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芸術と偏執の犯罪

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 この車を撤去するには、当然、車の持ち主を探し、見つからなければ、レッカー移動の手配を行い、警察への出頭を促すことを知らせることも考慮しないといけない。
 そうなると、場合によっては、
「車の中の内部捜索」
 ということも必要になり、そのための、令状が必要になる。
「そうなると、自分だけでは済まなくなるので、当然警察署の刑事に立ち会いをお願いする」
 などということも必要になるということだ。
 この警官は、
「街の住民」
 との、軽い挨拶であったり、
「治安を守る」
 ということには、煩わしさは感じないが、
「警察署の刑事」
 との話であったり、捜査依頼などというのは苦手だった。
 どうしても、警察という組織の、
「縦割り」
 というものが、
「偉そうに高飛車対応されてしまう」
 と思うと、
「考えただけでもたまらない」
 と感じるのであった。
 この時にも、この警官は、
「以前にも、交通課の世話になったことがあったが、その時の刑事が、やけに上から目線だったな」
 ということを思い出して、
「ああ、億劫だな」
 と思うのだった。
 しかも、その刑事の態度が悪かったということで、その時の車の持ち主が交番にやってきて、
「あの時のあの刑事の対応は何なんだ? あれが市民を守る警察の態度なのか?」
 といって、収まらない憤りを、こちらにぶつけてきたのだ。
 もちろん、面と向かっていうわけにもいかないからなのだろうが、
「八つ当たりをされるこちらの身にもなってみろ」
 と言いたいのだった。
 しかも、元々は、その男が警察を煩わせるようなことをしたから悪いのではないのだろうか?
 その男が、そのきっかけさえ作らなければ、一切何もなかったということで、誰も憤りを感じたり、八つ当たりをされることもなかったのだ。
「自分のことを棚に上げて」
 とは思ったが、ここで怒っては、元の木阿弥、
「どこかで悪い流れを切る必要がある」
 ということで、
「ここは、自分が大人になるしかない」
 と、甘んじて。その役を引き受けるということになったのだった。
 その時のことが、チラッと頭をよぎった。あれからまだ一年くらいしか経っていないので、正直、その時の記憶は鮮明で、
「まるで昨日のことのようだ」
 といってもいいだろう。
 しかし、
「これも、警察官の仕事」
 というもので、割り切りさえできれば、
「あんなやつのことは、放っておけばいい」
 というくらいに、その刑事のことを思えばいいということであろう。
 そんなことを考えていた、この警官、名前を、
「長谷川巡査」
 と言った。
 長谷川巡査は、年齢とすれば30歳くらいで、
「刑事志望であれば、そろそろ刑事課に赴任してもいい年齢」
 ということであった。
 彼も、確かに、警察に入ったときは、
「いずれは刑事として活躍したい」
 と思っていたのだが、刑事というのが、
「あれほど、高飛車だったとは」
 と思うと、自分が、ああなってしまい、まわりから嫌われることが嫌だったのだ。
「嫌われるくらいだったら、警官の仕事に甘んじている方がいい」
 ということと、
「昇進試験などに合格しないと昇進できない」
 ということが一つのネックであった。
「もう、高校時代のような、試験勉強は二度としたくない」
 というイメージを特に持っている。
 その理由の一つに、
「肝心な試験日に、体調を崩してしまった」
 ということで、それでも、
「せっかく勉強したのだから」
 ということで無理を押して試験を受けたが、結果は分かり切っていたことだった。
 それを後から思い返すと、
「試験を受けている時、死にそうなくらいにつらかった」
 という思いが一番強く、
「無理は決してしない」
 と思うようになったのがその時で、
「少しでも無理が必要であれば、それに抵触しないようにしないといけない」
 と思うようになり、警察に入ってから、刑事課が想像以上に大変であり、気苦労もあると思うと、
「刑事になんかなるもんじゃない」
 と思うようになったのだ。
 しかも、その思いの元になった。
「試験勉強からの昇進試験」
 というものは、最初からできるわけはないと考えるようになったのだ。
 だから、
「僕は、このままずっと交番勤務でいいです」
 とまわりにもいうようになった。
 だから、ある意味、
「今が一番楽しい時期なのかも知れないな」
 と長谷川巡査は思っていた。
 そんな長谷川巡査であったが、
「やはり、見回りをしていると、三日経っても車を動かす素振りはない」
 ということで、
「これじゃあ、もうどうしようもない」
 ということになり、警察署の交番に話をして、交通課の刑事に来てもらった。
「あいつだったら嫌だな」
 と思っていたが、幸いにも違う刑事だった。
 しかも、その刑事は、そこまで皮肉をいう人でもなく、長谷川巡査の話しを、順序だてて静かに聴いてくれ。聞き直すこともなく、ちゃんと理解してくれた。
 もちろん、これが刑事課の刑事などのように、
「殺人事件の捜査」
 ということであれば、重要事項をしっかり逃さないようにするため、同じところを強調して話さなければならないなどということも当たり前にあることだろうが、
「車の放置」
 ということでも、交通課案件であれば、一通り聞けば、納得できるということになるのだろう。
 それを思うと、ここから先は、その刑事の指示に従うという立場になり、彼は、テキパキと段階を踏みながら、厳かに、しかし、事務的とも思える対応をしていた。
 その刑事は、名前を、
「山下刑事」
 というのだという。
 山下刑事は、最初、車を表からいろいろ見ていたが、何かが気になったのか、鑑識を呼んできた。長谷川巡査とすれば、
「あの時点で、そして、自分の立場から言って。車の中をじろじろと見るのは、プライバシーの侵害になるということでまずいだろう」
 と思っていた。
 しかも、車のガラスには、スモークが貼られていた。しかも、おかしなことに、フロンドグラスにでもである。実に不思議なことであった。

                 マスゴミの善悪

「これじゃあ、中を見られたくない」
 という目的しかないと思えるほどである。
 ただ、最初からスモークを貼っているのだから、
「放置というのは、まるで最初から考えていた確信犯ということではないか?」
 ということになり、逆に、
「長谷川巡査が、三日経ってのこの判断は、適切だった」
 ということになるだろう。
「山下刑事、何か不審な点でも?」
 と長谷川巡査が聴くと、
「うん、やはり、フロンドガラスに貼られたこのスモークだろうね」
 ということであった、
「だけど、これを中を見えなくするという目的だったと考えると、おかしいんだよ。ここに放置しておけば、誰かが不審に思うとは感じなかっただろうかね? 少なくとも、この土地の所有者である神社の方は、おかしいと思わないんだろうか? それとも、ここは、そんなにしょっちゅう、神社に関係のない人が、何日も止めておく場所なのかな?」
 というのだった。
作品名:芸術と偏執の犯罪 作家名:森本晃次