがあるから」
 と思っていたのだ。
 しかし、理由ははっきりとは分からないが、
「両親と一緒に暮らさないか?」
 と旦那が言い出した時には、正直面と食らったといってもいい。
 そもそも、
「両親と一緒に暮らす」
 ということに抵抗を感じていたのは、旦那の方だった。
「新婚生活の邪魔をされたくないからな」
 といいながらも、
「いずれ、ずっと先の将来だと思うが、両親との同居も考えられないわけではないので、今のうちに、二人だけでいよう」
 といっていた。
 聡子も、
「先のことは分からない」
 ということで、両親との同居に、嫌悪感があったことから、旦那の言い出したことに、大賛成だったのだ。
「それに、新吉のいうことには、必然性もある」
 というか、信憑性があるといってもいいだろう。
 何といっても、
「夫のいうことには、どこも間違ったことを言っているわけではない」
 ということであった。
 新吉は、妻を思っていっているだけではなく。両親が立つようにということでの話し方もしている。
 だから、
「そんなに遠くなく、何かあれば、駆け付けられるくらいの距離に住めばいいわけで、いくら何でも、新居に、そんなに何度も来ることはないだろう」
 といっていた。
 しかも、
「それぞれが共稼ぎなので、二人が一緒にいる時というと、夜か休日しかないので、それこそ、遭うとすれば、こっちから赴くということになるわけだろう? 最初から、覚悟をしていけばいいわけで、何かのイベントという口実でいけばいいだけだよ」
 といっていた。
 聡子が、旦那になった新吉と、
「結婚しよう」
 と思ったきっかけは、
「新吉の誠実さ」
 であった。
 彼が口にすることには、いちいち説得力がある。
「相手を納得させられるだけのパワーがある」
 ということで、
「聡子が選択を迷った時、導いてくれるのが、旦那であれば、これほど、ありがたいことはない」
 と考えるのであった。
 聡子とすれば、それまでは、
「優柔不断で、煮え切らない態度」
 ということを感じていた相手を、
「今までであれば、もっと早く見切りをつけるはずなのに、どうしてこんなに、ズルズルと付き合っているんだ?」
 と考えた。
 その原因が、
「説得力があることをいう」
 ということから、
「この人についていけば間違いない」
 と思うようになった。
 そういう意味で、
「ズルズル付き合っていた」
 という言葉は、少し言い訳がましいが、それが正解だったのかも知れないと思うと、結局、
「結婚相手は、この人しかいない」
 と思ったのだ。
 聡子は、あまり、自分のことを他の人に話すことはない。夫が、彼以外の人であれば、同じだったかも知れないが、新吉だったからこそ、あまり隠し事のない夫婦関係でいられるとまで思っていたのだ。
 そんな二人だったが、最初に問題になったのが、
「新吉との両親との同居」
 ということであった。
 ただ、
「それを問題に考えていたのは、聡子の方だけだった」
 というのは、すぐに判明したことであり、
「なんだかんだ言っても、俺も面倒くさがりなのさ」
 と、結婚してから少しして、聡子に新吉が言ったことがあった。
 それが、
「両親との同居のことを言っているのだ」
 ということを最初に分かっていたわけではなかった。
「親父もおふくろも、それぞれに、一緒にいれば昭和の話をするのさ。それを聴いていると、本当に、頑固おやじということがよくわかるさ。だけど、もし、二人が昭和の親じゃなくて、今の親のようだったと思うと、本当に気持ち悪いのさ。何といっても、自分を育てた親だからな。もちろん、親に対する感情もあるわけで、自分が親になったら、あんな親には絶対にならないと思っていることからも、間違いないことさ。だけど、それでも、俺にとっては、結局は昭和の父親なのさ。最近は、そう感じるようになったんだ。だから、それは、たまに感じるからいいわけで、毎日のように一緒にいれば、自分の気持ちがどこにあるかということが分からないということになるんじゃないかって思うと、怖いというか、恐ろしいといってもいいような気がするのさ」
 と、彼は、しんみりではあったが、最後はっ力強くそういったのだ。
 それでいて、最初は、
「面倒くさい」
 という表現を使った。
 そんな彼は結局、
「自分は自分が受けたような境域は絶対に子供にはしない」
 といっているのに、
「いや、同じような教育をしそうな気がするな」
 と感じた。
 それこそ、
「この人以外であれば、私に分かるわけはない」
 ということが分かっているような気がした。
 だから、新婚期間中というのは、
「二人だけの時間を大切にしていこう」
 と考えたのだが、そんな毎日を送れば送るほど、何か、余計な不安が感じられると思うのだった。
 聡子は、夜の生活が、マンネリ化しているということを最初から感じていた。
 ワンパターンということにもあるのだろうが、
「それまでの愛され方とはまったく違っている」
 と感じたからだ。
 愛撫というのは、力の入れ方によって、感じ方がまったく違う。
 聡子は、
「この人にはこの人のやり方があり、それが私を快感へと誘ってくれる」
 ということで、
「彼を選んだというのは、身体の相性も大切だったからだ」
 というのも、その一つであった。
 愛撫が快楽を誘うと考えた時、
「彼でなければいけない」
 と感じたのだが、その理由が、
「彼の愛撫には、過去の思い出をよみがえらせてくれる」
 ということがあったからだ。
 それは、子供の頃に感じたなつかしさであり、それは、
「性感」
 という言葉で表されるものとしては、違う感覚に感じられた。
 一種の、
「癒し」
 といえるもので、
「彼の指使いに、子供の頃の記憶をよみがえらせるものがある」
 ということで、それが決して、性的なものだとは言えない気がしたのだ。
 しかし、結局は最後には、快感に達するわけである。そこに、
「性的快楽」
 というものがないとは絶対に言い切れない。
 自分を納得させるために、その言葉を欺瞞として使ったというのか、そもそも、
「結婚というのは、欺瞞に近いものではないか?」
 と思ったのは、そのあたりに原因があるといえるのではないだろうか?
 だから、同居はしたくないと思ったのは、正直、
「セックスに気を遣わなければいけないということに、ストレスを感じることが一番大きい」
 ということからだと思っていたが、
「癒しがあればいい」
作品名:時代に曖昧な必要悪 作家名:森本晃次