小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

高い授業料

INDEX|7ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

 柏田という青年は、そんな渦中に巻き込まれることになったわけだが、それを、
「柏田も悪いんだ」
 というのが、昔だったら言われていたことなのかも知れない。
 例えば、昭和の頃にあった。
「いじめっ子いじめられっ子問題」
 というのは、
「虐められる側にも、何か問題がある」
 といわれていた。
 しかし、平成になってからの
「いじめ問題」
 というのは、虐められる側に問題があるわけではなく、
「虐める側の家庭環境」
 であったり、
「孤独に追い込まれる」
 ということから、精神的に追い詰められることから、
「理不尽な苛めに走る」
 ということになるのだ。
 いじめっ子にも、同情の余地というものはあるのかも知れないが、虐められる方には、何ら落ち度というものがないだけに、
「これほど理不尽なことはない」
 ということになるだろう。
 それも、
「世の中何が起ころか分からない」
 ということで、それまでは、
「絶対に起こらない」
 といわれ、
「神話的な話が、あっけなくウソだった」
 ということが平気で起こる時代になった。
 それが、平成に入ってからすぐくらいに起こった、
「バブルの崩壊」
 というものであったのだ。
 何といっても、
「銀行は絶対に潰れない」
 といわれたことが、バブルの崩壊で、最初に起こったことだった。
 しかも、バブル崩壊というのは、
「まったくこんなことが起こるなんて、まったくいきなりのことだった」
 と思っている人がほとんどであろう。
 それまでの、
「バブル期」
 というのは、
「仕事をすればするほど儲かる」
 というものであった。
 会社は、事業拡大すればするほど利益が出るわけなので、当然、それだけ事業拡大を目指す。
 すると、社員の数が限られているので、募集を掛けて人が来ても、拡大した分を賄えるわけでもなく、当然、
「現状社員にしわ寄せがいく」
 ということだ。
 そうなると、仕事は、寝る暇もないほど追っかけてくるということで、
「二十四時間戦えますか?」
 という宣伝文句のスタミナドリンクが、飛ぶように売れるというものであった。
 会社も儲かっているのだから、その分の手当は当然出すだろう。
 また、その会社の資金も、銀行はポンと出してくれる。しかも、
「利子という利益を増やしたい」
 と銀行は考えるだろうから、それだけ、たくさんの
「貸し付けを行う」
 ということになる。
 それが、
「過剰融資」
 というものである。
 そのうちに、音もなく、バブルの崩壊が始まっていく。すると、気が付いた時には、どこかしこで、ヒビが入ってしまい、気が付けば、
「どこもかしこも、首が回らない」
 ということになり、まずは、その矢面に立つのが銀行だった。
「貸し付けた金が返ってこない」
 つまりは、
「貸した金が焦げ付く」
 ということになり、
「銀行の破綻」
 というものが、明るみに出ると、
「神話が崩壊した」 
 ということで、大パニックになってしまう。
 そもそも、前兆もなく崩壊したのである。
 それこそ、
「まったく光らない星が、まったく気配もなく近づいてきて、気が付けば、地球に衝突していた」
 というのと同じものである。
 そうなると、
「地球からはじき出された人が、どうなっていくか?」
 ということが一切分からなくなってしまい、それこそ、社会問題としての、
「バブル崩壊」
 というものが収まったとしても、その影響は今も続いていて、
「失われた三十年」
 といわれていることだろう。
 たぶん、もうすぐ四十年ということになるだろうから、そのまま更新という形で、
「失われた四十年」
 といわれることは間違いないだろう。
 そんな時代が次第に進んでいくことで、巻き起こってきたのが、
「個人情報保護」
 という問題。
「男女雇用均等法」
 という問題。
 さらには、
「コンプライアンス違反」
 という問題が、バブル時代から、
「悪しき伝統」
 とでもいっていいような社会問題に対して、庶民が、考える中で、
「政府や企業は自分たちに何もしてくれない」
 ということから、
「自分たちの身は自分たちで守る」
 ということで、
「弱者の立場に甘んじている必要はない」
 という時代になったのだ。
 戦後の復興から、経済成長にかけては、庶民が支えることで、国家や企業が、社員を保障するというような、力関係が、保たれていたことで、
「コンプライアンス問題には目を瞑る」
 ということだったのかも知れないが、今の時代は、
「年金問題」
 しかり、
「年功序列」
「終身雇用」
 というものがなくなってきたことで、社会における、
「最低限の保障」
 というものすら、なくなったのである。
 そうなると、
「国家や企業は。自分たちが生き残るため、社員や国民を平気で切り捨てる」
 ということになると、
「自分の身は自分で守るしかない」
 ということになる。
 だとすれば、今まで我慢してきたことを我慢する必要もないということから生まれてきたことに違いない。
 ただ、
「個人情報保護」
 というものに関しては、元々の問題としては、
「詐欺行為」
 というものから出てきたことである。
 ただ、これも、
「バブル崩壊」
 などというものがなく、
「普通に仕事をしていれば、普通に生活ができる」
 という、
「当たり前のことが当たり前ではなくなったことで増えてきたことだ」
 といえるだろう。
 特に、
「パソコンやケイタイなどの普及」
 ということでの、
「サイバー詐欺」
 というものが増えてくると、手口もどんどん巧妙になり、
「オレオレ詐欺」
 などというものが出てきてからは、それこそ、
「自分の身は自分で守る」
 という観点から、
「パスワードや暗証番号を盗まれないようにする」
 という、
「個人情報保護」
 という問題が出てくるということになるのであった。
 そんな時代が、ここ40年近く続いている。世の中は、
「悪化の一途をたどっている」
 といっても過言ではないだろう。

                 ゆすりたかり

 そんな時代において、柏田に襲い掛かってきたのは、通勤電車の中での、
「冤罪」
 だったのだ。
 前述にあるような、
「突然に襲ってきたもの」
 ということで、満員電車の中で、いきなり、
「この人痴漢です」
 といって、一人の女の子がいきなり柏田の腕を握りしめて、まわりの人にアピールする。
 まわりの人はもちろん、柏田も最初、
「何が起こったのか分からない」
 明らかに、他人事としてしか思っていなかったのだ。
 しかし、それが他人事ではないと気づいたのは、まわりの視線が、急に敵視してきたからというのと、人によっては、汚らわしいものでも見るかのような、蔑んだ視線を浴びせてきたことからであった。
「追い詰められている」
 ということは分かったが、何を言っていいのか分からない中で、無意識だったのだが、
「俺じゃない。俺は何もしていない」
 という言い訳を必死にしていた。
 頭の中では、
「言い訳をしても仕方がない」
 という思いと、
作品名:高い授業料 作家名:森本晃次