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真実探求

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 ということであった。
 実際の被害者の遺族も、納得がいくわけもないのだろうが、
「被疑者死亡」
 ということであれば、納得いかずとも、警察の捜査に従うしかないということになるのであった。
 その被疑者が勾留中に、毒を煽ったということであるが、それは、勾留期間も結構長くなりかかった時期であった。
「もう、二週間くらいが過ぎていて、そろそろ警察の方に焦りが出てくるくらいの時期ではないか?」
 と思われた時期であった。
 被疑者とすれば、
「もう少しの辛抱だ」
 ということだったであろう。
 この被疑者にここまで手間取ったというのは、この人に限らず、
「黙秘していた」
 ということがその一番の理由である。
「自分に都合の悪いことを言わなくてもいい」
 ということであるが、これが結構苦しいというものではないだろうか?
 相手はこちらに、何とか白状させようと、いろいろなことを言ってくるだろう。
 容疑者も人間なのだから、
「カチンとくる」
 ということだってあるに違いない。
 ただ、本当に犯人だということであれば、
「人を殺めてしまった」
 ということでの罪悪感から、
「何を言われても仕方がない」
 と腹をくくる人もいる。
 しかし、それはあくまでも、自分の中だけで納得できることだということであり、まわりからの攻撃が、自分の身体や精神をいかに貪っているかということを本人の自覚がないということになれば、
「次第に病んでくる」
 ということになるだろう。
 だから、病院に入院するような、
「精神疾患」
 に罹ってしまったりする人だっていることだろう。
 そのせいで、
「警察が糾弾される」
 ということもないわけではない。
 中には、警察の捜査というものの監視が、
「自分の仕事」
 というように、警察を張っているという、ジャーナリストもいるかも知れない。
 犯罪捜査というもので。
「罪を憎んで人を憎まず」
 とはよく言われるが、それも難しいことだ。
 それを誰もが納得しているということであれば、
「復讐」
 などということはないだろう。
 特に、昔では、
「仇討ち」
 ということもありえないことであろう。
 だが、江戸時代などでは、
「仇討ち」
 というものは、藩に願い出て、許しが得られれば、
「正当な行為」
 ということで、許されるのである。
 今の時代であれば、
「すべては、警察に委ねられ、警察の正当な手順での捜査によって、犯人を特定し、そこから、逮捕、起訴、裁判という
「正規の手順」
 によって、厳かに刑を確定させるということになるだろう。
 この時、
「自殺した容疑者」
 というのは、精神疾患があったというような報告もなく、誰もそんな雰囲気を感じている人はいないということであった、
「あくまでも、正規の手順による取り調べが続いていた」
 ということである。
 それは、
「相手が黙秘をしていた」
 というのであるから、それも当たり前のことだといえるだろう。
 しかし、不思議なのは、何といっても、自殺した骸の前に、
「遺書があった」
 ということである。
 そして、その遺書の内容というのが、何といっても、実に不思議な言葉であった。
 内容は、抜粋しておくが、意味としてはよく分からないものだった。
「お金の力に負けた」
 というようなことが書かれているのだが、
「どのようなお金」
 あるいは、
「それが正当なお金なのか?」
 ということが書いてあるわけではない。
 そして、その後に書かれているのは、
「お金よりも何よりも怖いのは、人間だ」
 ということであった。
 こちらも、その言葉を臭わせるような内容ではあるが、
「この事件とどこに関連があるというのか?」
 ということであった。
 それこそ、
「精神疾患ではなかったのか?」
 ということであったが、
「死んでしまった以上、精神鑑定ができるわけではない」
 ということだったのだ。

                 捕まった女

 そもそも、この事件がとういうものだったのかというと、容疑者の女である、
「釘宮やよい」
 が、
「勾留中に自殺を図る」
 という異常とも思えるような、結果的な結末を迎えることになる、約2カ月前に、
「一人の男性が刺殺される」
 という事件が起こったことから始まった。
 真っ暗な夜中、一人の男性が道を歩いていて、殺されるという事件が起こった。
 その男性が、
「どうしてその場所を歩いていたのか?」
 ということがなかなか分からなかった。
 発見された時、被害者の身元を隠すという作為的なこともされていなかったし、財布が抜かれているわけでもなかったので、
「物取りの犯行ではない」
 というところからの捜査であった。
 確かに犯行現場は、薄暗いところであったが、防犯カメラは、近くにあるわけで、犯行時間が、鑑識によって、ある程度特定されたことで、そこに映っているものから、捜査が勧められることになった。
 実際に、犯行の場面が、防犯カメラには映し出されていたのである。
 というのも、被害者は、普通に歩いていたのだが、別に誰かを警戒しているような素振りはない。
 少し足元がふらついているように見えたが、それは、
「かなり酒に酔っていたからだ」
 ということは、容易に分かった。
 鑑識の調べでも、
「泥酔状態だったのではないか?」
 という話だったので、
「辻褄が合っている」
 といってもいいだろう。
 被害者の後ろから、一人の男性が、迫ってきていた。
「明らかに狙っている」
 と思わせたのは、その男は、被害者との距離を、
「つかず離れず」
 ということで、特に、千鳥足の被害者と距離を合わせようとすれば、後ろの男も、それだけの中途半端な距離感を保つため、千鳥足風になるという必要があるからだ。
 それでも、前を歩いている被害者は、後ろから誰かが近づいているということを気にしていないようだ。
 むしろ、
「分かっていない」
 と言った方がいいかも知れない。
 何といっても、
「一度も振り返る素振りすらなかった」
 ということである。
 もし気づいていれば、振り返るだけのことをしなくても、一度立ち止まるくらいはありそうなのに、それもない。
 それだけに、
「まったくの無防備な状態だった」
 といってもいいだろう。
 その男は、防犯カメラが切れる前のちょうどいいところで意を決したのか、被害者の背後に近づいてきて、手に持ったナイフで後ろから刺したのであった。
 無音なので、悲鳴を上げたのかどうなのかは分からないが、被害者は、崩れ落ちるように倒れこんだ。
 犯人は、さすがに背中を刺し貫いた瞬間、戸惑っているようだったが、被害者が倒れたことで、その人が動かなくなるまでの、数秒間、仁王立ちの状態で見守っていたが、動かなくなったのを確認できたからなのか、その場から、平然と立ち去るように見えたのだ。
 立ち去っていった方向は、今来た道で、次第に、防犯カメラから消えていくのだが、影だけが、いつまでも残っているようで、それが却って不気味だったのだ。
 犯人の男は、黒ずくめで、川の外套のようなコートを羽織っていて、目深にかぶった防止だけを見ると、
作品名:真実探求 作家名:森本晃次