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自殺というパンデミック

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 朝であっても、そろそろ暑さを感じるという時期になってきたということで、気が付けば、
「スーツが暑いくらいかな?」
 と感じる時期もあるくらいだった。
 梅雨まではさすがに季節としては遠いが、湿気はそれなりにあり、
「今年は、少し雨が多い気がするな」
 ということを感じさせた。
 毎年のことであるが、
「花見の時期になると、いつも雨が降ってきて、あっという間に散ってしまう」
 と言われている。
 だから、花見の時期は、花見の名所は集中し、
「実際に花見をする人の気が知れない」
 といっている人もいた。
 その人が考えていることは、
「トイレ問題」
 だったのだ。
「男だったら何とかなるだろうけど、女性はそうもいかないはずなのにな」
 という。
 その人からすれば、男の自分が、
「二度といかない」
 と思うのに、
「女性は、トイレ問題で困ったことはないのか?」
 と感じるのだ。
 それとも、
「一年もすれば、過去のこととして簡単に忘れることができるものだろうか?」
 と考える。
 確かに、一年という年月は、
「過去のこととして忘れる」
 ということには十分な年月であろう。
 しかし、過去にあったことが、
「どうしようもなく困った」
 ということであれば、決して忘れることはないと思うのだが、それは考えすぎだといえるだろうか?
「一度、痛い目を見て、それが教訓にならないとすれば、これほど怖いことはない」
 と感じるのだが、それを、
「男女の違いだ」
 といってしまうと、今の時代であれば、
「男女平等の観点からは、まずい」
 ということになるのだろうか?
 別に、それを、
「悪い」
 というわけではなく、
「考え方が違う」
 ということを、男女の差ということで、片付けようとしていることが、男女差別だということになるのかも知れない。
 こんな発想の人と、
「話もできない」
 といってもいいのではないだろうか?
 あくまでも、差別ではなく、
「考え方の違いだ」
 といっているのであって、それを差別だというのであれば、本当に話は最後まで平行線でしかないということになるだろう。
 警察が、通報されたところまでくると、そこは、マンションの一室だった。女性の一人暮らしなのか、間取りとしては、2?Kで、広さとしては、
「ちょうどいい」
 というくらいであったが、最初に感じたのは、
「これは狭い」
 という思いであった。
 なぜかというと、部屋が散らかっていて、お世辞にも、
「きれい好きではない」
 といってもいいだろう。
「きれい好きではない」
 という言葉に語弊があるかも知れないが、一番あてはまっている言葉だともいえるだろう。
 タンスやハンガーに架かっている洋服を見ると、そんなに安物ではないように見える。
 というよりも、
「派手な服装が多く、まるで舞台衣装のようだ」
 と感じるのであった。
 色も派手なものが多く、
「買い物依存症ではないか?」
 ということで、しかも、洋服屋アクセサリーに関しては、結構高価なものが多いということが分かるのだった。
 ブランドに詳しい警官がいたので、その人に聴くと、
「これ、全部ブランドものですよ。普通のOLでここまでそろえるっていうのは、パトロンでもいるのか、それとも……」
 といって口をつぐんだ。
 本当は言ってもよかったのだろうが、きっと、
「警官の自分が」
 という、場違いな感覚があったのかも知れない。
 だが、それを分かっているのか、清水刑事が、敢えて代弁する形で、
「風俗嬢なのかも知れないな」
 と言った。
 それを聴いて、固まってしまっていた場の雰囲気が軽くなった。
「凍り付いた空気が、溶けだした」
 という感覚であろう。
 固まってしまった空気が解けると、皆も、それぞれに自分の仕事を始めた。
 奥の部屋にある、机の上に写真立てがあったが、そこには、普通の服装をして、男と一緒に映っている女の子がいた。
「これが被害者?」
 と、清水刑事が聞くと、
「そのようですね」
 と、途中で言葉をとぎった警官が言った。
「こんなに清楚に見えるのに、この部屋のブランドものの服からは、想像もできないようだな」
 と清水刑事がいう。
 清水刑事とすれば、その写真を見た時、
「買い物依存症ではない」
 と感じた。
 買い物依存症であれば、あくまでも、買い物をすることで、ストレスを解消するということであろうから、買い物したものを、ネットに晒すことで、自分の自己満足をえようということで、それができれば、ネットオークションにでも売って、少しでも、次の資金を得るための、
「軍資金のでもしよう」
 と考えるのではないだろうか?
 しかし、彼女の服はそんな雰囲気はない。買った時の箱も奥のように無造作に積まれていて、ただ、片付けるという感覚はないようだ。
「この人は、断捨離ができない人なのかも知れないな」
 と感じた。
 つまり、
「モノを捨てることができない」
 ということで、整理整頓ができないことから、どんどん買ったものが溜まっていくということになり、
「ひょっとすると、買ったはいいが、その価値観には疎く、どれが大切なものなのかの判断がつかないことから、散らかっているのだろう」
 と思った。
 そして、
「だからこそ、部屋が狭く感じるんだろうな」
 つまりは、
「普通の女の子であれば、分相応の人さの部屋だが、だからこそ、この派手な衣装を見るとそれだけでも狭く感じるのに、それ以上に、片付けが下手だということで、さらに狭く感じさせられるということになるのだろう」
 ということであった。
 そんな彼女は、手前の部屋には、こたつ机が置かれていたが、その上に、薬の錠剤のビンと、コップが置かれていて、その上に、遺書があった。
 封筒に入れられることもなく、誰に対しての遺書というわけではなく、
「本当に遺書なのか?」
 と思えるほどであった。
 錠剤のビンは、睡眠薬であり、テーブルの上に錠剤が何粒か散乱していることから、
「何錠飲めばいい」
 ということは関係なく。致死量に至るだけのものを飲んだのだといってもいいだろう。
「確かに、睡眠薬というのは、楽に死ねると考えがちなんだけどな」
 と鑑識が言った。
 睡眠薬で死ぬ場合は、死にきれないということも多く、
「未遂で終わってしまう」
 ということも少なくないといえるだろう。
 実際に、睡眠薬を飲んで、昏睡状態で病院に運ばれ、
「胃の洗浄」
 などをすることで、息を吹き返すということも少なくないという。
 しかし、その場合、
「死なない代わりに、副作用」
 ということで、死にきれないことで、後遺症が残ってしまうということも多いと聞く。
 それを考えると、
「彼女の場合は、死にきれたことで、よかったといえるのだろうか?」
 と考えてしまう。
 気になったのは、
「何を思っての自殺なのだろうか?」
 ということであったが、遺書と思しきテーブルの上にあった紙には、自殺の理由に関しては書かれていない。
 それこそ、
「定型版の遺書」
 とい言ってもいいくらいで、
「先立つ不孝をお許しください」
 と、教科書のような遺書であった。