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真実探求

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 ということで、
「息子のため」
 ということで諦めていたといってもいいだろう。
 案の定、
「無駄になってしまった」
 ということで、父親は、
「担当者」
 である沢田に一度面会していた。
 沢田とすれば、
「お金持ちの父親と一度は遭っておくのは悪くない」
 という腹黒さからか、軽い気持ちで面会をした。
 その時、父親は、
「ああ、やはり、こんなところにかかわっていては、騙される人が多いだろうな」
 ということで、
「自費出版会社も、この男も、救いようがない」
 と思ったのだ。
 もっとも、
「息子を騙した」
 という恨みもあることから、
「こんな会社や、その社員がどうなろうと、知ったことではない」
 と思っていただけに、沢田との面会の時も、まったく自分の感情を表に出すこともなく、きっと沢田には、
「この人は何を考えているんだろう?」
 という思いだけで、その気持ちを探らせることはなかったはずだ。
 もっとも、沢田も、
「ただ軽い気持ちで遭ってみよう」
 と思っただけなので、
「父親が何を考えていようと、どうでもいい」
 としか思っていない。
 それだけ、その時の沢田は、
「人間の皮をかぶった」
 というだけの何かだったのだろう。
 三郎は、そんなことは知らなかった。
 しかし、さすがに、自費出版関係が、
「詐欺なんだ」
 ということが分かった時は、他の騙されていた人と同じで、
「被害者意識」
 というものに溢れていた。
 しかし、父親は、
「そんな息子を擁護する気にはならなかった」
 といってもいい。
 気持ちの中では、
「もう、こいつはダメなんだ」
 ということで、勘当していたといってもいいだろう。
 実際に、
「ろくでもない大人になっていた」
 ということで、その結末が、
「殺害された」
 ということだったのだ。
 そんな三郎は、最初こそ、「被害者意識というものにまみれて、
「俺は悪くない」
 という思いが強かったが、次第に、その気持ちが薄れていった。
 というのは、
「忘れてしまった方が気が楽だ」
 と感じたからだ。
 この、三郎という男は、
「反省」
 という言葉を知らない。
 本当は父親も、
「勘当したのだから、遺産をやる必要もない」
 と思っていたが、あくまでも、
「気持ちの上での勘当」
 ということだったので、誰もその気持ちを知る人はいないということで、
「遺産をやらないということは、俺の意志としても、煮え切らない」
 という思いと、
「次第に、死が確実に近づいている」
 という感情から、憎しみが次第に消えていき。
「まあ、いいか」
 という思いから、
「遺産の相続くらいはいいか?」
 ということになった。
 それが、三郎を増長させたということになるのかも知れない。
 三郎は忘れてしまっていた、沢田に再会した。
 一度は、全面的に信頼し、本を一緒に頑張って出版するという目標を立てた人だ。
 もちろん、それが詐欺だと分かって、
「恨みしか残らない」
 という相手になったのだが、本人は完全に忘れてしまったと思ったことから、
「再会しても、恨みはないだろうな」
 と、三郎は思っていた。
 しかし、沢田はそうではなかった。
「再会したということを、自分にとって、まずいことになる」
 と考えたのだ。
 しかも、三郎という男は、本人は自覚しているわけではないが、
「嫌味なところがある男」
 ということで、
「忘れてしまっているとはいえ、皮肉くらいは言っても、罰はあたらない」
 と考えていた。
 しかし、相手には、その一言一言が、心にナイフを突きつけられたような思いに至らせ、三郎にとっては、
「それくらいはいいではないか?」
 という思いが、相手にとっては、
「このままではいけない」
 と思うようになったのだ。
 それを考えると、
「そこから、殺意が芽生えても無理もないことだ」
 といえるだろう。
 ただ、この場合の殺意は、
「実際に三郎が殺された」
 ということで、警察が捜査する時、表に、
「殺人の動機」
 ということで現れるだけのものではないだろう。
 何といっても、表向きは、
「仲の良い仲間」
 というようにしか見えていないようで、その時点で、警察の捜査の中で、
「沢田という男はシロ」
 と最初から思われているかも知れない。
 だが、やよいが、
「容疑者として逮捕されることになったのか?」
 というのは、あくまでも、
「防犯カメラに映った映像」
 というものからだった。
「明らかに変装をしていて、怪しまれるに十分な行動」
 ということでの逮捕だったのだが、どこまで警察に確証というものがあったというのだろうか?
 殺人の動機という意味では、
「やよいには、そんなに強いものはなかった」
 といっていいはずだ。
 確かに、この三郎という男は、まわりからは、
「つかみどころのない男」
 という認識を持たれている。
 というのは、
「金持ちの坊ちゃん」
 ということで育っているからなのか、
「冒険心」
 というものはほとんどない。
 無難に生きていればいいという思いが強く、自費出版社系の会社に引っかかったのだって、今のところ、
「あのような冒険は、最初で最後」
 といってもよかった。
 だから、三郎は、自費出版社系への恨みは、その存在を自分の中から打ち消すことで、
「何もなかった」
 かのように考えるのであった。
 ただ、彼のそんな、
「都合のいい考え」
 というのは、
「まわりを巻き込んでしまう」
 ということになるのだ。
 やよいが、沢田に惹かれたというのは、
「同じような経験をこの人に感じたので、私の気持ちを一番分かってくれるはずだ」
 と思ったのだ。
 沢田も、彼女のことを快く思っていたことで、やよいは、
「両想いだ」
 と思ったのだろう。
 しかし、沢田はそうは思わなかった。
「この女、俺のことを好きになってくれたのだから、俺も好きになってやろう」:
 というような気持ちだったのだ。
「上から目線」
 ではあるが、やよいとしては、沢田の奥底の気持ちなど分かるはずもなく、
「この人は私の気持ちに答えてくれている」
 と感じたことで、すっかりのぼせてしまったといってもいい。
 そんな沢田が、まさか、
「人を殺すなんて」
 と思った。
「どうして、沢田が殺人計画を立てている」
 ということが分かったのかというと、
「一度は、三郎のことを、お金目的で誘惑しよう」
 と思っていたことで、その時は。三郎と、沢田が顔見知りだったということを知らなかったが、沢田の過去に関しては、誰にも喋らなかったが、それをやよいにだけは話したのだった。
 そして、その時、沢田の口から三郎の名前が出てきたことで、やよいには、何か嫌な気分にさせられるものを感じた。
 それがまさか、
「沢田の殺意だった」
 とは思いもしなかった。
 やよいは、三郎に近づいた。
 沢田の計画を何とかやめさせようという気持ちからだったのだが、それを、沢田が知ったのである。ただ、それは勘違いだったということを沢田が分からなかったことが悲劇に突入する段階だったのだ。

                 大団円
作品名:真実探求 作家名:森本晃次