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芸術と偏執の犯罪

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 その日は、魚が思ったよりも釣れず、期待外れだったという思いもあったが、話が弾んだことで、すぐにお腹がいっぱいになった。
「解放感からの胸がいっぱいだ」
 ということになるのだろう。
 元々、このソロキャンパーの人も、最初は、友達とのキャンプから始まった。最初から、ソロキャンをするほど、
「他人と一種にいるのが嫌だ」
 というタイプではなかった。
「何かがあったから、一人がいいんだ」
 と思うようになったのだ。
 そうでもなければ、同じキャンプ場でもう一組しかいない場合、その
「お隣キャンパーさん」
 が、
「せっかく一緒になった縁なので、ご一緒しましょう」
 といってきたとしても、
「はい、そうですか?」
 とは言わないだろう。
「せっかくですが、私は一人がいいので」
 と、相手に井山思いをさせても、初志貫徹を貫くはずである。
「そうでなければ、自分が自分ではなくなってしまう」
 というくらいに感じるだろうからではないだろうか。
 しかし、このソロキャンパーは、隣の親子と仲良くキャンプをすることを選んだ。それは、
「かつて、人とのキャンプの楽しみを知っているからだ」
 ということになるだろう。
「では、なぜ、一人キャンプを選んだのだろうか?」
 それは、
「何かがあって、人とは煩わしいと思うようになった」
 ということであり、
「その何かというのは、人間関係によるものだ」
 と考えられる。
 また、他のパターンとしては、
「何かの事件があった」
 ということ。
 あるいは、
「裏切られた」
 と感じたこと。
 考え始めるときりがないともいえるだろう。
 そこには、
「人間の感情の数だけ、理由というものが考えられる」
 といっても過言ではないからだった。
 だから、
「他の人がその理由を詮索する」
 ということは、
「時間の無駄になるのではないか?」
 といえるだろう。
 その日の夕餉は、結構楽しかった。適当に酒も飲んだので、夜は結構早めに眠ったような気がする。
「いつ眠りに就いたのか覚えていない」
 というほど、疲れていたということで、おかげで、
「ぐっすり眠れた」
 といってもいいだろう。
 朝は結構早く目が覚めた。ただ、何度か夜中に目を覚まし、何度となく、眠りに就いたことで、時間の感覚が少しマヒしていたのかも知れない。
「そろそろ起きるか?」
 と思った時は、時間的に、まだ早朝の5時くらいかと思っていたが、時計を見ると、7時前くらいになっていた。テントの外に出てみると、すで夜は明けていて、
「おはようございます」
 と、お隣キャンパーさんは、朝食の用意を始めていた。
「ゆっくり眠れましたか?」
 と声を掛けられたので、
「ええ」
 と答えたが、自分の方が先に起きるつもりだったことで、先を越された気分になり、少し目覚めの気分は、あまり気持ちのいいものではなかった。
 彼は昔から、自分がしようと思ってことを先にされたり、指摘されると、ばつが悪いとという思いからなのか、非常に反発したくなる気持ちがあった。
 特に、親に対してはその傾向が強く、反発心が大きかった。
 だが、それは、今はまわりに対しては、その気持ちが大きい。
「だから、ソロキャンパーになったんだ」
 ということを、いまさらのように思い出させることになったのだろう。
「そっか、そうだったよな」
 と、感じると、自分で自分を、まるで荷が主を噛み潰したような、中途半端に嫌な気分にさせられたものだ。
 お隣キャンパーさんが、朝食の用意をしている間、なかなか目覚めのよくない彼は、目を覚まそうということに苦労しているところで、何やら悲鳴のようなものが、遠くから聞こえてきた気がした。
 それは、目覚めの間の特有な感情からで、
「遠くで聞こえたかのように思うのは、なるべく、目覚めの感情を刺激したくない」
 という思いからで、一種の錯覚であり、実際には、そのお隣キャンパーさんによる悲鳴だった。
 しかし、こんなところで、悲鳴を発するなど、尋常ではないということで、何とか無理矢理にでも目を覚まさせた彼は、表に飛び出した。
 そこで、見たのは、何やら、大きなものが川を流れてきたことだった。
 それが人間であることは、すぐに分かったが、川から流れてきていることから、それが、
死体であるということも、疑いようがないと思われた。
 仰向けになっていることで、胸に刺さっているナイフが、朝日に光っていた。
 しかも、川を流れてきたことで、水にぬれているだけに、ナイフの光が鮮やかだったことは印象的だ。
「とにかく警察を」
 ということで、警察に連絡をし、
「この間に、朝食を済ませよう」
 ということを考えたが、さすがに精神的にも、朝食をゆっくりとできるだけの余裕があるわけもなく、
「何を食べたのか分からない」
 というくらいに味がしなかったといってもいいだろう。
 山のキャンプ場ということで、近くの駐在所からは、すぐに制服警官がやってきたが、刑事と思しき人がやってきたのは、それから、半時ほどしてのことだっただろう。
「なるほど、このキャンプ場は、このあたりで、川の様子が一変するわけですな?」
 というのが、刑事の最初の印象のようだった。
「はい、だから、ここがキャンプ場になっているんです」
 とソロキャンパーが答えた。
 なるほど、ここは、少し広い川になっていて、水深は結構浅く、河原には石が結構敷き詰められた状態で、少々広いところを作っている。
 まわりは、森に囲まれていて、まわりからも隔離されているような感覚なので、
「キャンプ場としては、最高だな」
 と、一人の刑事は、ここに、たくさんのテントが密集している状況を想像することができることから、
「なるほど」
 と、独り言ちていたのだった。
 しかも、それだけの人がキャンプをしているところに、このような死体が流れてくれば、さぞや大パニックになったであろうことは、十分に想像ができる。
 それを考えると、
「キャンプ場というのは、時期によって、まったく違った顔を見せるんだろうな」
 と感じたのだった。
 初動捜査」
 ということで、鑑識が入っての、捜査だったが、
「上流から流れてきたのは明らかだが、この上に、殺人現場になるようなところというのがあるんだろうか?」
 と刑事が言ったが、それを聴いたソロキャンパーは、
「ここは、これより上流のほとんどの場所は、森の中にあるので、川に近づくことはあまりできないんですが、この川は、名水の一つと言われるくらいの場所ですので、キャンプ場から、上流であれば、数か所、川に近づくことのできるところがあるんですよ」
 と言った。
「そこは、一般の人が普通に入れるところなんですか?」
 と刑事に聴かれ、
「中には、入口があって、鍵がかかって簡単には入れないところもありますが、一般の人が水を汲みに来れるところがあるので、そこだったら、夜中でもなければ、結構人がくると考えられるところはありますね」
 ということであった。
「あなたは、いかれたことあるんですか?」
 と言われたので、
作品名:芸術と偏執の犯罪 作家名:森本晃次