小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

洗脳による変則事件

INDEX|15ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

「ええ、被害者が、婿養子として入ったということでしたが、そういう時って、姑として義父になる人から見て、養子になる人も、それなりに、女遊びをしていると思っているだろうから、たぶん、結婚に際して小声で、
「身辺整理はちゃんとしておけよ」
 ということはいっていたはずだ。
 そもそも、次期社長候補ということで、多少の女遊びは構わないが、必要以上に執着する女であったり、相手に執着されていると、この結婚を機に、
「ゆすりを掛けてくる」
 という女もいないとは限らない。
 下手をすれば、
「昔ながらの、美人局」
 というものもいるかも知れない。
 もちろん、会社のバックや、施設弁護士がいたりして、
「裏の仕事」
 というものを賄ってくれる人もいるだろうが、あまりにも情けない状態だったら、会社も面倒みきれない:
 ということになるだろう。
 もっとも、
「君の場合は大丈夫だと思うが、念には念を入れてだね」
 ということになる。
 男たるもの、普通に、一つや二つは、脛に傷を持つということもあるだろう。しかも、社長候補として見込まれるくらいの人間であれば、
「叩けば埃」
 というものは、たくさん出ることであろう。
 そういう意味で、
「身辺整理」
 というのが、結婚に際しての、差し当たっての課題だったといってもいいだろう。
 だから、もし、その身辺整理がうまくいっていなかったりすると、結婚前から続いている関係が、今になって表に出てくるということも十分にありえることではないだろうか?
 つまり、男と女というものが、
「高いレベル」
 のところで絡み合えば、下にいる人間からは見えてこないということになるのではないだろうか?
 そういう意味で、
「結婚前と結婚後」
 という、
「ビフォーアフター」
 というもので変わってくるということは、往々にしてあるというものだ。
 この場合、結婚後しか捜査に当たっていない場合、もし、そこに何も出てこなかったとすれば、
「怨恨ではなく、それ以外の動機を考えてみる」
 ということになるのだろうが、桜井警部補とすれば、
「怪しい人物を見つけるというわけでなくてもいいから、被害者の性格を知るという意味でも、昔のことを知っておいて損はないと思うんですよ」
 というと、
「ああ、なるほど、確かにそうだな」
 と、門倉警部は、二つ返事で納得する。
 もっとも、門倉警部は、
「それくらいのことは分かっている」
 と言わんばかりで、それこそ、いつもの、この二人の会話であるといっても過言ではないだろう。
 桜井警部補は、
「ただ、この男は、何かまだ手の内を見せていないな」
 と門倉警部には思われていたのだった。
「じゃあ、他の動機の面で捜査している清水刑事にも聴いてみようか?」
 と、それを聴いた清水刑事は、すぐに立ち上がって、手帳を見ながら話し始めた。
「もし、犯行動機が。怨恨でないとすれば、あと考えられることとしては、遺産相続ということになりますか、この場合は、被害者が死んだ場合、その遺産は、奥さんに半分渡されることになり、二人の間に子供はいないので、とりあえずは奥さんだけですね」
 ということであった。
「その奥さんは、大丈夫なのかな?」
 と、桜井警部補に聞かれ、
「なんとも今の段階では言えませんが、私が見たところ、奥さんは元々、この家のお嬢様として育っていて、英才教育としては、彼女が受けてきましたからね。そのあたりはしっかりしていると思います。逆に、英才教育を受けている頃から、あまりお金に執着はしていなかったようで、逆に、気に入った人に対しては、お金を渡したりすることで、縁が続くのであれば、もったいないと考えることはなかったということですね。そういう意味では、金銭感覚はマヒしているといってもいいかも知れません」
 と清水刑事は言った。
「じゃあ、被害者のまわりに、何か怪しい影のようなものはないかな? 何かの弱みを握られていて、脅迫されているというようなことだけど」
 と桜井警部補がいうと、
「それはないようですね。ただ、しいていえば、学生時代は、あまり評判のよくない連中と付き合っていたということはいわれていたようですけどね」
 というのだった。
「それは、ちょっとしたやんちゃくらいはしかねないということかな?」
「そうですね、それについては、昔からの顧問弁護士あたりが、結構お金をばらまいたこともあったということですね」
「なるほど、示談にしてきたということか」
「ええ、だから、ハッキリとした資料は警察にも残っていないので、その細かいところまでは、捜査ができないというところですね」
 というのだった。
「相当ひどいこともやったんだろうね?」
「それについてはなんとも言えませんが、少なくとも、すべてが、金で解決できてきたということですから、手の打ちようのないようなことまではしていないということですね」
 といって、清水刑事は、そこで話を打ち切った。
「なるほど、じゃあ、怨恨の面でも、遺産相続にしても、それ以外のことについても、動機としては、どれにもありそうで、決定的なものがないということになるわけだね」
「ええ、そうですね。ここは、もうちょっと幅を広げるか、それとも、今出ているものを、一つ一つ潰していくかということが問題になりますね」
「よし分かった。じゃあ、まずは、この情報から、少しずつ進めてみよう。ただ、先ほどの桜井君の話にあった、被害者の結婚前の問題についてだけは、もう少し調べてもらうことにしておこう」
 ということであった。
 それを聴いた桜井警部補は、清水刑事に、
「聴いての通りなので、もう少し被害者の昔を探ってくれないか?」
 ということになったのだ。
 そこで見えてきたのが、ハッキリとしたことは分からないが、これはウワサでしかないのだが、
「あいつは、まだ結婚前、ちょうど5年くらい前になるか、その時、一人の女を、数人で暴行したことがある」
 という話を、桜井警部補にした。
 桜井警部補は興味深げに聴いて、
「それで、それは表に出なかったのか?」
「ええ、あくまでもウワサレベルだったんですが、どうして、それが表に出なかったのかというと、ちょうどその後に、暴行を受けた女性が自殺をしたというんですね、だからm追及のしようもなくて、あくまでもウワサということで終わってしまったんです」
 ということであった。
「自殺ということであれば、今回の被害者も一緒に襲った連中からすれば、ホッと肩の荷が下りたと言ったところか?」
「ええ、そうなんですよ、何ともけしからん話で、誰もが、この話を聴いただけで、吐き気を催すということで、話をするのはタブーとなっていたようです」
「その時の彼女には家族や彼氏は?」
「彼氏は幸いにいなかったようです。ただ、まだ大学生だったということで、その姉がいて、その人は、今結婚して、普通の主婦をしているようです」
「そうか、本当は一度話を聴いてみたいのだが、普通に暮らしている主婦の傷に塩を塗るような真似はしたくはないな」
「ええ、そうですね、私も、賛成です」
 ということで、桜井警部補も、
「あくまでも、念のための捜査」
作品名:洗脳による変則事件 作家名:森本晃次