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洗脳による変則事件

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 しかし、これが、前の殺人事件とどこかで絡んでいるのだとすれば、話は別だ。問題は、この宗教団体と、奥さんが入っているママ友集団のカリスマ主婦というのが、どういうものなのかということが気になるのであった。
 このカリスマ主婦というのは、いうまでもなく、
「琴絵」
 のことであった。
 ここで、話がつながってくるということになるわけだが、
「第一の殺人と、第二の犯行とでは、見えないところで共通点がある」
 ということである。
 これは、読者と作者にしか分からないことであるが、桜井警部補は、何となく見えてくるものがあったのだ。
 それは、一つは、
「それぞれの事件において、見えてくるものが断片的で、ぼやけて見えるのは、その与えられた情報というものが、あまりにも少ないからだ」
 といえるのだ。
 その少ない情報を組み重ねてみると、おのずと見えてくるものがあるはずで、それは、
「連続犯罪」
 ということでないと見えてこないという考えになるのだろうが、これが警察としての、
「ファインプレー」
 ということになるのかどうか?
 ということを考えると、まだ、何とも言えないところがあった。
 ただ、捜査の中に、一つの穴が開いたというのは確かなことであり、それが、
「事件を本当に解決できるだけの材料なのか?
 というと、難しいといえるだろう。

                 外人

「桜井警部補、第一の事件の目撃者が出てきました」
 ということで、清水刑事が、その人をさっそく、出頭させてきた。
「わざわざ来ていただいてありがとうございます」
 と桜井警部補がいうと、
「いえいえ、こちらこそ」
 と、短い文章だが、まるで日本語が片言のようだ。
「失礼ですが、日本のお方ですか?」
 と聞くと、
「いいえ、日本では育ちましたが、私は、朝鮮系の人間です」
 とまたしても、片言で言った。
「お名前は?」
 と聞くと、
「金賢女といいます」
 女性である彼女に、桜井警部補が、
「早速ですが、何を見られたんですか?」
 というと、
「実は女が一人の男性を殺すところをですね」
 というと、さすがの桜井警部補も、ビックリして、
「あなたは、それをずっと黙っていたと?」
 と、相手を咎めるようにいうと、相手は臆することなく、
「ええ、相手も私に見られたと思っているとすれば、私としても、恐ろしくて、通報するのが怖かったんです」
 というと、さらに続ける。
「場所は新聞に載っていた死体発見現場ではなく、そこから、少し離れた路地でした」
 ということで、地図を示すと、
「ここです」
 といって、指を刺したのだ。
 実際に、それを聴いた清水刑事が、捜索を手配するように、捜査員に連絡を取っているようだった、本部からは、鑑識が出向いたことは、間違いない。
「ほう、じゃあ、その女性が、男性を刺したというわけですね?」
 というので、その外人女は、
「ええ、そうです」
 と言い切った。
 話を聴く限りでは、死体発見に関してとは、矛盾は少なかった。
「むしろ、矛盾がなさすぎる」
 と感じるくらいのもので、何か、その女が計画したもののようにも聞こえるから不思議だったのだ。
「なるべく、叙述に引っかからないようにしないとな」
 という感覚は、刑事などという仕事をしていると、感じることで、あまりにも相手の話を信じ込んでしまうと、
「捜査方針を固めなければいけない自分の立場をわきまえなければいけない」
 と感じた。
 そして、彼女は、その犯人の特徴を話していた。気が弱そうで、そんなに身体が大きくない女性が、男を刺したということだが、桜井が最初に気になったことがあったのだが、それをわざと最後に回し、相手に、すべてを話させた。
 そして、最後にそれを話すと、相手は、一瞬たじろいだが、最後まで話ができたことで、目的は達したと思ったのか、それ以上の動揺はなかったのだ。
 桜井警部補が気になったのは、
「死体は実際に動かされていたんですが、女性一人の手で、移動など簡単にできますかね? そこには、誰か共犯がいたんじゃないのかな?」
 ということであった。
 目撃者は、そそくさと帰っていったが、警察とすれば、その目撃者が現れたおかげで、事件が動いた気がしたのだ。
 事件というのは、なかなか動いてくれないと、その先が、見えてこない。どんな形でも、動いてほしいものだ。もちろん、それが、次回の殺人という最悪の結果ではまずいが、目撃者の出現というのは、捜査のかく乱が目的であっても、ありがたいと思っていた。
 桜井警部補は、半分、
「これは捜査のかく乱ではないか?」
 と思ったことで、
「あなたに、犯人の心当たりはあるんですか?」
 と言われた目撃者は、
「そうです、あるんです。その人は私のママ友仲間ですが、名前を里村ゆりこさんというんです」
 というのだ。
 彼女は、最初こそ、その名前をいうのを躊躇したが、最後には、相手の名前を明かした。それも、桜井警部補が最後の指摘を行った後だった。他の刑事は、
「桜井警部補に指摘を受けて、苦し紛れに言ったのかも知れないですね」
 と、言っていたが、
「いや、彼女は、最初から、相手の名前を明かすつもりだったんじゃないかな?」
 という。
「ということは、あの女は、ある程度分かっていて、我々のところに来ていると? じゃあ、彼女が犯人だということも考えられる」
 というと、桜井警部補は考えながら、
「いや、本当にそうなのかな? 少なくとも、実行犯ではないと思うんだがな」
 ということであった。
「お前たちは、先ほどの目撃者である金賢女という女をどう思う?」
「何となくしたたかな女に見えましたね」
「どうして?」
「警部補の質問をうまくかわしているように感じたからです。どうして、最初の早く出頭しなかったのかという指摘、そして最後の、共犯の話と、それぞれに、指摘をした時の態度は、最初こそびっくりが見えたが、すぐに元に戻った。天性のものを持っているのか、それとも、最初から計画をしていたことなので、それほどの動揺がなかったのか?」
 と清水刑事は言った。
「そうなんだ。問題は、あの金賢女という目撃者が、この事件で、どのような役割を演じているかということなんだよな。たぶん、あの女が今警察に乗り込んできたということは、相当自信があるようなのだが、それは、あくまでも、あの女が事件にかかわっている場合を考えてのことだがね」
 と桜井警部補は言った。
 清水刑事は、桜井警部補を信じている。それだけに、その話の信憑性を疑うことはない、
 ということは、
「本当であれば、信憑性を積み重ねていくという、加算法の考え方になるのだろうが、信じて疑わない相手であれば、それは、100%という状態から、どんどん広げていくという、減算法になる」
 と考えていた。
 そして、清水刑事は、かつて桜井警部補に教えられた言葉を思い出した。
「将棋をする時の、一番隙のない布陣というのは、どういうものか分かるかね?」
 と聞かれて、頭を傾げていると、ニンマリと桜井警部補が笑って、教えてくれたのであったが、それは、
作品名:洗脳による変則事件 作家名:森本晃次