異常性癖の「噛み合わない事件」
確かに、荷物をトランクに積んでからは、カーゴを元に戻さなければいけないという手間はあるだろう。
しかし、それでも、
「いつ開くか分からない」
という駐車場を、待っているほど、暇ではないと思うのではないだろうか?
だから、最近では、
「車を利用したくない」
と思う人であったり、
「人混みは嫌だ」
と思う人は、
「人が少ない時を狙う」
と考えたり、
「重たいものはスーパーでは買わない」
と考えている人も少なくないと思うのだ。
そういう意味で、
「ネットスーパーなどというものを利用する人が多い」
という。
どこまで便利なのかは、難しいところだといえるのではないだろうか?
それを考えると、逆に、
「郊外型のスーパーに近いところに引っ越すのも手だな」
と考える人もいるだろう。
ただ、よく考えれば、そこに行くまでに時間が掛かるかかからないかということなだけで、結局、車を使わないと、荷物を運べないのであれば、同じことだということになる。
あとで気づいて、
「何を考えていたんだ?」
と思わず苦笑いをするかも知れないが、何も最初から、
「スーパーでの買い物だけを考えて、郊外に住まいを構える」
ということではなかっただけに、ただの苦笑いで済むのであろう。
今であれば、
「一戸建てを購入する」
などというのは、
「常軌を逸している」
といってもいいかも知れない。
よほど、給料がいいか?
などという理由でもなければ、一戸建てを購入するなどというのは、ありえない。
前述のように、
「老後を考えると、とってもではないが、ローンを組むなど恐ろしい」
さらには、
「いつ会社をリストラされるか分からない」
ともいえるし、
「給料が高いところ」
という会社で、しかも、
「その中でもローンを組むだけの高給取り」
ということになれば、それこそ、
「エリート社員でないと務まらない」
といえる。
ただ、エリートとなると、転勤がつきもので、
「家を買ったはいいが、会社から転勤を言われた」
ということになると、
「単身赴任」
ということで、何のために家を買ったのか?
ということになる。
「二世帯生活でローンも払う」
というのがどれほど大変かということであった。
だから、
「一戸建て」
というものを持てるとすれば、それは、
「親が残してくれた持ち家」
ということくらいでしか賄えないだろう。
それを考えると、
「平成の時に、親が家を買ってくれていてよかった」
と、みゆきは考えていたことだろう。
みゆきは、年齢としては、25歳だったという。
年齢的には、昔でいえば、
「結婚適齢期」
と呼ばれる年齢であるが、実際に、
「結婚なんか、まったく考えていない」
というタイプだった。
母親の同じくらいの頃に比べれば、まったく違う」
といってもよかっただろう。
何といっても、
「結婚ということをいつもほのめかしていて、相手にプレッシャーを与え、結局別れることになった人がいた」
というくらいだからだ。
娘のみゆきは、実はその話は知っていた。
母親の里美が、そのことを自分から話したことがあったからだ。
あれは、酔っぱらってのことであり、ちょうど、旦那と喧嘩中だったこともあり、そのストレスをぶつける先がなかったということで、娘に話したのだった。
娘とすれば、母親の時代が、
「なんとも古めかしい」
と思ってはいたが、それでも、
「私にとっては、今まで頼りないと思っていた母親が、意外と頼もしいところがあったのではないか?」
と感じたことが嬉しかったと思っている。
「お母さんにそんな時代があったなんてね。お父さんと見合い結婚だって聞いてたから、てっきり、恋愛なんてしたことないと思ってた」
とみゆきは言ったのだ。
みゆきとすれば、
「母親の時代というと、旧態依然とした昔も残っていて、さらに、離婚やバツイチという言葉が当たり前の時代であり、戸籍に傷がつくなんて言葉は、死語だったのではないだろうか?」
と考えていたのだ。
だから、母親が、
「見合い結婚」
ということだったので、
「ああ、旧態依然とした風習で結婚したんだ。面白くない」
と思っていた。
しかし、実際には違ったということで、ある意味、少しだけではあるが、母親を見直したと思っているのであった。
みゆきが子供の頃は、
「勉強しなさい」
ということは結構言われていた。
友達の中でも、自分は群を抜いて言われていたと思っていたのだ。
だから、
「今の時代において」
という思いが強く、思春期くらいから、次第にグレてきたといってもいい。
しかし、グレてきたとは言っても、実際には学校の成績はよく、高校などは、
「進学校」
と呼ばれるところに入学し、大学も、
「四年制の大学」
に進学したのだ。
母親の時代であれば、
「四年制の大学に入ってもしょうがない」
と言われていた。
それこそ、
「勉強したいものがある」
という目的でもなければ、
「就職にはそんなに有利ではない」
と言われてもいたので、
「あえて、短大に進んだ」
ということであった。
だが、今では、専門学校などもあり、
「手に職を持っている方が就職に有利」
ということで、
「大学というものがどういう評価なのか、よく分からない」
という時代にもなってきたものだ。
だから、みゆきは、四年制の大学に進み、それなりに勉強もした。
しかし、同じくらいに、
「いや、それ以上に遊ぶことも遊んだ」
のだった。
といっても、男性との付き合いは、そこまではなかった。
そもそも、母親から、結婚について散々聞かされているので、あまり興味もなかったのだ。
というのも、母親の里美は、社会人の結婚しようと思った相手である川崎という男と別れて、今の旦那である島崎と一緒になった。
島崎という男は、
「なんでも無難にこなす」
という、里美から言わせれば
「何の面白味もない男」
だったのだ。
そもそも、昔付き合っていた川崎という男は、正直、
「頼りのない男」
であった。
というのも、
「ちょっとしたことでへまをする」
という男で、そのくせ、
「背伸びをしたがる」
というところがあったのだ。
いつも危なっかしいのだが、そこが、里美の心をくすぐるというのか、
「母性本能をくすぐる」
というタイプだった。
そういう意味では、
「ハラハラドキドキ」
ということだったのだが、里美もどっこいどっこいで、すぐに自分の意見を変えるところがあった。
普通の男性だったら、
「そんな優柔不断な女は嫌だ」
ということになるのだろうが、川崎は、負けず劣らず、格好つけるくせに、失敗ばかりしていて、それが、里美に安心感を与えるのだった。
「私は、川崎さんのような男を求めていたのかも知れないわ」
ということで、
「あの人だったら、私でも、対等に付き合えるかも知れない」
と感じた。
というよりも、
「あの人だったら、私の方が好き放題にできるかも知れない」
と感じたほどで、それだけに、
「二人は相性が合う」
と思っていた。
作品名:異常性癖の「噛み合わない事件」 作家名:森本晃次