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洗脳による変則事件

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 ということで、それ以上は詮索することはしなかった。
 ただ。それにより、
「あの男は、本当にひどいことをしたんだ」
 ということで、本当であれば、
「殺されても仕方がない」
 ということであるが、それは、あくまでも、復讐者が暴行を受け自殺をした女性の肉親ということであれば、無理もないと思ったのだ。
「ところで、他にはどうなんだい?」
 と桜井警部補は、
「こんなひどいことをするやつだから、似たようなことは、他にもあるだろう」
 と感じたが、
「やはり、今まで、そのほとんどが、金で解決できる範囲だった」
 ということで、
「細かいことはたくさんあるだろうが、だからと言って、ひどいことをしているというわけではなかった」
 つまり、
「この男は、小心者で、できることといえば、チンピラのような中途半端なことしかできないんだ」
 と思った。
 だからと言って、善人などということではない。
 むしろ、
「こんなやつは、何をやっても、自分に罪の意識はないんだ」
 と思えるわけで、だから、
「悪いことがやったとしても、それが、自分の致命傷になるようなことはできない」
 ということになるのだ。
 小心者だけに、いろいろ手を出しても、その結界というところはわきまえているというのか、何か本能のようなもので、嗅ぎ分けられるということになるのであろう。
 そう思うと、桜井警部補は、
「この男、本当に腐ってやがる」
 と感じさせるのであった。
 ただ、この時、
「名前を聴いておけばよかった」
 と思ったのは後になってからのことであった。
 その時、死んだという女性は、ここまで見てきた聡明な読者であれば、予想がつくだろう。
 そう、里村ゆり子の妹である、さつきだったのだ。

                 第二の事件

 神崎隆三の殺人事件が起こってから、一か月後に、もう一つの事件が発生した。
 この事件というのは、一人の男が襲われたのだが、
「その被害者は死ななかった」
 ということであった。
 今回の事件は、通り魔事件ということで、ナイフで刺されたが、危険を察知してか、それとも、被害者がうまく逃れたというべきか、犯人は、とどめを刺すということよりも、その場から早く立ち去るということの方に集中していたようで、実際の犯行について、それを見ていた目撃者からすれば、
「かなり、ぎこちない手口だった」
 ということであった。
 そのわりに、犯行後の跡に、その犯行を匂わすものは一切残していないという。
 指紋はおとか、被害者に顔を絶対に見せることもなく、顔まわりや服装は、完全防備にしていたということで、
「後で見ても、見分けがつくわけはないと思います」
 と、数日してから、話ができるようになった被害者に聴いても、手掛かりになるようなことは一切なかったのだ。
 この事件は、最初、
「神崎専務の事件とは、まったく違うもの」
 ということで捜査されていたが、聞き込みをしている中で分かったこととして、
「これは、実際に連続殺人を計画したものだ」
 ということになったのだ。
 ただ、それに反対の刑事も少しいた。
「手口が違うような気がするんですけどね」
 というのは、清水刑事だった。
「だって、被害者は最初、手向かう様子もなく、刺されて、即死だったということですよ。だけど、今回の犯行は、目撃者もいて、その目撃情報から得られたのは、犯人の手口っがあまりにもお粗末だということではないですか?」
 というのだ。
「確かにそうなんだけど、そのわりに、ちゃんと逃げおおせているし、証拠もまったく残しているわけではない、あくまでも、殺害に失敗したというだけのことではないんだろうか?」
 それを言われると、さすがに清水刑事も、それ以上言い返せなかった。
 だが、論破したはずの、桜井警部補も、
「清水刑事の疑問ももっともだ」
 ということで、その疑問は、すでに自分が最初に考えていたことだった。
 だから、本当は自分も、
「連続犯罪なのだろうか?」
 ということで、警察の判断が気になっていたが、逆に、
「連続犯罪として捜査をする方が、捜査しやすいのではないか?」
 と感じたのだ。
 逆に、
「連続犯罪として捜査をした方が、犯罪者の心理を探るということでも、都合がいいし、何か、犯行の手口以外に、共通点が見つかる気もしたのだ」
 今回の被害者は、実際に
「狙われる」
 というだけのことはあった。
 というのは、
「私はある新興宗教団体に所属しているんですが、そこから抜けようとしているんですよ」
 というではないか。
「そんな、抜けるというだけで、襲ったり、殺人を犯そうなどということをあからさまにするものですか?」
「ええ、うちの団体はあるかも知れません。私も入信するまでは知らなかったんですが、入信してしまうと、その恐ろしさというものが、どういうものかということがだんだんわかってきたんです」
 というのだ。
「まさかとは思うけど、そんな抜けようとする人に、制裁を加えるというようなことが、その団体にはあるんですか?」
 と言ったが、
「ええ、確かにあります。特に、家族との接触を嫌がっていて、内部と外部との間の結界というのは、カルト宗教多しといえども、ここの規律は、最高レベルではないでしょうか?」
 と被害者はいうのだ。
 いろいろ話を聴いてみたが、それ以上の参考になる話は聞けなかったが、桜井警部補が気になった話としては、最後にその男が話した話だった。
 というのは、
「私の女房は、実は、ママ友というものに所属しているんですが、そこは、あくまでも、女房の話でしたが、私がこの宗教に入信する前から入っていて、そこの話は、さすがに」この宗教ほどひどくはないんですが、そこもかなりのものだというんです。そして、その内容というのが、一人のカリスマの女性がいて、その女性には誰も逆らえないというんですよ。私は、自分が入信した宗教で、そのことを思い出して、すぐに自分がやってしまった入信という行為が、取り返しのつかないことだったということに、その時気が付いたんですね。だから何とか抜け出すことができたんですが、きっと、私を襲ったのは、その組織かも知れません」
 という。
「何か証拠はありますか?」
 ということであったが、
「証拠があれば出してますよ。だけど、これは確かに脅しだとは思うんですが、本当にただの脅しなのかどうか、怖いと思うんですよ」
 という。
「証拠がないのであれば、我々もうかつに手は出せませんね」
 と、桜井がいうと、
「いえいえ、下手に手を出されるとこっちが怖いです。本当は犯人を捕まえてほしいというのが本音ではありますが、今後のことを考えると、これ以上のことは恐ろしいとしか思えないんですよ」
 というのであった。
 それを聴いて桜井警部補は、
「そういうだろうと思って、警察の建前を、それらしく話したが、やっぱり、警察の介入を嫌っているようだ」
 ということが分かっただけでも、それ以上追及はできないと思った。
作品名:洗脳による変則事件 作家名:森本晃次