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時代に曖昧な必要悪

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「早いうちに、相手と自分が合わないということが分かれば、離婚してしまう方がいいに決まっている」
 という考え方である。
「諦めがいい」
 といえばいいのか、
「合理的」
 といえばいいのか、どちらにしても、
「我慢してもいいことはない」
 といってもいいだろう。
 確かに、離婚して新しい人を探すという方がいいかも知れない。
「離婚という経験が、次に生かされる」
 ということもあるからだ。
 しかし、だからと言って、結婚に最初から消極的になっていいものかということもある
「結婚を前提に付き合う」
 というのが、普通の恋愛結婚への道といってもいいだろうが、あまり長すぎたとしても、
「長すぎる春」
 ということだってあるだろう。
 それは、
「お互いに、昔と同じ気持ちでいられる」
 というわけではない。
 自分は、相手をずっと愛している」
 と思っていたとしても、相手もそうだとは限らない。
 いつ、振り向いてくれて、結婚を言い出すかを待っているのも、限界というものがあるというもので、いつまでも待たされていると、
「我慢できずに浮気をしてしまう」
 ということもありえる。
 そして、それがそのまま本気になってしまうということだって十分にありえるわけで、そうなれば、
「完全にやり方を間違えた」
 ということになるだろう。
「結婚も恋愛も、相手があること」
 この基本を忘れないようにしないといけない。
 今の時代は、もっとひどく、
「結婚など意味がない」
 という人もいて、特に、
「子供に託せる世界ではないではないか?」
 ということになるのだ。
 聡子は、それでも、彼のことが好きだった。
 彼の名前を、
「柏木新吉」
 と言った。
 とにかく、聡子は当初の約束通り、大学を卒業すると実家に戻ってきて、地元で就職した。
 しかし、それは、別に新吉のためではなかった。実際には、大学時代に付き合っていた男性がいて、最初はその男性と、
「いずれは結婚しよう」
 という思いがあり、そのつもりだった。
 その人とは、大学一年生の頃からなので、二年くらい付き合ったところで、彼には、実は、
「他に女がいた」
 ということが判明したのだ。
 しかも、その相手の女は浮気ではなく、
「そっちが本命だ」
 ということが分かった。
 それが分かれば、すぐに彼への気持ちは冷めてしまい、
「こんな男は最初からいなかったんだ」
 というくらいにまで感じるようになったのだ。
 聡子だって、元々田舎に、
「大学卒業後に、お互いにまだ好きであれば、付き合おう」
 という約束をした男性がいるにも関わらずである。
 聡子は、高校時代とのまったく違った生活を、今まで知らない都会の生活の中で感じたことで、まったく違う未来が見えてきたことに気が付いたのだ。
 まったく知らなかった世界が目の前に開けたことで、新吉のことを忘れてしまったのだ。
 要するに、それまで新吉だけしか見ていなかった自分の目がかすんでいたと感じるようになり、目の前に広がった眩しいばかりの都会の世界に、完全にはまり込んでしまった。
 それは、まだ慣れていない生活だったにも関わらず、
「以前からずっとそこにいた」
 という感覚に似ていたのだ。
 確かに、
「田舎から出てきた」
 というコンプレックスがないわけではなかった。
 だが、そもそも、都会に住んでいて、引っ越すことなく大学に入った人も、
「高校時代とまったく違った眩しい世界だ」
 ということを感じたのに変わりはないだろう。
 だから、
「田舎から出てきた田舎者だ」
 というコンプレックスを持っていたとしても、実際には、都会育ちの連中とは、そんなに変わらない」
 という意識がどこまであったか分からないが、
「コンプレックスというものを持っていながら、結構早い時期から、大学になじんでいるような気がする」
 ということで、自分が田舎者であるというコンプレックスを、自分の中で克服できていると勝手に思い込んでいた。
 そのおかげで、どこか、輪の中の中心にいるというような立場になってきたことを、自分で分かるようになってきたのだ。
 高校時代までに、一度も感じたことのない感覚だったが、それは、自分の感覚をマヒさせるようなものであった。
 そんな風に思うようになってから、彼氏もできた。聡子にとっては、
「順風満帆な時期だ」
 といってもいいだろう。
 しかも、その頃は、
「何をやってもうまくいく」
 と感じていた。
 だから余計に、
「自分が輪の中心にいる」
 と思うようになったわけで、それが錯覚なのかどうなのか分からないが、意識としてえは、それこそ、マヒした感覚の中にいるようで、夢を見ているかのようでもあったのだ。
 そんな時だから、できた彼氏を大切にしたいと思っていた。
「自分のことを相手が好きになってくれた」
 と思うことは、
「私が相手に惚れさせたんだ」
 と思うようになったことでもあった。
 その感覚は、まったく正反対のものではあるが、そのどちらも持っていた。精神的にその時の情緒によって、その気持ちが変わっていることを、彼女は気づいていなかった。
 いわゆる、
「情緒不安定」
 ということから、他の人が見れば、
「二重人格だわ」
 と思われていたことだろう。
 しかし、それでも、彼女の中に、
「一種のカリスマ性」
 というものがあることで、
「自分が輪の中心にいる」
 という感覚になるのだった。
 だから、その感覚は勘違いでも錯覚でもない。実際にあることなのだが、その感覚が、マヒした意識の中にあるということは、本人の中で、
「錯覚を起こしやすいところがある」
 という、性格分析に繋がるのだった。
「自分にはカリスマ性がある」
 ということは、ウスウス気づいてはいたが、その影響がどのように自分に働いているのかということまでは分かっていない。
 だから、
「感覚がマヒしたような」
 という気持ちになるのであり、それが、自分の中にある、
「情緒不安定からきている」
 ということに気づいてはいないのだ。
 この、
「情緒不安定」
 という意識も確かにある。
 ただ、それが、まわりが見ているような、
「二重人格性」
 だとは思っていなかった。
 そもそも、
「私に二重人格性はない」
 と思っているわけで、情緒不安定の原因は、
「順風満帆な大学生活」
 と感じている反面、
「順風満帆過ぎて、怖いくらいだ」
 ということから、不安に駆られてしまっていたのである、
 その不安の正体が分からないことで、
「いい時には、これ以上ないくらいにいい状態が続くが、少しでもリズムが狂うと、自分を抑えられなくなる」
 ということで、もし、歯車が狂うとすれば、それは、
「よかったことが続いたことの、反動だといってもいいのではないか?」
 と感じるのであった。
 それが、大学生の、1,2年生の頃であり、3年生になると、大学の本来の目的である、専門分野の勉強に忙しくなり、彼との時間が徐々に減っていったのだった。
「ごめんね、なかなか会えなくて」
 と聡子は言ったが、
「いや、いいんだ。お互い様じゃないか」
 と相手はいうので、聡子は、
「お言葉に甘えて」
作品名:時代に曖昧な必要悪 作家名:森本晃次