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洗脳による変則事件

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 だから、旦那とすれば、奥さんにも一緒に、あのグループから抜けてほしいと考えていたのだが、実際に、
「一緒に抜ける」
 という考えだけが事実であり、他の、
「旦那が抜けられない」
 という思い、
「奥さんからすれば、このグループが自分の世界のすべてだ」
 という思いとの両方が、大きな間違いだったということであろう。
 それが、
「すれ違い」
 ということを生んでしまい、そこから、奥さんは、
「自分の殻の閉じこもってしまう」
 ということになったのだ。
 実際にこの奥さんには、
「今まで他の誰にも話していない」
 という過去があったのだ。
 その過去というのを知っているのは、旦那と、自分の家族だけで、もちろん、旦那にも。告白する時。
「このことは、絶対誰にも言わないで」
 と言ったのだった。
 旦那はそれを聴いて、少なからずのショックを受けたようだが、それは、
「自分が好きになった女の境遇」
 ということで、かなりひいき目に見ていたからであった。
 もし、これを、
「他人事」
 ということで考えたとすれば、
「ここまで強引に、まるで自分のことのように思わなかっただろう」
 ということで、さらには、
「結婚まで行かなかったかも知れない」
 とも思った。
 この男はそれだけ義理堅い男であるが、そのくせ、
「人を見る目があるだけに、そのジレンマを感じたまま、生きてきた」
 ということであろう。
「人間というのは、幼いころから、一つや二つ、トラウマになるというようなことを、抱え込んで生きてきた」
 といっても過言ではない。
 だから、奥さんからの告白も、
「まるで自分がその立場だったら」
 ということで聴いてしまったことで、すっかり、情が移ってしまったといってもいいだろう。
 だが、それは男にとっては、決して考えてはいけないということであった。
「自分が、情にほどされて、最終的に結婚を決意した」
 とは考えたくなかった。
 子供の頃であれば、それもあったかも知れない。
 人に同情して、情けを掛けるというのは、
「情けは人のためならず」
 という言葉にあるように、
「元来いいことのはず」
 なのだろうが、
「今の時代は、その情をまともに受けると、あとで、余計なしっぺ返しを食ってしまう」
 と考えられるからであった。
 特に、子供の頃、
「人に情けを掛けたことで、自分が損をする」
 という思いを結構したというではないか。
 確かに、苛めがあった時、誰も助けに入らないので、自分が助けに入ると、自分も、今度はまわりから苛めの対象にされてしまったのだ。
 その時は、苛めを助けた相手から、
「ありがとう、一生、この恩は忘れない」
 といっていたくせに、苛めのターゲットが、そいつから、今度は完全に、旦那に変わってしまったことで、あれだけ恩を感じていたその男は、
「俺はもう虐められることはない」
 ということで、なるべく、今度は旦那にかかわらないようになったのだ。
「もしかかわって、また自分に苛めのターゲットが向いてしまうと、溜まったものではない」
 ということになるのだ。
 要するに、
「皆自分さえよければいい」
 ということになるのだ。
 だから、旦那とすれば、
「自分の身は自分で守るしかない」
 ということになり、さすがに、それ以降、人がいじめられていても、助けるようなことはしなくなったが、そのおかげで、
「人の善悪」
 というものを見分ける力ができたということであった。
 そして、その善悪というのも、
「相手の本性がわからなければ、善悪の区別もつかない」
 ということで、
「表面上だけのことではなく。本当の相手の本性を見抜く」
 ということが大切だということに気づき、そこからは、
「たいていの人間の考えや、善悪というものが分かるようになった」
 ということであった。
 だが、それはあくまでも、
「学生時代までの、それも、男性だけのグループ、あるいは、男女混合のグループ」

 というものに通用するというものであった。
 しかし、結婚してからの、
「ママ友グループ」
 という、
「女性ばかりの園」
 においては、通用するというものではなかった。
 というのは、
「女の世界には、断層といえるほどの、何十二も張り巡らされた、まるで年輪のようなものが渦巻いている」
 ということであった。
 それを考えると、奥さんにとっては、
「自分から飛び込んだ」
 というのに、そのうちに、
「自分ではどうすることもできない」
 という集団であり、
「抜け出すこともできなくなった」
 と考えれば、
「このママ友という女性だらけの、しかも、子供を持った母親という、男性からはなかなか想像もつかないような集団」
 というものが、どれほどのものかを、奥さんが理解できなかったというのも、無理もないことであった。
 しかも、奥さんグループは、
「心の底で何を考えているのか、まったく分からないくせに、この旦那のように男性が入り込んでこようものなら、甘い言葉や、おだてによって、一種の骨抜きのようにすることで、自分たちの枠にはめ込んでしまおう」
 と考えるようだった。
 これは、
「田舎の連中が、都会からやってきた人に対して、都会というものを羨ましがってみたりして、都会の人間に優越感を持たせることで、すっかり油断させ、自分たちの味方に引き込むということに成功するのと同じ」
 ということではないか。
 だが、
「利用価値がなくなれば、すでにお払い箱」
 ということで、それまで徹底的におだてられていたものが、まったく相手にされなくなる。
 その時でも、その本人には、
「どうしてこんなことになったのか?」
 ということで、
「はしごを外された」
 という思いはあるが、その理由が分からないということで、
「悪いのは俺なんだ」
 と思い込まされることになるのだろう。
 そこまで、田舎の連中が頭がいいとは思えないが、それこそ、
「昔から、村八分」
 であったり、いわゆる、
「島国根性」
 というものが、よそ者を受け付けないという気持ちと相まって、
「生きていくすべ」
 ということで、
「培われてきたものだ」
 といってもいいだろう。
 この旦那が、
「樫沢琴絵という女を、
「ママ友グループの引き入れる」
 ということになるのだが、それこそ、この旦那にとって、
「一世一代の大間違いだった」
 といってもいいだろう。
 これがなければ、
「この後に引き起こされる事件」
 というものもなかったということになるであろう。

                 夫婦の秘密

 奥さんは、結婚するまで、
「この秘密は、墓場まで持っていこう」
 と考えていた。
 奥さんは、名前を、
「里村ゆりこ」
 といい、旦那は、
「恵三」
 というのであった。
 年齢は34歳で、夫婦ともに、同じ年齢で、知り合った時は、ゆり子が見て、かなり落ち着いて見えたことから、
「私よりもだいぶ年上なんだわ」
 と思っていたが、実際に同い年と聞いてびっくりしたというのだ。
 これは、恵三の方も同じで、
「自分に頼りっぱなしというところがかわいらしくて、放ってはおけない女性」
作品名:洗脳による変則事件 作家名:森本晃次