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時代に曖昧な必要悪

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「ポジティブなのかネガティブなのか?」
 ということが、分からなくなるのであった。
「新吉と別れる」
 ということが最初に来たのであれば、それは、
「ネガティブな発想」
 ということであり、
「まだまだ私も捨てたものではない」
 と思ったのであれば、
「ポジティブな考え」
 といってもいいだろう。
 しかし、ポジティブだといっても、それはあくまでも、
「滑り止め」
 というものに近い形であり、
「冒険して無理を押し通す」
 ということになれば、もし、その無理が通ったとしても、実際には、
「レベルの高いところでの争い」
 ということになり、
「ついていけなければ、それはそれで、本末転倒だ」
 といえるだろう。
 聡子が、新吉と付き合っている時、自分の中で。発想が先に進むだけの情緒が、安定していないことで、却って、新吉を増長させたのかも知れない。
 気が付けば、田舎に戻ってきて、
「付き合い始めてから」
 ということで数えれば、
「5年」
 という月日が流れていた。
 そろそろ、30歳近くになってきたということで、聡子が、最初に我に返ったのだ。
「女性の方が、年を意識するものだ」
 ということもあるが、それは、身体の変調を感じるからであろうか、正直、
「情緒不安定な時期」
 というのと、
「生理不順」
 というところが、自分の中でリンクしていることに気づいたのだ。
 それだけ、頻繁に、
「情緒不安定」
 ということにも、
「生理不順」
 ということも襲ってきているということであろう。
 精神的にも、肉体的にも変調が現れてくると、下手をすれば、慣れてきてしまうと、
「感覚がマヒする」
 という、聡子にとって、不利になるという精神状態を引き起こすと考えられるような状態に陥る気がしてきた。
 だから、
「思い立ったら、放っておくわけにはいかない」
 ということで、今回は思い切って、
「私たちこれからどうなるの?」
 という聞き方をした。
 今までにも、何度も、
「このままでいいのか?」
 と考えたことはあったが、
「相手が何も言わないのだから」
 ということで、このままでいいと思っていたのだ。
 そう、
「何も結婚だけが幸せではない」
 ということは分かっていた。
 だからと言って、
「先が見えない相手と一緒にいることが、本当にいいことなのか?」
 と考えるのは、どこまでがいいのかどうか、分からないのであった。
 ただ、聡子とすれば、
「相手をなるべく刺激しないように」
 ということで、
「含みを持たせる」
 というような言い方をしてはいたが、実際には、
「相手にプレッシャーを与える」
 ということになってしまったのだ。
 もちろん、新吉も、聡子とのことを、
「考えないといけない」
 とは思っていたが、
「聡子が何も言わないのであれば、このままでもいい」
 という甘えた考えでもいたのだった。
 しかし、聡子が言葉にした。
 しかもその言葉が、
「やんわりとした言い方」
 ということで、新吉は、
「皮肉だ」
 と取ったのだ。
 新吉も、いずれは聡子と結婚と思っていたので、それを機に、真剣に考えるようになった。
 ただ、そこには焦りのようなものがあり、
「急がないといけない」
 と思ったのだ。
「聡子が自分から勇気を出して言葉にした」
 ということは分かっている。
 そのことから、
「自分もしっかりやっている」
 という態度を見せないと、
「今度こそ、呆れられ、完全に捨てられるのではないか?」
 と感じたのだ。
 だから、新吉としては、今までになかったプレッシャーを感じながら、これまでの、
「子供のままごとという恋愛関係に終止符を打つ」
 と考えるようになったのだ。
 それを思えば、
「この時が、一番、真剣であり、二人の関係のピークだったのではないだろうか?」
 と感じた。
 二人は、とんとん拍子に結婚というものに向かっていた。
 一つだけ気になったのが、
「新吉の父親というのが、まるで昭和の親父という考え方を持っているように見えた」
 というところであった。
 ただ、そのわりには、進んだところもあり、
「結婚式で、披露宴のようなことをする必要はない」
 という考え方を持っていて、
「今では、その考えも結構しっかりと市民権を得ている」
 といってもいいが、それでも、
「子供の一生に一度の結婚式くらいは、盛大に」
 と考える人も一定数はいる中でのことである。
 しかし、逆の考えもあった。
「今の時代は、平気で離婚する夫婦も多い」
 ということで、
「離婚するかも知れないのであれば、何も、派手に結婚式なんか挙げることはない」
 といってもいいだろう。
 しかも、
「結婚式を派手に挙げた人に限って、必ず別れているような気がする」
 という意見もあるくらいで、
「確かにいわれてみれば」
 と思ったところで、
「いやいや、結婚式などするからだ」
 ということで、
「披露宴なんかしない」
 と思っているのだろう。
 だが、それはあくまでも、
「昭和の考え方とは違うもので、かたや。昭和の親父でありながら、かたや、合理主義的な考え方を持っている」
 というのは、
「どこか矛盾している」
 と感じられるのであった。
 だから、聡子には、
「あのお義父さんは、どっちなのだろう?」
 というところが気になったので、最初は、
「親との同居は嫌だわ」
 といっていた。
 しかし、結婚してから、二人だけで暮らすには、
「自信がない」
 と彼がいうので、
「どうして、こんな優柔不断な人とずっと一緒にいたおか?」
 と思いはしたが、ここまでくれば、
「突っ走るしかない」
 と、その時の聡子は思っていた。
「私がいないとこの人は」
 とまで思うようになっていて。
「私が彼の実家で辛い状態になれば、彼も家を出るといってくれるだろう」
 ということ、さらには、
「それでも、優柔不断だったら、離婚しちゃえばいいんだ」
 とまで考えるようになった。
「結婚だけが幸せではない」
 ということからの、一種の、
「とりあえずの結婚」
 ということであったが、
「自分が、情緒不安定だ」
 と思っていたところが、ひょっとすると、
「優柔不断が高じてしまったことからきているのではないか?」
 と感じたのだが、どうやら、その感覚に間違いないともいえるのであった。
 だが、この考え方が、余計なプレッシャーになることもなく、彼の両親とも、
「案外うまくやれている」
 ということで、却って自分の自信というものになったのだった。
 二人の間で、しばらくは、
「楽しい新婚生活」
 というものを味わっていた。
 両親も結婚生活には決して踏み入ることはない、やはり、昭和の考え方は、
「息子に対してだけであり、嫁には求めるものではなかった」
 といえるだろう。
 しかし、それが、結局、お互いの破局を生む一つの原動力になったのではないかと思えるのだった。

                 新吉の不倫

 それから、いろいろとあったが、今では、聡子は、柏木家で、義理の両親を一緒に、旦那と暮らしているということで、
「親の家に同居」
 ということになった。
 最初は、
作品名:時代に曖昧な必要悪 作家名:森本晃次