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真実探求

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 何といっても、着ぐるみもように、上から何かを羽織ったり、十二単衣のように、細工はいくらでもできるだろう。
 しかし、男を女に見せるのは、実に難しいことで、
「身体を削るなどしないとできない」
 ということになる。
 ただ、
「まさか、そんな子供だましのようなことが、実際の犯罪で起こるわけはない」
 ということで、
「犯人が、そんなことを考えるわけはないだろう」
 と思うはずだと勝手に判断して、
「犯人は男だ」
 と決めてかかってしまえば、何ら細工をすることもなく、いくらでもごまかせるというものである。
 しかし、実際にはそうではなかった。
 犯人は、
「女の割りには、身体が大きい」
 というだけのことで、
「生まれつきもって生まれた身体」
 ということであり、ここまでは、
「ただの偶然」
 ということになるであろう。
 しかし、実際にはそういうことではなく、彼女が、
「身体が大きかったことが影響しているのかどうか」
 ということは分からないが、
「身体は女だが、心は男」
 ということであっても、別に不思議はないだろう。
 これは、今に始まったことではない。
 今でこそ、
「性同一性症候群」
 などの問題が取りざたされるが、昔は、
「恥ずかしいこと」
 ということで、自らが名乗りを挙げるどころか、まわりが必死に隠したり、
「知られてはいけない」
 ということで、
「親子の縁を切る」
 などということが平気で行われたりしたものだ。
 だが、今の時代は、
「カミングアウト」
 というものをすることで、むしろ、
「同じような性癖の人に勇気を与える」
 と言われ、カミングアウトする方が、ほめたたえられるという傾向にあったりするということで、
「人権が認められる時代になってきた」
 といってもいい。
 ただ、まだまだ偏見というものはあり、
「毛嫌いする人を悪くもいえない」
 ということでもあるだろう。
 そういう意味では、
「犯人が、身体が大きい人物だ」
 ということで、
「犯人を男性だ」
 と勝手に決めつけたことは、よく考えてみれば、
「これこそ、差別ではないか?」
 ともいえるだろう。
 このことを、
「差別だ」
 という言い方を誰もしないということが、この事件における、
「一番の罪」
 なのかも知れない。
 もちろん、
「殺人事件に比べれば、LGBTの問題くらいは、大したことではない」
 などと言おうものなら、それこそ、
「コンプライアンス違反」
 とでも言われるかも知れない。
 ただ、本人は、
「自分の持って生まれた体形を使って何が悪い」
 と思っていることだろう。
「勝手に勘違いをしたお前たちが悪いんだ」
 と感じているだろうが、まんまと引っかかった方が悪いというくらいには感じていたことだろう。
 実際に、取り調べにおいては、この女はしたたかだった。
「自分がやった」
 とは決して言わなかったが、取り調べに屈することはなかった。
 何といっても、この女には、どこか、
「鼠小僧的」
 なところがあり、
「世の中の悪を正す」
 という勧善懲悪な精神が血の中にみなぎっているといってもいいだろう。
そもそも、この女の容疑というのは、
「遺産相続」
 というところから始まっていた。
 実は今回殺された男は、親の遺産を相続することになっていて、家族とは、本当は、
「溝が深い」
 と言われていた。
 家族からは、
「出来の悪い弟」
 ということで、まわりからは見られていたが、父親からは、
「あいつも大切な息子」
 ということで、まわりの目の厳しさの中で、父親だけから、なぜかかわいがられていた。
 家族のほとんどは、
「ひねくれた育ち方」
 というものをしていて、兄弟が、自分を含めると、5人いるということであった。
 そんな父親も、1年前に急に他界してしまった。
 それ以前に、遺言書というものが造られていて、その遺言書には、
「隠し子」
 というものの明記があった。
 その女は、ちょうど当時、20代前半ということで、弁護士事務所が探偵を雇って、その子の消息を探したが、その時は分からなかったのであった。
「見つかったら、遺産を他の子供と同じだけ与える」
 ということであったので、探偵も必死に探したが、見つからなかった。
 家族は皆ホッとしたのだが、ただ、遺産相続に関しての執行は、
「遺言書の公開から、1年後」
 というタイムラグがあったのだ。
 その条件として、
「相続対象者の全員が揃わなければ、1年の猶予を与える」
 ということで、
「全員にいきわたる」
 ということにしたのだった。
 だから、弁護士事務所も必死で、
「隠し子」
 いや、
「ご落胤」
 というものを探したのだ。
 だから、
「本来なら、もう少しで約束の1年」
 ということであったのだが、
「その遺産相続が失効される」
 という前に、次男である、
「三雲三郎」
 が殺害されたということになったのだ。
 もちろん、遺言書があろうがなかろうが、
「遺産を受ける人間が一人でも減れば、もらえる人間全員に加増される」
 というのは当たり前のことで、当然、動機を持っているのは、
「兄弟のうちの誰か」
 ということになった。
 そこで、警察も、
「相続人の中に犯人がいる」
 ということで、まずは、アリバイと、防犯カメラの映像から、犯人を捜すということをしてみたが、その犯人というものが特定できなかった。
 もちろん、
「遺産相続だけが犯人の手掛かりではない」
 ということで、被害者の交流関係、特に、
「女性関係」
 さらには、
「仕事とプライベイトでの、人間関係」
 などが捜査され、容疑者としては、数人が浮かんできた。
 遺産相続ということになれば、
「全員が容疑者」
 ということであり、女性関係ということでも、
「英雄色を好む」
 ということわざではないが、
「英雄でもないのに、女性関係の方は、それなりだった」
 と言われていた。
 といっても、
「お金を出せばモテる」
 という相手がほとんどで、
「お気に入りの女性」
 というのも、結構いるのだが、
「風俗の女」
 であったり、フラッと知り合った遊び人の女には、不自由をしていないということだったのだ。
 この男は、
「女が俺の男としての魅力に惚れているんだ」
 と思っているが、それは大きな間違いだった。
 彼女たちは決して、この男に、
「お金をせびるようなことはしなかった」
 というのは、
「この男は、判で押したような性格の持ち主」
 ということで、
「お金で動く女は嫌いだ」
 ということで、要するに、あざといことをして、明らかに、
「金目当てだ」
 という女に対しては、なびくことはない。
 それどころか、激しく嫌う方で、それだけ、自分のことを、
「正直者だ」
 と思っているのだ。
 本当は、
「自分を頼もしい男として見ない女」
 というものを毛嫌いすることから、金を露骨に欲しがる女は、
「騙されたつもりになって、騙してやろう」
 というくらいに思っていた。
 だから、自分のことを、
「勧善懲悪だ」
 と思っていた。
 これは、彼の兄弟全員に言えることだった。
「父親の遺伝」
作品名:真実探求 作家名:森本晃次