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表裏の性格による完全犯罪

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「石ころというのは、河原に落ちている石ころのように、そこにあるということが当たり前であり、意識しなくても、意識をしても、別に変わりはないというもので、あろうがなかろうが関係ないといってもいいものだ」
 つまり、存在感すら気配として感じさせないという感覚なのであろう。

                 犯罪計画

 石ころのような男が入ってきたのを、奥のテーブル席にいる二人は、意識もしていなかった。
 完全に入ってきた男は気配を消していて、奥の二人は、自分たちの話に集中しようとしていたのだ。
「常連予備軍」
 は、話をしたくてうずうずしている。
「常連客」
 は、その気持ちが痛いほどわかるので、
「おもしろい話に違いない」
 という思いから、
「話を聴くのが楽しみで仕方がない」
 というわけであった。
 そんな中、相手が、
「これは友達の話だ」
 ということを、わざわざ前提として話そうということなので、
「ははん。これは、本人の話に違いない」
 と感じると、余計に、興味が湧いてくるのだ。
「友達の話として聞いてほしい」
 というのだから、
「女関係のトラブルか?」
「仕事でのトラブルなのか?」
 それとも、
「家庭内のこと?」
 というような、自分から話すことでなければ、その話の内容が誰なのかということを相手に知られれば、
「個人情報保護」
 という観点に、
「抵触してしまっている」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「興味深い話であることに間違いないだろう」
 と、聞く方もそれなりの覚悟を持つ必要があるのだろう。
 その覚悟というのが、
「責任」
 に変わると、結構重たいことになるのだが、相手が、
「友達の話」
 ということで、誰のことなのかというのをぼかしているのは、ただの世間話ということで終始するということを宣言しているということに違いない。
「友達がいうには」
 と、話を始めた。
「うんうん」
 と、その時に一度だけ、前のめりであるということを相手に知らしめるということで、
「常連客」
 はわざとそういう態度を取った。
 そのおかげで、
「常連予備軍」
 が、
「話しやすくなると思ったのではないか?」
 と、
「石ころ」
 が判断したのであった。
「石ころ」
 は、話を聴いていないようで、実は聴いている。結構、神経を集中させているからなのか、余計に、その男が、女の子から意識されないという、
「石ころとしての性質」
 というものが、ハッキリしてくるといってもいいだろう。
「君は、この間から社会的に問題になっている、薬の副作用のニュースを知っているかな?」
 というところから始まった。
 常連は、黙って頷いていたが、すっかり、興味をそそられているという目をしていたのであった。
 常連予備軍は続ける。
「その時の話が、まずは、一つの前提なんだけどな、実はこの話は、ある男が、一つの犯罪を思いついて、その計画を練っているという話になるんだ。その男が計画していたのは、殺人だったんだよ」
 といって、一息ついた。
 まあ、
「常連客」
 としても、
「犯罪と言われると、殺人事件というのがまず頭に浮かんでくるわな」
 と言った。
「そうだよな、今の時代に、強盗や誘拐などというのは、ちょっと考えにくい犯罪だよな。防犯カメラが至るところにあるわけで、特に、強盗などといっても、コンビニなどの店舗では、ほとんどお金がないわけなので、強盗に成功しても、手に入る金は、よくて、数万円、下手をすれば、数千円ということになる、これほど割の合わないことってないはずだよな」
 という。
「そうですね、誘拐も、昔から、なかなか成功しないと言われますからね。身代金をとっても、それを用意するのは、被害者側。警察に連絡をしていれば、当然身代金の番号は控えられているだろうから、お金を使った瞬間に足がつく可能性があるというものですよね」
 と、常連客が言った。
 彼は、黙って聴いているだけのつもりであったが、
「興味のある話」
 というものに対して、自分から歩み寄るということが、どうやら好きなようであった。
 特に、犯罪ということに関しては、
「常連予備軍」
 が最初に言ったように、
「推理小説をよく読んでいる」
 ということで、トリック的なことであったり、犯罪の種類などには、興味があったのだ。
 しかし、彼とすれば、
「私は、推理小説というものが好きなのではなく、昔からの、探偵小説と呼ばれるものが好きなんだよな」
 と思っていたのだ。
 そもそも、探偵小説というものが、
「推理、ミステリー小説」
 と言われる今のジャンルの元だったのだ。
 そもそもの起こりというのが、欧州などで流行った。
「シャーロックホームズもの」
 であったり、少し変わり種ということで、
「怪盗ルパンもの」
 などのシリーズが、
「探偵小説の起こり」
 といってもいいだろう。
 それが日本に伝わり、大正時代から、戦後くらいまでの間で流行ったものが、
「探偵小説」
 と呼ばれるものであった、
 それも、
「本格派」
 と、
「変格派」
 というものに別れるという。
 本格派というのは、
「著名な探偵や警察が主人公となって、トリックが存在する犯罪に対して敢然と立ち向かい、その謎解きのスリルを味わう」
 というのが、
「本格派」
 と呼ばれるものであった。
 そして、
「それ以外」
 と呼ばれるものを、変格派というものであり、その中には、
「異常性癖」
「猟奇犯罪」
「耽美主義」
 と呼ばれるものが主のようだ。
 変格派」
 と呼ばれるものは、それこそ、偏執趣味といってもいいだろう。
「耽美主義」
 と呼ばれるものは、
「倫理やモラルなどというものに関係なく、美というものを求めるということが最優先である」
 と言われる考え方であり、
「変質者であろうが、殺人者であろうが、死体を美しく飾ったり、性癖において、美というものが追及される」
 ということであれば、それが、一番正しいという考え方を、
「耽美主義」
 というのだ。
 その考えがいい悪いというのは別にして、それを正当化する探偵小説を。
「変格派」
 という分類で、表すことができるということになるのだろう。
 この時のこの二人は、それぞれに、
「犯罪計画に興味を持っている」
 というのは、
「石ころ」
 と言われる男には分かっているように思えた。
 それは、
「石ころ」
 として、他人事のように見れるからで、この能力は、
「自分特有のものだろう」
 と感じているようだった。
 石ころだけに、他の誰にも分からないようだが、この男は、ある星を彷彿される感覚だったのだ。
「宇宙の星というのは、自分から光るか、あるいは、発せられた光に反射することで光るものの二つしかないということであるが、ある科学者が、実は、光を一切発生させず、まわりからの光も吸収してしまうということで、光を一切発しない星というものがある」
 ということであった。