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異常性癖の「噛み合わない事件」

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 男の話は、その後になってから鑑識が正式に捜査本部にもたらした内容を裏付けているかのようだった。
 ということになれば、
「目撃者のいうことにほぼ間違いない」
 ということになり、しかし、
「ここまで話に信憑性というものがあると、第一発見者も、参考人としては、重要な部類になるでしょうな?」
 と、桜井警部補は言った。
 そこに対して、捜査本部の本部長である、
「門倉警部」
 も、
「ああ、そうだな、桜井君の言う通りだ」
 と言った。
 門倉警部は、この事件を何か不可思議なイメージで考えていた。普段は何も起こらない閑静な住宅街で、一人の男が刺殺されたということが、不自然な気がしたのだ。
「ちなみに、被害者の身元は?」
 と聞かれた清水刑事は、手帳を取り出して。
「島崎みゆきというOLです」
 という。
 そこで、桜井警部補が遮るように口をはさんだ。
「あ、すみません。この事件の第一発見者である男性の話では、その人は、警察が来て、死体を仰向けにするまで、その被害者を男性だと思っていたようなんです。ズボンも穿いていましたし、髪型もボーイッシュでしたからね」
 という。
「だけど、体つきや大きさで、男性か女性かくらいは分かりそうなものだが?」
 というのを聴くと桜井警部補は、
「いえ、そうでもないのかも知れません。というのは、当たりが暗く、男からすれば、車のヘッドライトでしか判断がつかないわけですよね? しかも、最初見た時、血痕を、影だと思っていたわけですから、それだけ、錯覚を起こしやすい状況にあったんですね。だから、影が余計に目撃者に錯覚を与え、光がよく見えない状態から、影がその人を大きく見せ、さらには、肉付きがいいように見えたということのようですね」
 というのであった。
 桜井警部補も、確かに現場を最初に見た時は、
「被害者は男だ」
 と感じた。
 そして、被害者を仰向けにした時、その顔が女性であったことで、ビックリしたのは、何も、目撃者だけではなく、自分もだったということだったのだ。
 これを、門倉本部長だけでなく、捜査員全員に、認識として分かってもらっておく必要があると感じたのだ。
 門倉本部長は、
「分かった」
 と一言いっただけなので、どこまで意識の中にあったのか分からないが、
「それでもいい」
 と桜井警部補は思ったのだ。
「続けます」
 と、清水刑事は手帳に視線を落として、
「都心部の企業に勤めていますが、母親の話では、ここまで遅くなるというのは、あまりないということでした。だからと言って、さすがに大人なので、遅くなったら、タクシーで帰ってくるということくらいは分かっていると思っていたということでした」
 と答えた。
「付近の聞き込みはどうだったのかな?」
 ということで、今度は、聞き込みを行っていた
「佐藤刑事」
 がこちらも、立ち上がって、手帳に目を落としながら話した。
「ほとんど、誰も目撃関係はありませんでした。あのあたりは、閉鎖的なところがあるのか、深夜の時間帯になると、誰も表に出てくるという人もいないようで、車の通りも8時を過ぎると、ほとんどないということが聴けました」
 という話を聴いた桜井警部補は、
「じゃあ、何か物音であったり、悲鳴を聴いたという人はいなかったということかな?」
 と聞くので、また佐藤刑事は、
「「はあ、そういうことになりますね。犬の声も聞こえなかったということなので、それだけ、あの場所が住宅地から離れているということになるんでしょうな」
 と答えた。
「なるほど、あの辺りは確かに、人通りが少なく、他の閑静な住宅地と呼ばれるところ同様なんだろうな」
 と、桜井警部補が言った。
 まだ事件が発覚してから、一夜明け、その午前中に、捜査本部が立ち上がり、第一回目の捜査会議なのだから、情報というのはこんなものだろう。
 まだ、鑑識からも、正式な話も来ていない状態なので、今回は、初動捜査の報告と、これからの捜査方針についての、確認というのが、主な会議の目的だろう。
 だから、ここでの主導権は、門倉本部長にある、本部長は、テキパキを指示をしていた。「まずは、被害者の足取りを調べること、さらには、被害者の交友関係。そして、犯人が使ったナイフの出所なども問題だな」
 ということであった。
 被害者の胸には、凶器が残っていた。
 これは、
「どうしてなのか?」
 と考えた時、一番考えられることとして、
「犯人は、返り血を浴びることが怖かった」
 といえるのではないだろうか?
 ナイフを突き刺したとして、それを抜き取るということは、血が噴き出すということは誰の目にも明らかなことであり、返り血を浴びたままでは困るということは、誰もが考えることであろう。
 ただ、そのために、リスクもある。
「警察にその凶器を残してしまう」
 ということである。
 犯人とすれば、
「指紋はふき取っていて、手袋をしての犯行であれば、指紋から足がつくことはない」
 と考えるであろうが、
「万が一、どこかに指紋が残っていないとも限らない」
 とも言い切れないだろう。
 それを考えると、逆に、
「じゃあ、どうして、殺害方法を視察己選んだのか?」
 ということにもなるだろう。
 ただ、他の方法だと、もっと無理があるというのだろうか?
「絞殺などであれば、こちらは、抵抗される可能性が強く、余計に指紋などの証拠を残す可能性がある」
 ということである。
「絞殺の最中に相手が苦し紛れに、犯人の服のボタンを引きちぎるなどして、握りしめていた場合、死後硬直が始まってしまうと、それを持ち帰ることができず、一気に足がつくということにもなるだろう」
 ともいえる。
 また、
「毒殺などというのは論外で、そもそも、手に入れることが困難であるだけに、手に入れられるとすれば、そのルートから、すぐに警察に露呈する」
 ということになり、これこそ、犯罪としては難しいといえるだろう。
「まるで、探偵小説の中での出来事でしかない」
 ということになるだろう。
 そんなことを考えていると、
「刺殺が一番リスクが少ないのかも知れないな」
 と、桜井警部補は考えていた。
 そして、桜井警部補のもう一つの疑問というか。注目点としては、
「殺害現場がどうしてあそこだったのだろう?」
 ということであった。
 被害者は、確かにあそこにいても不思議はない人物であった。
 住まいは、住宅街ではなかったは、実家が住宅街にあったのだ。
 自分の住まいは、会社の近くでマンションを借りていて、たまに、休みの日などに顔を出す程度だと、母親は言っていた。
 しかし、その日は、みゆきは仕事が休みというわけではなく、会社が終わってから実家に来たのだった。
「遅くなったんだから、泊まっていきなさい」
 ということで、家族は娘が泊っていくと信じて疑わなかったので、
「娘が道で誰かに刺されて殺された」
 というのを警察にいわれた時、
「えっ、うちの娘は、奥で寝ているはずでは?」
 と思い、報告に来てくれた刑事に対し、笑顔で、
「そんなことはありませんよ」
 といって、
「奥で寝ているはずなんですけどね」
 と刑事を玄関に待たせて、
「みゆき、寝てるの?」