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と思い込むことから、
「病気が治った」
と勘違いをしてしまう。
しかし、治ったのかどうかは。医者が判断することで、なんでもできるという精神状態になったことで、薬を辞めてしまえば、結局、元の木阿弥になってしまう。
ということであろう。
さすがに、柏田は、病気ではないのだが、自分の中で、
「感じる時間の感覚が、極端な気がする」
ということで、
「自分には何かの精神疾患があるのではないか?」
と考えるようになった。
一つには、
「それまではあまりいなかったのだが、病院で、精神疾患という診断を受けた人」
というのが、結構いるということであった。
それまでも、学校であったり、知り合いが増えるとそのたびに、その中であったり、知り合いの身内の中に、
「精神疾患」
と診断された人もいるという。
「昔は、そんなにいなかったのに」
と思ったが、それが本当なのかどうか、正直判断に困るというものだ。
というのも、
「精神疾患というのは、やはり昔は少なかったのだろう。特に昭和の頃などは、学校の中で、障害児学級というものがあったというのを聴いたことがあるが、どうしても、まだまだ差別問題などがあり、家族に障害者がいるということで、まわりから、どんな目で見られるか分からない時代だった」
ということである。
「何もなりたくて精神疾患になるわけではない」
といいたいのも山々だろう。
もっといえば、
「まわりの環境が、その人を追い詰めて精神疾患にしたんだということであれば、悪いのは、
「差別的な態度を取る連中であり、自分たちこそ、責任を感じなければいけないのではないか?」
といえるだろう。
それでも、どうしても、精神疾患を差別的な目で見るという感情は、
「何かの都市伝説」
のようなものからくるのかも知れない。
ただ、
「精神疾患が、すべてにおいて悪い」
というわけではない。
芸術家などに、
「精神疾患を持った人が多い」
というのも、
「一つのことに長けている」
ということの現れではないかということで、昔であれば、
「平均的になんでもできる人が喜ばれる」
というのが、まるで、
「都市伝説ではないか?」
といえるのだろう。
確かに、
「なんでもできる平均的な人」
というのが、まるで、優秀な人として評価を受けるが、
「それは逆に言えば、Kントロールしやすい」
ということから言われていることなのかも知れない。
自分が、
「軍師」
といわれる、
「ナンバーツー」
という人たちに憧れを感じたのは、この時の、なんでも無難にこなす人ではなく、
「一つのことに長けている人」
ということで、自分でも無意識のうちに、意識していたということからくるのではないだろうか。
それを考えると、
「時間の経つのに意識が変われば、その影響が大きい」
と思うのは、
「一つのことに長けている」
という人間性と、
「躁鬱のような両面を持った性格」
というところからきているのではないかと感じるのであった。
この、
「罠にかかった問題」
というものを考えた時。
「自分が実に情けない」
ということと、
「お金で解決できることは金で」
と考えている自分が情けない。
と考えてしまうのだが、だが、
「背に腹は代えられない」
ともいえるだろう。
しかし、それにしても、
「自分で自分を納得させなければ、いくら金で解決できるとしても、簡単にいくことではない」
特に、
「簡単に解決させよう」
と思ったとすると、今度は、
「自分で自分が許せない」
ということになり、
「これ以上、考えて、それが、らせん状になってしまうと、取り返しのつかないことになる」
と考えてしまうのだった。
しかし、考え方として、
「あの連中も痛い目を見ないと、また同じことを繰り返し、被害者が増える」
ということで、
「あいつらを懲らしめるのは、自分の責任」
と考えることで、
「勧善懲悪」
ということを
「自分の責任だ」
と考えるようになると、それが、結果的に、
「自分を納得させることになる」
といえるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、何やら、話しかけてくる人がいて、
「お困りでしたら、私らが匿って差し上げますぜ」
という、訳の分からないことを言い出したのだ。
「匿うって、何を? 俺は何も匿われないといけないようなことはしちゃいないぜ」
というと、その男性は、
「それを警察で言えますかい?」
男の口から、さすがに、
「警察」
という言葉が飛び出してきた時には、一瞬息をのんでしまった。
それまで、何をどうすればいいのかということを考えながら、五里霧中だった目の前の霧が、一気に晴れてくるのを感じるのであった。
「そうですよ。警察は、そのうちに、あなたを追いかけますぜ。日本の警察というのは、昔は、世界で一番優秀だったなんて言われてましたからね」
という。
「じゃあ。今は一番じゃないのか?」
と思ったはそれどころではない。
目の前にいる男性は、中年。いや、初老といってもいいくらいの年齢で、
「昭和も知っているんじゃないか?」
と思わせるほどだった。
とにかく、見るからに、
「海千山千の爺さん」
という雰囲気で、少なくとも、訳が分からないことを言っているだけに、油断がならないと、柏田は思うのだった。
「まあ、この爺さんが言っている、日本の警察が世界一というのは、そもそも、今から半世紀前といわれる時代は、何を取っても、日本が一番」
ということだった。
長者番付にしても、企業のランクにしても、ベストテンの半分以上は。
「日本企業」
であったり、
「日本人」
だったりしたではないか。
「その爺さんがいうには、
「お前さんは、この間、痴漢に間違えられて、それで、女と、その後ろにいる男に脅迫される羽目に陥ったですよね?」
といわれ、柏田は、ハッとした。
さすがに、すぐに答えをいうのは控えた。もし、相手がカマを掛けてきたのであれば、すぐに答えてしまってはまずいと思ったのだ。
柏田は、さすがにそのあたりのことは心得ていて、何とか堪えたのだった。
「どうしてそんなことが言えるんだい? まるで見ていたようじゃないか?」
というと、
「ああ、見ていたというか、あの状況を見ていれば、お前さんが嵌められたということは冊子がつくさ」
というではないか。
この老人の落ち着きようは、あの時脅してきた、
「美人局の若い兄ちゃん」
とはまるで違う。
この落ち着きようを見ていると、
「この爺さんは、敵に回せば大変なことになる」
ということを思わせた。
それでも、この爺さんが何を言い出すのか、聞いてみることにしたので、
「どうして、そんなことが言えるんだい?」
と、またしても聞くと、
「まずは、今のお前さんの言い分さ。気づいているかどうか分からないが、まったく同じ言い回しをしただろう? それは、それだけ動揺している証拠さ。少なくとも図星をつかれて、どうしていいのか分からないというのがよくわかるというもさ」
というではないか。