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時代に曖昧な必要悪

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「義母もいるわけだから、パートくらいはいいだろう」
 と聡子は考え、その考えに確かに間違いはなかった。
 結局、
「パートくらいはいいわよね」
 ということを義母が言ったので、それが
「鶴の一声」
 ということになり、
「パートに出る」
 ということが決定したのだ。
 その頃は、相変わらず、新吉の方では、不倫が続いていた。
 それでも、さすがに、
「親が入院」
 ということになると、
「そこまで非情なことはできない」
 ということで、
「少し回数が減る」
 ということを言っていた。
 ただ、その頃になると、不倫関係は、
「金銭でつながった関係」
 ということで少し形を変えていた。
 これは、新吉が言い出したことだった。
 むしろ最初は、彼女の方が、
「そんな、私はあなたのお金が目的ではないのよ」
 と言ったが、新吉から、気さくに、
「もちろん分かっているさ。でも、今回、家族の入院ということで、君には寂しい思いをさせるからね」
 といって、納得させたのだった。
 新吉が恐れたのは、
「二人の関係が長くなることで、彼女が、結婚の二文字をちらつかせてきたらそれが怖い」
 と感じたからであった。
「いくらなんでも、結婚を言われると、彼女がその気になってしまって暴走されると、家庭を壊しかねない」
 と思ったからだ。
 彼女は、情熱的なところがあり、それが癒しにもなって、
「一緒にいて楽しい」
 と思えたのだが、それが、悪い方向に向かって、結婚を考えることで思いつめでもすれば、それこそ、
「何をするか分からない」
 と思えてしまったのだ。
 それを考えると、
「結婚というものを、彼女に考えさせてはいけない」
 と考えると、自分でも、不本意であったが、
「金銭による関係」
 というものが一番無難だと思ったのだ。
 彼女の方としても、
「不倫というものに、後ろめたさを感じているとすれば、お金の関係として続けることが、お互いに問題にはならない」
 と考えてくれると思ったのだ。
 もちろん、相手に確認したわけではないので、
「自分に実に都合のいい考え方だ」
 といえるかも知れないが、
「今の自分とすれば、一番いい方法なのではないだろか?」
 と彼女に対しては思ったのだ。
「だったら、女房の聡子の方にはどうなんだ?」
 と考えた。
「女房をまだ愛している」
 ということに変わりはない。
 ということであれば、
「二人の関係は変わりない」
 ということで、性的に、
「もう、聡子を愛することはできないだろう」
 ということで、それは、
「オンナとしては見ることができない」
 ということであった。
 そうなると、
「離婚」
 というものも真剣に考えなければいけないと思った。
「だったら、女房の方も不倫くらいしてくれた方がいいんじゃないか?」
 と考えたのだ。
 自分は不倫をしていると思えば、うしろめたさというものもあり、そのうしろめたさだけではなく、
「バレたらどうなる?」
 という思いも、もちろんあるわけだ。
 それを考えると、
「お互いに不倫をしていれば、お互いに立場としての距離も縮まるし、それぞれに、気持ちが分かるというものでは?」
 という、勝手な思い込みもあるのだった。
 これも、一種の妄想であり、
「次第に、被害妄想に自分がなってきている:
 ということにその時くらいから、新吉は感じるようになったのだ。
 というのも、
「妻も不倫を始めたのではないか?」
 ということを感じた。
 聡子がパートに出始めて、数か月が経ってのことだった。
 新吉にとっては、
「願ったり叶ったり」
 という気分ではあったが、どこまでその気持ちでいられるかということが、分からなかったりした。
 聡子の不倫相手というのは、まるで昔の
「昼メロ」
 といわれた、
「奥様劇場」
 を思わせるもので、そこの店長であった。
 年齢は、四十中盤という、中年であったが、そもそも、
「ファザコン」
 という気があった聡子には、
「年上への憧れ」
 は大きなものだったのだ。
 だから、
「義父に対しての介護」
 というものを、旦那の新吉が、
「あれ?」
 と思うほど、抵抗なくこなしていたのは、
「年上への憧れ」
 というものと、
「父親くらいの人への尊敬の念」
 というものがあったからだ。
 聡子は、父親を、高校時代に亡くしていた。
 元々、子供の頃から、父親に対して憧れはあったのだ。
 だから、今から思えば恥ずかしいだけなのだが、
「中学生になるまで、父親と一緒にお風呂に入っていた」
 というくらいだったのだ。
「晩生だった」
 ということもあり、中学に入っても、オンナというものを感じさせなかったことで父親も、
「かわいい娘」
 という認識しかなかったのだろう。
 だから、父親を慕っていた子供時代から、ずっとその性質は変わっていない。
 そのことは、新吉も分かってはいるつもりだったが、さすがに、自分の父親の介護を、嫌がることもなくこなせたということに、
「感謝以外にはない」
 ということであったのだ。
 二人が知り合ったのは、高校時代。
 だから、すでに、思春期を迎えていて、
「大人のオンナ」
 になっていた。
 彼女は、
「晩生」
 ではあったが、それは、思春期に入るまでに時間が掛かっただけで、高校生にもなると、他の女の子に、
「追いつけ追い越せ」
 とばかりに、身体の発育などは、
「すでに追い越している」
 といってもよかった。
 考え方は、最初から、
「大人だった」
 ということもあり、新吉が知り合った時は、すでに、彼女は、
「大人のオンナ」
 だったのだ。
 それを思えば、
「聡子というオンナは、自分も年上好みだし、年上の男性から見ても、放っておけないというかわいらしさを感じさせるオンナだ」
 ということになると思うのだった。
 それを、
「都合のいい見方だ」
 ということになるのだろうか?
 新吉は、考えていた。
 結局は二人しての不倫ということで、
「W不倫」
 ということになった。
「どっちもどっち」
 といってもいいのだろうが、世の中、
「そんなもの」
 といってもいいのか、
「因果応報」
 ということもあって、
「何が起こるか分からない」
 ということになるだろう。
 不倫というものを続けていると、
「こんなことにだってなりえる」
 ということで、
「そのうちに血を見ることに」
 ということになると思っていると、実際に、血を見るということになった。
 場所は、聡子がパートに出ているスーパーの裏手だった。スーパーの営業時間は、
「朝の10時から、夜は8時まで」
 ということで、それほど長い時間というわけではない。
 一応、大手スーパーグループの傘下ということになっているが、実際には、それほど大きな店舗ではなく、元々は地元スーパー傘下でも小さなところであった。
 そのスーパーが、親会社がなくなったことで、親会社がいくつか変わったが、今の傘下に入ってから5年と、まあ、続いている方だといってもいいだろう。
作品名:時代に曖昧な必要悪 作家名:森本晃次