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高い授業料

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「金で解決するくらいのことであれば、何とかなるのだが、それだけでは、この精神状態はどうにもならない。
 金で解決できないことであれば、
「苛立っている暇もない」
 ということで、それこそ、死に物狂いで、どうすればいいかの善後策を考えたことだろう。
 柏田は、自分で思っているよりも、実際には、もっと頭がいい。
 特に、
「急いている時」
 というのは、いいアイデアが浮かんでくるというもので、悲しいかな、
「人間」
 というものは、
「急いてはことを仕損じる」
 ということわざにあるように、
「急いで何かをしようと考えると、そこには落とし穴が潜んでいる」
 といわれるもので、そのことは、柏田にも、十分に分かっているつもりであった。
 しかし、実際には、その逆で、子供の頃から、
「急いでやった時の方が。結果がよかったりした」
 というものだ。
 しかし、学校の先生や、まわりの大人は、それを信用しない、逆に、
「急いでできるのであれば、もっと落ち着けば、もっといい結果が出るのではないか?」
 といわれる。
 それを本人も、
「確かにそうだ」
 ということで、まわりのいうことを信じてしまったので、
「俺は、なんでもこなすことはできるが、突出してうまくできるタイプの人間ではないんだ」
 と思っていた。
 そのことが、自分でも嫌で、
「俺は、なんでもこなせるタイプの人間ではなく、他はできなくてもいいから、何か一つでもうまくできるタイプであればそれでいい」
 と思っていた。
 だから、まわりで何かに突出してできている人を見ると羨ましく思えるのだ。
 だから、
「スポーツで全国大会に出場したり、芸術で、コンクールに入賞するような人がうらやましかった」
「俺にはそんな才能はないからな」
 と思ったもので、
「本当は才能を持っているのに、それを生かすすべを自らで見逃していたからだ」
 などと、夢にも思わなかったのだ。
 ただ、そんな自分に対して、
「お前は才能があるんだよ」
 といってくれて、その場で、
「お前の友達になりたい、俺がお前の素質を引き出したいんだ」
 といってくれた人がいたが、彼にも、その引き出す引き出しというものが、分かりかねているようだった。
 その人は、中学時代に転校してきた友達で、彼は、元々、裏方を目指していて、
「ナンバーワンではなく、ナンバーツーを目指したい」
 といっていた。
 その理由は、ちょうどその頃、歴史ブームの中でも、
「軍師」
 と呼ばれる人たちにスポットライトが当たっていて、歴史ドラマなども、
「軍師」
 の話が多かったりした。
「直江兼続」
「黒田官兵衛」
「竹中半兵衛」
「片倉景綱」
 などと言った、軍師であったり、ナンバーツーが、もてはやされ、ビジネス雑誌などでも、その活躍が紹介され、
「サラリーマンとして、参謀として」
 という触れ込みで書かれていたりしたものだった。
 さすがに、中学生には、ビジネス書は馴染みはないが、その代わり、歴史の本では、結構楽しい内容だった。
 柏田が、
「急いで事を成すことで、才能を発揮する」
 というのは、この時の歴史の本を読んだからであろう。
 そもそも、
「他の人が読んだからといって、それがそのまま実を結ぶということはない」
 これは、
「柏田が読んで、自分なりに解釈できたことで身に着いたことだった」
 そもそも、本というのは、読む人によって、感じ方も違えば、
「いかに、それを自分のものにできるか?」
 ということも、同じ人間であっても、見る方向が少しでも違えば、本当に身になるかどうかも分かったものではない。
 要するに、
「タイミングというのも大切だ」
 ということである。
 そのタイミングは、
「バランス」
 というものにも結び付いて、
「ものになるならない」
 というのは、
「その時の運ではないか」
 ともいえるだろう。
 今回の、
「引っかかってしまった罠」
 というものをいかに解決するかというのは問題である。
 確かに、お金を使えばできないこともないが、それだけでは、自分の気が済まない。
「最後の手段」「
 ということの
「切り札」
 と思って、気持ちに余裕が持てるくらいであればいい。
 と思っていた。

                 匿ってくれる人たち
 それでも、人によっては、
「そんな甘いことを考えているから、いつまで経っても、成長しない」
 という人もいるだろうし、柏田自身も、そのことが気になっていたのだ。
「俺には甘えが抜けきれない」
 と感じるからであり、
「確かに、急いでやればうまくいくということも往々にしてあるが、今回の場合は、急ぐことと、気持ちの余裕を融合すれば、何とかなるのかも知れない」
 と感じた。
 だが、急ぐことと、自分が感じている時間の感覚というものに、違和感を感じてくるようになると、逆に、
「急ぐということの意味が分かってきたかのように感じた」
 というのは、
「時間の感覚」
 というのは、
「精神状態」
 というものと、微妙な関係にあるということを感じるのであった。
 精神状態の中でも、うつ状態と躁状態とはあるが、一般的にはどうなのか分からないが、
「うつ状態の時は、なかなか時間が過ぎてくれず」
 逆に、
「躁状態の時は、時間があっという間に過ぎる」
 という。
 このうつ状態と躁状態が、交互に襲ってくるという病気があるという。
 昔であれば、
「躁鬱症」
 などということで言われていたものであったが、今であれば、
「双極性障害」
 というものだと言われるようになった。
 この病気は、いわゆる、
「うつ病」
 と呼ばれている病気と、
「双極性障害といわれるものの鬱とでは、その種類がまったく違う」
 という。
 実際には、
「似通ったところがある」
 ということで、
「うつ病と双極性障害とで、誤診をする」
 ということも以前は多かったということである。
 うつ病の場合と違って。双極性障害というものは、
「脳の病気なので、医者の指示に従って、薬もキチンと飲まなければ、悪化の一途をたどる」
 といわれている。
 この病気は、
「躁状態と鬱状態を定期的に、しかも、高速で繰り返す」
 というもので、
「うつが続けば、躁が出てきて、躁が続けば、次第に鬱に変わっていく」
 というものであった。
 一番危ないと言われるのが、
「うつから躁状態に変わった時」
 ということで、この場合は、いくつかのパターンがあると言われている。
 その一つは、
「それまで、何をやっても、何もできない」
 ということで、じっとしておいたのに、それが躁状態になることで、今度は、
「なんでもできる」
 と感じてしまうのだ。
 それで、
「うつ状態の時に試みたができなかった自殺」
 というものを、
「なんでもできる」
 と思った躁状態の入り口で、試みる人もいるという。
 うつ状態との混合状態であれば、まだ心の中に、
「死んでしまいたい」
 という思いが隠れているといってもいいだろう。
 それを考えると、躁状態というのは、
「恐ろしい状態にいる」
 といってもいいだろう。
 また、躁状態になると、
「なんでもできる」
作品名:高い授業料 作家名:森本晃次