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芸術と偏執の犯罪

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 といってもいい、ちょうど、テレビ欄が乗っているその裏の、トップに大きく出ていた事件ということで、
「ああ、これか」
 と、梶原探偵にもすぐに分かったのだった。
 しかも、新聞社としても、
「同じマスコミ関係の人が殺された事件」
 ということで、この面に持ってきたのも当たり前だといえるだろう。
 そこには、
「マスコミに対しての挑戦か? マスコミ関係者殺人事件」
 ということで載っていた。
 正直、ハッキリとまだ事件の概要が分かっているわけではないので、せめて、発見現場と、殺害推定時刻(これは、解剖を待たなければいけないという但し書きがある)であったり、被害者についての、表面上に分かっていることであった。
 もちろん、同じマスコミとしては、確かに、
「憎々しい相手」
 ということではあるが、マスコミとしては、最低でも、
「死人にムチを打つような真似ができるわけはない」
 ということで、性格的なことには触れていなかった。
 あくまでも、
「犯人が、一人のジャーナリストを殺害した」
 ということで、それが、
「警察だけではなく、マスコミに対しての挑戦だ」
 ということで、彼らとしては、
「これで新聞も売れる」
 ということから、煽りに徹したといってもいいだろう。
 警察はそれを分かっているだけに、
「マスコミというのは、えげつないな」
 とは思ったが、
「昨日の聞き込んだ内容が間違いではなければ、それも無理もないということになるのではないか?」
 といえるだろう。
「警察も、挑戦を受けているといってもいいだろう」
 ただ、警察が、その前に起こった、
「河原での殺人事件」
 というものと、若干の関連性を探っているということを、マスゴミには伏せている。
 もし、それが分かれば、少なくとも、
「警察の捜査がやりにくくなるだろう」
 ということで、
「決して、警察には言わない」
 というかん口令が敷かれていたのだった。
 それを考えると、
「警察というものと、マスコミというものが、どこか、表裏であり、交わることのない平行線のように見えるというのも、無理もないことではないだろうか?」
 と思えるのだった。
 そんな警察や、マスゴミを出し抜いた形で、依頼人は、探偵のところに捜査を持ち込んだ」
 ということになるだろう。
 依頼人がもちろん、どのように考えているのかということを、探偵である梶原がどこまで分かっているのかということは、分かるわけもなかった。
 とにかく、
「警察にいえない」
 ということとして、最初に被害者が、懸念を持っていたのは、
「犯人が、もし被害者に対して持っていた動機が、復讐だということになれば、私がもたらした情報から、相手は、通報した人間が私だということに気づくのではないか? とううことが恐ろしいんです」
 というのだった。
「それはどういうことですか?」
「私は、もし警察がいう時間が犯行時刻だということになれば、私は、そのすぐ後に、被害者と会う約束をしていたんです。結局だいぶ待って現れないから帰ったんですけど、私が、被害者と会う約束をしていたということを知っている人が何人かいるわけで、その中に犯人がいれば、私の立場は危ないものになるわけです」
 というのであった。
 この場合の、
「立場」
 というのは、言うまでもなく、
「命」
 ということになるだろう。
 被害者は、
「警察にいえない」
 というのは、そういう切羽詰まったことから、
「警察では安心できないので、探偵にお願いする」
 ということで、
「自分の安全が保たれるのは、犯人が逮捕される場合でしかない」
 ということを考えると、
「やはり、探偵が安心だ」
 ということになるであろう。
「ところで、あなたは一体、何を見たというのですか?」
 ということで、探偵が本題に入った。
「はあ、実は、殺人事件そのものを見たというわけではなく、新聞に載っていた内容を見て、少し気になるところがあったので、そこの問題なんです」
 と、川口はいう。
「じゃあ、あなたは、被害者が殺されるまさにその場面を見たというわけではないとおっしゃるわけですね?」
「ええ、そうではありません。ただ、あの場面を警察に証言されると、犯人には都合が悪いのではないかと私は思ったものですから、だから、怖いと思っているんですよ。もし、これを警察に話して、警察が、あなたに危険はないと勝手な判断をされて、実際には、犯人としては、私が邪魔だと思っているとすれば、私は誰にも守ってもらえませんからね。もし、この事実を警察にいって、犯人が、もっと他にまずいことを見られたと思い、それを私が思い出したように警察に後になって言われるとまずいと考えると、私の命を狙いにくるのではないかと思ったんですよ」
「なるほど、それは考えられることですね。あなたは、その目撃を、犯人があなたの命を狙わなければいけないことだ思っていらっしゃるんですか?」
「それは、自分が犯人ではないので分かりませんが、余計なものを見てしまったという気持ちは強いです。時間が経てば経つほど、怖くなってくるという感覚は実際にあります。今は、夜なかなか寝付けないという状態になってきているくらいです」
 夜が眠れないというのは、結構大変なことなのだろうと、その話を聞いた梶原探偵は考えていた。
「あなたが、気にしていらっしゃる事件というのは?」
「はい、この間、神社の鳥居前の車のトランクから、死体が発見されたというのがあったでしょう?」
「ああ、あの事件ですね。確か、殺されたのは、ジャーナリストで、結構強引な取材方法だったようで、そういう意味で問題になっていたということですね? あなたは、その被害者をご存じなんですか?」
「いいえ、直接は知りません。ただ、一度前に、ちょっとした取材を受けたことがあります。といっても、私のことに対しての取材ではなく、名前の出ることのない一般的な意見ということでの取材だったので、その記事が出た時も、私の名前が出ることはありませんでした」
 ということであった。
「なるほど、じゃあ、面識としては、ないのも同じだといってもいいかも知れないですね」
「ええ、そういうことになります」
 それでも、この川口という男は何を心配しているというのだろう?
「ちなみに、殺害現場を見ていなかったのに、何か犯人にとって都合が悪いようなものを目撃したと思う理由は、その男が犯人だという確たる証拠のようなものがあなたにあったということだと思っていいんですか?」
 と聞くと、
「ええ、私は、その人が、犯人というか、共犯だと思っています。その意味で、私が狙われるということを、警察は逆に考えないのではないか? って思ったんです」
「ん? そのあたりがよく分からないんですよ」
 と、梶原探偵が頭を傾げた。
作品名:芸術と偏執の犯罪 作家名:森本晃次