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異常性癖の「噛み合わない事件」

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 しかし、川崎の方は、真面目に、
「男の自分の方が」
 と感じていた。
 里美の性格からすれば、他の男だったら、
「そんな風に言われると心外だ」
 と思ったかも知れない。
 しかし、相手が川崎であれば、そんな気になることもなく、
「安心できる」
 という気持ちが一番だといえるのであった。
 だから、川崎と付き合い始めた頃は、何度、
「川崎さんとこれからも付き合っていける自信がないの」
 といっては、彼を困らせていた。
 最初は、
「さすがに川崎さんでも、私のウソを見抜くでしょう」
 と思っていたが、意外にも、里美のいうことを信じて疑わなかった。
「そっか、この人は、人を疑うということを知らないんだ」
 と感じ、
「それだったら、あんな情けないミスや態度を取ったとしても、かわらいしいという思いになれるのかも知れないわ」
 と自分が、彼に母性本能を感じているということを分かっていたのだ。
 そんな里美は、
「もっと、川崎を困らせてやろう」
 ということで、一生懸命に、彼の気を引くような態度を取った。
 すると、それだけ川崎という男は、里美がしてほしい態度に出てくれるということで、有頂天になっていた。
 しかし、それが、いかに川崎という男の感情をすり減らしていたのかということを分かってはいなかった。
「私は、彼に甘えているのよ」
 とばかりに、自分を正当化していたのだ。
 しかし、何といっても、
「彼が自分のことを許している」
 と思えば、
「彼が私に甘えるのは、あの人が望んだことで、それを叶えてあげるのも、私の役目なんだわ」
 ということで、
「絶対的な都合のよさ」
 というものを感じるのであった。
「里美は、どんな態度をとっても、俺には、嬉しいんだ」
 といっていた。
 それを里美は完全に、真に受けたといってもいいだろう。
 もちろん、川崎も、思ってもいないことを口にしないわけではない。
 確かに、女から慕われれば、少々の態度を取られても、いやではないと思うことであろう。
 それを考えると、
「私には、川崎さんが、一番ふさわしいんだ」
 と感じるのであった。
 しかし、実際に、川崎は、
「里美の言葉を信じてしまっていた」
 そして、里美も、
「そんな川崎という男を見失っていく」
 ということであった。
 だから、川崎という男が、仕事や親の板挟みになっているのも、里美からすれば、
「どこまで本当か分かりはしない」
 と思っていた。 
 もちろん、
「言葉に嘘はない:」
 とは思っているであろうが、言っている言葉んい信憑性があるのかどうかということに関しては、分かったものではなかった。
 お互いに、
「相手の言っていることは、本心からでその気持ちにウソはない」
 と思っていた。
 もちろん、自分の言葉に嘘はないとお互いに思っていることから、相手もその様子を信じるのだ。
「気持ちにウソがあろうがなかろうが、態度にはウソはないのだ。相手を信じるという気持ちが前面に出れば、その思いがどこまで真剣なのかということは、次第に信じられないと思いながらも、信じようとする自分にウソはついていないということを免罪符にして、あくまでも、自分が感じたことが正しい」
 ということで、それを、
「相手のことをいつも考えている」
 ということで、何を信じるのかということを、自分の中で考えるだけになっていたのだ。
 相手の気持ちをいかに正しいと感じるのかということは、
「自分にしか分からない」
 という、本当に、
「自分を信じないといけないものなのに、自分を信じるための免罪符に、相手を信じるという思いを抱かせる」
 ということで、
「何が正しいのか?」
 ということを、分かっているつもりになっているだけであった。

                 目撃者

 警察が通報を受けてやってきた時、閑静な住宅街は、まだ閑静なままだったが、パトランプが光り続け、サーチライトが眩しい状態になると、さすがに、異常に気付いた住民が出てきて、警察が貼った規制線の前で、野次馬がたむろしている状態になったのである。
 無線の声が聞こえたり、パトカーが何台もやってきて、物々しい雰囲気は、まさに、刑事ドラマさながらの様子であった。
 実際に、このような殺人事件は、この辺りに数十年住んでいるという人も覚えがないのか、最初は、
「なんか賑やかな気がするが」
 と感じたが、表に出ることはなかった。
 この住宅ができて少ししたくらいは、この住宅街のあたりも、暴走族と呼ばれる不心得者たちが、騒音を立てていたが、何もここに限ったことではなかったので、そこまで気にすることはなかったが、迷惑千万であることに間違いはなかった。
 だが、そんな暴走族というものが、
「時代遅れ」
 と言われるようになると、閑静な住宅街が戻ってきた。夕方くらいまでは、子供たちのうるさい声が響いていたが、日が暮れてくると、音というと、車の音くらいで、それも、そんなに気になるものではない。
 そんな街なので、
「何か事件が起こる」
 などということはなく、世間で、
「児童誘拐事件」
 であったり、
「通り魔による婦女暴行事件」
 というものが多発しているということがあると、警察の警備が厳しくなったり、平成の初期の頃などは、この街の有志が募って、
「警備隊」
 のようなものを組織して、街の警備ということで、班になって、街をパトロールしたものだが、次第に、
「ここでは、そういう世間的な事件は起こらない」
 という神話的なものができたことから、すっかり警備への意識は薄れていったのである。
 だからこそ、今では、警備だけでなく、
「近所づきあい」
 というのも、希薄になってきた。
 それが本来の姿ではないかと言わんばかりで、それこそが、この街の治安になってしまったのだ。
「実際には、ただ今までここで犯罪が起こらないのは、ただの偶然」
 ということだったのか、それとも、
「ここで犯罪を犯すような人がいない」
 ということだったのか、まったく分からない。
 ただ、事実として、この住宅街では、ここができてから、何かの事件が起こったことはなかったということだったのだ。
 それだけに、街の人は、
「ここでは、事件など起こらない」
 ということを、神話であったり、伝説として考えていた。
 あくまでも都市伝説でしかないということを、今回の事件で思い知ったことだろう。
 だから、事件が発生したであろう時刻は、ハッキリとはしない。鑑識がやってきて、死亡推定時刻を大体の範囲で特定はしたが、いわゆる、
「前後一時間」
 とくらいという曖昧な時間で、
「死亡推定時刻:10時前後。9時から11時くらいではないか?」
 ということであったが、実際に死体を発見した人がそこを通りかかったのは、午後10時半くらいということなので、
「死亡推定時刻は、9時くらいから10時半まで」
 ということになると思われる。
 死体が発見されたのは、住宅街の入り口から、少し入ったところの、コミュニティバスも通る、
「住宅街のメイン道路」
 といってもいいだろう。