悪魔と正義のジレンマ
ということを考えれば、それを目指す人もいるだろう。
しかし、
「できないものはできない」
ということで、
「何も三割を目指さなくても、他のことで活躍すれば、打率は二割前後でも十分にレギュラーが取れる」
ということで、そちらにシフトチェンジをする人もいるだろう。
「いかにすれば生き残れるか?」
ということを考えられるかということである。
特に昔と今とでは野球も変わってきている。
昔であれば、
「ピッチャーは、先発完投が当たり前」
といわれて、下手をすれば、
「こき使われて、潰されて」
ということになったであろうが、今の時代には、
「分業制」
というものがしっかりしていて、しかも、
「球数制限」
というものもあり、昔の選手に比べれば、
「何と甘えた」
といわれるくらいであるが、それだけ、事情が変わってきているということであろう。
それは、職業が変わったとしても同じことで、それは警察でも同じことだろう。
防犯カメラを見ている人もそれなりにしっかり見るのだが、
「無理をして、結果すべてが台無しになってしまってはいけない」
ということを考えるようになったのだ。
それが、社会の風潮といってもいいだろう。
そう考えれば、
「警察というものが、いかに昔と変わったか?」
ともいえるだろう。
特に、取り調べなどはそうであり、昔のようにm脅迫じみたことをしてはいけないだろう。
何といっても、
「自白をえられたといって、喜んで起訴してみたら、裁判になり、起訴内容の朗読の後に、事実認定を裁判長に求められた被告が、裁判の席で。
「いいえ、私は何もしていません。私の自白は、警察の強要によるものです」
といってしまうと、
「それは、被告の欺瞞だ」
ということはできない。
実際に強要はなかったということを警察が証明できないと、最初から、弁護側に大きな後れを取ってしまったということで、完全にマイナスイメージを裁判官に与えることになってしまうだろう。
だから、警察の取り調べは、厳粛にしなければいけない。
昔のように、
「泣き落とし」
などということもありえない。
よくテレビドラマなどで出てくる。
「かつ丼でも食べるか?」
ということもありえない。
警察が公式として出す食事以外は与えてはいけない」
という法律があるくらいである。
今回の捜査において、後ろ指をさされないようにしないといけないことは分かっているので、しっかり見ていたのであった、
ただ、その時に、モニターチェック班の人が、二回目に見て、
「怪しい」
と思う人物を、
「皆怪しい」
という目で見たところで見つけはしたのだが、
「まさか、こいつが?」
という人物であった。
それは、髪の毛は五分刈りくらいの、身体もまだ発育が行き届いていないといってもいいくらいの少年であった。
黒縁メガネをかけていて、空の骨も、まだまだ子供といってもいいというか、
「まさしく子供」
といういでたちの少年だったのだ。
明らかに、その少年は、日付が変わるくらいだっただろうか、被害者の部屋に近づいている。
スマホを取り出して、どこかに連絡を取っているのだが、その先はどうやら、部屋の中らしく、電話を切ってから、数秒で、問題の部屋から、扉を開ける手が見えて、しかも、半分表に出た顔を見ると、
「被害者に間違いない」
ということであった。
防犯カメラで音声は拾わないので、何といっているのか分からないが、口の動きと、状況から考えると、
「待ちくたびれたぞ」
とでもいっているように見えたのだ。
少年は、まわりを気にしているようだが、防犯カメラにはさすがに気づかない。被害者の方も、まわりを機にはしたが、少し見ただけだった。
被害者の方は、明らかに、
「防犯カメラ」
というものを意識しているわけではなかったのだ。
被害者は、少年の肩を抱くようにして、中に招き入れる。そして、最後にもうまわりを気にしてゆっくりと扉を閉めたのだ。
もし、これが少年ではなく、20代からの女性ということであれば、
「デリヘルでも呼んだのではないか?」
と思えるのだが、このホテルでは、
「デリヘルの使用は禁止」
ということで、最初から、デリヘル系は考えられなかった。
ただ、
「愛人」
というものがあれば別で、
「被害者がどういう女関係だったのか?」
というのも、捜査の中で明らかにはなるだろうが、防犯カメラの情報から、捜査の方針が決まってくるというのは、こういうことでもあったのだ。
ただ、この少年がどこの誰で、何が目的だったのかということは、これでは分からない。
しかし、ハッキリと分かっていることは、
「この少年と被害者は、顔見知りである」
ということであった。
誰にも遭わない
被害者が招き入れてから、しばらくは、防犯カメラに変わったところはなかった。
深夜になってくるので、通路を歩く人もほとんどいない。
ただ、被害者は、一度帰ってきてから、少年が訊ねてくるまでの間、一度だけ表に出た。
浴衣に着替えて、スリッパに履き替えていたので、表に出るわけではない。手には手折りが握られていたので、風呂に行ったのだろう。
このホテルは、ビジネスであるにも関わらず、温泉はついていたのだ。
被害者が、ここを宿にしたのは、それが目的だった。
「部屋のユニットバスなんか、使いたくない」
ということだったのだ。
だから、部屋を出てから。30分くらいで帰ってきた。手には、ビールのロング缶と、飲料水の終えっとボトルが握られていた。飲料水は少し飲まれていて、
「温泉に浸かったことで、喉が渇いた」
ということになるだろう。
それで、時間はちょうど、11時くらい、少年がやってくるまでには、まだ1時間くらいがあった、
二人はこの時間を見合わせていたのか、だが、被害者の様子から見れば、
「待ちくたびれた」
という様子は一目瞭然だった。
下手をすれば、
「すでに睡魔に襲われていたのかも知れない」
ともいえる。
しかし、少年を見た時の被害者の目は、ギラギラしていた。
さすがに、
「睡魔に襲われている」
という感じではなく、一人で温泉にいく時と、明らかにテンションは違っていたのであった。
しかし、それでも、少年が入ったのを見たモニター班の捜査員は、
「これから何が起こるというのだ?」
ということで、よからぬ想像をしてしまったことをあまり、快くは思わなかった。
「これだったら、女が現れた方が、よからぬことを考えたとしても、それは、想像の範囲内だ」
ということで、下手に変な想像はしないことであろう。
だから、そこから、今度、死亡推定時刻である、早朝といってもいい、
「午前4時から6時の間まで」
というのが、長く感じられ、さらに、その二2時間は、
「さらに長く感じられる」
ということであった。
「実際には、何も映っていないのに、実際には人が殺されていて、しかも、そこから誰も出たという気配がない」
ということからだったのだ。
作品名:悪魔と正義のジレンマ 作家名:森本晃次