小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

真実探求

INDEX|14ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

 と言われていた。
 テストの成績も、面接も確かに悪くはなかった。しかし、結果は不合格。数回テストは受けたが、どうにも合格に及ばない。
 最初の頃は、真剣に悩み、精神的にもかなりきつかったが、途中から、真面目な思いよりも、
「惰性になってしまっている」
 ということを自覚するのがつらかったのだ。
 だが、必死になって就活に望めばン望むほど、自分が惨めに感じられた。
 それがどうしてなのか分からない。たぶん、スチュワーデスという仕事が、
「本当に自分の目指しているものなのか?」
 と考えるようになったからであろう。
 そして、何度も不合格を受けるうちに、
「自分にはふさわしくない」
 と感じるようになった。
 それは、
「基準が高すぎて、自分にそぐわない仕事だ」
 と思うことと、
「そんな仕事に時間を費やすということが、無駄ではないか?」
 と感じるようになったことである。
「夢の実現」
 というものを諦める勇気と、
「時間の無駄」
 ということを分かっているのに、それを、勇気のなさで決めかねているという、
「優柔不断さ」
 というものが、自分の中でジレンマとなって、苦しむことになるのが、忌々しい思いにさせているのではないかと感じるのだった。
 それを、一番よく分かったのは、沢田だった。
 やよいは、自分のことを、
「勧善懲悪な性格だ」
 と思っていたが、沢田は自分のことをそうは思っていなかった。
 もし、勧善懲悪だという思いがあったとすれば、
「自費出版会社なんかに、自ら身を落とすことはなかったんだ」
 と思っているからだ。
 つまり、
「自費出版会社のことを、最初から詐欺集団だと自覚していた」
 ということである。
 それは、
「自分の野望を叶えたい」
 という気持ちがあったからなのかも知れない。
「では、野望とはいったい何なのか?」
 ということであるが、正直、自分でもよく分からない。
「お金がほしい」
 という思いがあったのかどうなのかも、自費出版を辞めた時には分からなかった。
 彼は、実にうまいタイミングで辞めたといってもいいわけだが、それは、
「ここにいてはヤバい」
 という気持ちがなかったわけではないが、それよりも、
「無情な気持ちになった」
 というのも事実だった。
 実際に、自殺を考えたこともあった。
 自殺に至らなかったのだから、
「勇気がなかった」
 ということである。
「自殺する勇気もない」
 そして、
「時間を無駄に過ごした」
 という思いは、その程度の大小こそあれ、やよいと同じ考えだったのかも知れない。
「スチュワーデスになりたい」
 と思うが、なれずに、あがいている。
 そのうちに、
「何のために、スチュワーデスになりたいと思ったのか?」
 という基本的な思いに立ち返った時、やっとやよいは、スチュワーデスを諦める気持ちになったのだ。
 それを見ていると、
「まるで、俺の人生のようではないか?」
 と、沢田は感じた。
 沢田は、まるで娘といってもいいくらいの年齢であるやよいを見ていて、どこか恋心のようなものを抱いていた。
「最初から恋心があったのかも知れないな」
 と次第に思ってくるのだが、やよいの方も、最初から、
「恋心を抱いていた」
 と思っていたのだ。
 しかし、実際には、
「最初から」
 というのは錯覚で、確かに最初から、沢田に対して、他の人には抱いたことのない特別な思いがあったが、最初は、
「尊敬」
 のようなものだった。
 父親に対して抱く、頼もしさのようなものだったのだが、それが、
「恋心に変わった」
 というのはいつからだったのだろう?
 それは、沢田が、
「最初からやよいに恋心を抱いていたのかも知れない」
 ということを感じ始めた時だった。
 お互いにそれとは知らずに、同じタイミングで、波長が合うというのか、相手を見ていると気づくことがあるという感覚になるのであった。
 それこそが、本当の恋愛感情なのかも知れない。
 それが、
「男と女」
 という感情ではなく、
「気持ちの上でつながる」
 という思い、それを、
「純愛」
 というものではないだろうか?
 ただ、人間というのは、
「純愛というものだけで我慢できるものなのだろうか?」
 といえる。
 人間には、
「欲」
 というものがあり、それが強すぎると、ろくなことはないというのが当たり前のことだといえるだろうが、逆に、
「欲がない」
 というのは、それ以上に、
「人間の営みというものを、根本から崩すものになる」
 といってもいいのではないだろうか?
 というのは、
「食欲」
「睡眠欲」
「性欲」
 などの、生きていくうえで、どうしても必要なもの。
 さらには、
「物欲」
「金銭欲」
「名誉欲」
 という、こちらも生きていくうえでは必要なものとしては、前述の三つと変わりはないだろう、
 しかし、前述の三つは、
「人間の本能」
 というものとかかわっていると考えれば、絶対に必要なものといってもいいだろう。
 それが、
「生存に必要なもの」
 ということで、後者とは明らかに違う。
 後者の場合は、比較的、あまりよくは言われないが、必要であるとはいえるだろう。
 後者をもし、
「悪」
 として捉えるとすれば、それこそ、
「必要悪」
 といってもいいだろう。
 やよいの、
「スチュワーデスになりたい」
 というものは、欲で考えれば、
「名誉欲」
 といってもいいかも知れない。
 ただ、これは、諦めるには、かなりの勇気がいるのも否めない。今まで、それを目標にして生きてきたわけで、諦めるということは、自分の人生における、一つの指針を失うということで、
「生きがいを失う」
 ということになるだろう。
 これは、沢田が、
「自費出版会社に入った」
 ということにも言える。
「この会社で、自分のやりたいことをやる」
 ということだったはずだ。
「自分のやりたいことと、自分にできることの融合」
 というのが、やりがいとなり、そして、生きがいとなってくるという考え方が、彼にとっての、
「名誉欲だった」
 といってもいい。
 実は、やよいは知らなかったが、
「結婚しよう」
 と思った三郎は、
「学生時代に、小説を書いていて、この自費出版社系の会社に引っかかった」
 という過去があった。
 これは、三郎にとっても、
「黒歴史」
 だったのだ。
 誰にも、そのことを言わずに、自分の胸だけに納めてきた。
「なんとも、恥さらしな真似をしたものだ」
 と自分を苛めたものだった。
 それでも、何とか表に出すことがなかったのは、
「親の威厳」
 というものに頼ったからだ。
「親のお金で、何とか本を出す」
 ということをしようと考え、親を説得したところまではよかったが、
「まあ、親も、どこまで自費出版社を信じていたのか分からない」
 といってもいいだろう。
「どうせ、騙されている」
 ということは分かっているが、まだ学生で、一途に信じている息子を言いくるめても、簡単にいくわけはないということを分かっていたのだ。
 だから、
「痛い目に遭えば分かるだろう」
 ということで、お金に関しては、
「無駄になるかも知れないが、授業料」
作品名:真実探求 作家名:森本晃次