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洗脳による変則事件

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 ということで、一番の仲良しと、旅行を計画していたのだが、あいにくと、
「狙っているホテルは、どこも満室」
 ということで、それだけ、
「時期が悪かった」
 ということであろうか、
 そのため、
「どうしたものか?」
 と考えあぐねると思っていたところ、簡単に解決したようだった。
 というのも、一緒に行く友達というのが、アウトドアが好きで、
「よくキャンプに行く」
 ということであった、
 さつきも、時々その友達と一緒に、キャンプに行くということで、その時、
「じゃあ、キャンプでしめるというのは、私たちらしいかも知れないわね」
 ということで、
「登山を兼ねたキャンプ」
 ということになったのだった。
 それが、そもそもの間違いで、
「あの二人なら安心だわ」
 と思ってしまったのだ。
 しかし、どこでどうなったのか。妹が帰ってきてから、まったく、
「別人になってしまったか?」
 というほどに、まったく変わってしまっていたのだ。
 友達の方も、まるで人が変わったかのように、お互いに連絡を取り合うということもなかったというのだ。
 そのうち、妹が行方不明になった。
 最初の1、2日は、
「若い女の子のことだから、旅行にでも行ったのでは?」
 と両親は思っていたようだが、
「最近、どこかおかしい」 
 ということを感じていた両親も、さすがに気になって、ゆり子に連絡をしてきた。
「さつきが、ここ2日、帰ってこないだけど、お前、何か聴いているかい?」
 ということであったが、
「いいえ、聴いてないわよ」
 と、まるで、何が起こったのか?
 という感覚だったが、すぐに胸騒ぎに襲われた。
「お母さん、さつきの様子が、キャンプから帰っておかしかったということを感じていたんだけど、その様子は元に戻ったのかしら?」
 とゆり子がいうので、
「いえ、まだ、何か思いつめたような感じだったわ」
 ということで、
「警察に届けましょう」
 ということで、新宮家と、
「ゆり子と恵三夫婦は、急いで、警察に捜索願を出すことにした」
 ということであった。
 しかし、
「警察に捜索願を出したとしても、事件性がハッキリとした案件でないと、警察は動いてくれない」
 ということは分かっていた。
 分かっていただけに、母親に対して、
「警察に届けましょう」
 と言った時の自分が、
「いかに無駄なことを言っているのか」
 ということを考えて、やるせなくなった。
 しかし、
「何もしないでヤキモキするよりもいいだろう」
 ということで、とにかく、できるだけのことをするということしか、その時は方法がなかったのだ。
 そして、その結果、最悪の状態が起こった。
 さつきは、隣の県の県境あたりにある、森林地区で、死体となって発見されたというのであった。
 そこは、ゆり子の家から、そこまで遠くはなく、
「どこかに失踪するには、中途半端な郷里だった」
 といってもいいだろう。
 そして、死体が発見されたと聞いた時、
「自殺」
 と感じたのだが、警察の見立てもその通りであった。
 実際に、遺書も遺体の近くにあり、
「睡眠薬の大量摂取による自殺」
 ということになった。
 争った痕もなく、そもそも、誰かが殺して死体を隠すという意図があるのであれば、
「あんな場所に放置する」
 ということもないだろう。
 ということであった。
 何といっての、死体に外傷があるわけでもないと考えると、彼女は、
「死んだ後のことを考える気力もなかった」
 ということであろう。
「ごめんなさい。死ぬしか私にはこれから先は分かりません」
 という内容の遺書だった。
 理由もハッキリと書かずに、
「将来に希望が持てない」
 という、微妙で中途半端な内容の遺書を見れば、
「遺書を書いた時、すでに、意識が曖昧だったのだろうか?」
 とも思えた。
 ただ、もしそれであれば、
「彼女はここまでどうやってきたのだろう?」
 ということであった、
 さつきは、
「免許は持っているが、車もない」
 となれば、
「レンタカーということであろうが、実際に、近くにレンタカーが放置されているということもなかった」
 ということだった。
 となると、
「最寄りの駅からタクシーを使ったか?」
 とも考えたが、もしそうであれば、
「タクシー会社も、一人の女の子をあんなところに運ぶということで、怪しいとは思わなかったのか?」
 ということであった。
「もし、俺がタクシーの運転手だったら、彼女を下したあとで、警察に通報するけどな」
 と、恵三はいうのだった。
 恵三も、考えていることは、ゆり子と大差はなかった。
 ゆり子の方が、ずっと一緒に育ってきたのだから、さつきの気持ちは、
「誰よりも分かる」
 というものだ。
 しかし、恵三としても、
「さつきは、もし、ゆり子と一緒になっていなくて、最初にさつきと出会っていれば、さつきと結婚したかも知れないな」
 というくらいに、さつきのことをよく分かっていると思っていたのだ。
 もちろん、ゆり子にも、両親にも、そんなことが言えるわけもなく。当然、さつきにも言えない。
 そうなると、
「この思いこそ、俺は、墓場まで持っていくことになるんだろうな」
 と思いながら、ゆり子と結婚したということになる。
 だから、ゆり子は分からなかったが、
「さつきのことは、これで、俺から一生記憶として消えないことになってしまったんだよな」
 と思ってしまった。
 だから、ゆり子のやりきれない気持ちよりも、下手をすると、恵三の方が思いが強かったかも知れない。
 ただ、それは、
「恵三が男だ」
 ということからくる、
「生理的な感情なのではないか」
 ということであった。
 恵三とゆり子の結婚生活に、大きな溝を作ってしまったのは、無理もないことであった。
 もちろん、ゆり子の方も、恵三の方も、
「自分の方が、相手よりも強い思いをさつきに抱いている」
 と思っている。
 姉のゆり子は当たり前のことだが、まさか、恵三は、
「義妹であるさつきに、俺がこんな感情を抱くことになるなんて」
 と思った。
 もちろん、ゆり子が、そのことに気づくわけはない。本人である自分も、どれほどこの思いを否定したことであろうか?
 だから、余計に、
「何かにすがりたい」
 という気持ちになったのも無理もないことで、それは、夫婦ともに同じことだった。
 しかも、それが、
「夫婦として相手を気遣っている」
 という感覚だったことで、結局、夫婦ともに、どこかで歯車が狂ってしまったといってもいいかも知れない。
 そんな思いが、年月を重ねるごとに、少しずつ消えていくということであれば、それでいいのであるが、そんなことはなく、むしろ、
「感情は深く募っていく」
 ということになっていって、二人の溝は、さらに深まるばかりであった。
 だからと言って、二人は、不倫をするよううな勇気があるわけではなかった、
 ゆり子の方は、完全に、憔悴状態になっていて、
「ちょっとでも、風が吹けば、簡単に倒れてしまう」
 という感じになっていた。
 支えてあげなければいけない旦那が、支えることができず、しかも、旦那のほうでは、
作品名:洗脳による変則事件 作家名:森本晃次