悪魔と正義のジレンマ
時間的には、ほぼ半日と決まっていて、しかも、殺された部屋の前だけということで、そこまで時間が掛かるということもなかった。
実際に、解析には、
「約一日もあれば」
ということであったが、
「眼を皿のようにして」
ということで、少し時間が掛かったようだ、
ただ、その理由として、
「犯人は、殺害後、すぐに逃亡したというわけではない」
ということから、少し時間を取らせるのであった。
というのは、やはり、
「WIFIの問題」
と、そして、
「もし、犯人が密室を作り上げたわけではないとすれば、その間が20分しかない」
ということからだった。
そう考えると、設定された時間である、
「昨夜の10時半くらいから、翌朝の10時くらいまで」
という約12時間くらい、びったり張り付いて見るという必要があったからだ、
さすがに瞬きをしないわけにもいなかいので、その間、モニターを止める必要もあり、目が辛くなると、しばらく休憩の必要もある。
そうしないと、すべての時間を網羅しないといけない」
ということで、一寸でも、見逃しは命取りになってしまうということになるからだった。
それを考えると、
「普通に見れば、一日未満で見ることができる」
ということであろうが、実際にやってみると、
「気になるところは巻き戻して見る」
ということを含めると、約2日近くかかってしまった。
もちろん、睡眠時間だって必要なので、結局は、丸4日近くかかったといってもいいだろう。
その間に、
「捜査会議もあったりした:
ということから、さらに時間が掛かり、今度は捜査会議に提出するということから、
「説明用の編集」
というのも必要となり、結局捜査員が一人ずっとこれにかかりつけで、結局、
「約一週間かかった」
といってもいいだろう。
実際に、検証を繰り返していくうちに、
「怪しいと思われる人物は、最初には見つからなかった」
ここで、さらに時間を食うことになたのだが、
「おかしい」
ということでもう一度見直すと、最初こそ、
「誰が怪しいか?」
ということを中心に見ていたので、
「怪しい人物は見つからなかった」
ということになった。
しかし、今度は少し違った目で見るようにして、
「すべて怪しい」
という目で見るようになった。
すると、
「出るわ出るわ」
皆怪しいと思うようになったのだ。
しかし、結論として、犯人は一人である。(共犯がいれば別だが)
つまりは、
「この中で一番怪しい人物」
ということで、次には絞って見るようになる。
つまりは、
「一つのビデオで、本当に怪しい人間というものを見つけようとするならば、必ず、何度か見直さなければならない」
ということになる。
それを考えると、時間はどんどん押してくるのであって、本来であれば、焦りに繋がるだろう。
しかし、
「焦りは禁物だ」
ということも言われているので、何度目かには、怪しい人物を特定しなければいけない」のだ。
しかも、そこまでくれば、
「間違いは許されない」
そこまで行って、
「間違っていた」
ということになれば、再度頭から見直す必要があるということだ。
ということは、
「今の捜査員では、できない」
というレッテルが貼られることになり、本来であれば、一番最初に看破されるべき、
「防犯カメラの解析」
というものが、一番最後ということになり、捜査において、
「まったく狂ってくる」
ということになる。
「防犯カメラの解析というのは、単純作業で、相手がいるわけでもないので、そんなに苦にはならない」
といってもいいだろう。
しかし、実際にいはそうではない。
「防犯カメラの解析がなければ、捜査方針が変わってくる」
といってもいい。
何といっても、
「物証に繋がるものが何もない」
ということだからである。
あくまでも、防犯カメラの中で、
「動かぬ証拠」
ともいうべき、物証を見つけることで、やっと、そこから捜査方針が決まるといってもいいだろう。
つまりは、
「防犯カメラの解析が住まなければ、捜査のスタートラインにも立っていない」
ということになるのでだった。
そういう意味での重要な捜査だということで、ある意味、
「専門のスタッフ」
というものを、この、
「K警察」
では置いていたのだ。
それは、まるで放送局などにおいての、
「放送事故を防ぐための、モニターチェックを行う集団」
というのに似ているだろう。
実際に、どれほど大変なのかということは、
「やったことのある人間でないと分からない」
ということになるのだ。
「事件は、一件だけということではなく、同時に同じ警察署で、モニターチェックを行わなければいけない案件があり、しかも、一つの事件でも、複数のモニターチェックが必要である」
ということで、
「一つのモニターチェックに、複数は当てられない」
ということでもあったりする
それでも、専門の課なので、スピードは早く、仕事も正確だということで、彼らは重宝されているのであった。
実際に、モニターチェックにおいて、殺害時刻近くになるまで、部屋の前を歩いていたのは数人いた。
相手も。当然、モニターチェックされるということくらいは当然分かっていることであろう。
だから、怪しまれないようにしるのは当たり前で、いくらプロだとはいえ、最初の一階で怪しい人間を見つけるのは困難だった。
警察もそれくらいのことは分かっているので、最初はわざと、怪しい人間を見つけようと考えるのであった、
それは、計算ずくのことであって、そうすれば、二度目は、一度目を殺しても、掴むことができるヒントを得られるということだ。
野球でもそうではないか。
「エースピッチャーを打ち崩すには、最初の打席を棒に振ってでも、相手お調子を見る」
というバッターもいるだろう。
ただ、相手バッテリーも一流であれば、今度は、
「二回り目から、パターンを変えてくる」
ということをするはずだ。
バッターもそれを分かっている」
しかし、それでも、
「その日の調子というのは、分かるというもので、その間に、モニターを見たり、実際に球種を研究するというスコアラーのような目を養うことで自分の率を高めようと考えることだろう」
それと同じことで、
「肉を斬らせて、骨を断つ」
という言葉があるが、まさにその通りで、
「自分のどこかを犠牲にしてでも、最終的に結果を出す」
ということを、合理的に考えるということであろう。
「野球では、三割バッターであれば、一人前」
といわれるので、
「10打数で、3安打すれば、こちらの価値」
ということだ。
つまり、
「一試合に一安打」
ということになる、
となると、
「最初の一打席を棒に振っても」
と考える人もいる。
だが、逆にいえば、
「一打席を棒に振ると、あとは、二回で一回成功しなければいけない」
ということで、五割ということになる。
それは、相当なリスクであるといえるだろう。
しかし、それでも、棒に振る人もいる。
「そういう人が一流になるんだ」
作品名:悪魔と正義のジレンマ 作家名:森本晃次