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もう一人が犯人

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 ということになり、それを破ると。
「統帥権干犯」
 ということになるのだ。
 ロンドン軍縮会議において、海軍の予算にかかわるものを、政府が勝手に、条約に調印したということ」
 であったり、
「満州事変においては、朝鮮軍司令長官だった林銑十郎が、天皇に無断で、軍を満州に派遣した」
 ということ、さらには、
「226事件においては、軍隊を、青年将校のレベルで勝手に動かし。しかも、反乱を起こした」
 ということなどが、
「統帥権干犯に当たる」
 と言ってもいいだろう。
 満州事変の際は、
「関東軍だけでは、事態に対応できないということでの、朝鮮軍の派兵であったが、これが、日本から朝鮮であれば、干犯には当たらないかも知れない」
 と言われる。
「なぜなら、当時の朝鮮は、韓国併合ということで、日本国内」
 ということになるからだった。
 これは、事後承認という形になったのか、その時の、朝鮮軍司令官は、懲罰にかかるどころか、その後、首相にも就任しているくらいだったからである。
 海軍は、陸軍と
「名称の違いこそあれ、組織としては、ほとんど同じである」
 ということから、こちらも、
「陸軍である参謀総長にあたる、軍令部長と、海軍大臣とは兼任できない」
 ということなり、
「当然のことながら、軍令部長と、首相も兼任できない」
 ということになるのであった。
 こちらも、今の警察や官僚に負けず劣らず、
「いや、それ以上に厳しい体制だった」
 といえるだろう。
 そもそもが、大日本帝国というのは、
「立憲君主国」
 というものであり、今のような、
「民主国家」
 というわけではないのだ。
 坂本は、キャリア組というわけではなかった。交番勤務から始まった、いわゆる、
「叩き上げ」
 だったのだ。
 ある事件が起こったことで、彼は警察を辞めた。
 階級としては、警部補になれるかどうかというところであった。
 警部補になれば、
「捜査の指揮を執ることができる」
 ということで、やる気になっていたのだが、捜査の途中で、同僚が犯人に射殺されるということが起こったのだ。
 一緒に捜査をしていただけに、坂本に対してのまわりからの厳しい目は、相当なものだった。
「犯人は俺の手で」
 ということで、必死になって捜査を行った。
 しかし、結局犯人を捕まえることができず、どうやら、
「海外に逃亡した」
 ということであった。
 海外に逃げられると、少々のことでは、本人が帰国するまでは手を出すことができない。
 しかも、やつが逃げ込んだ国は、
「かつて、日本がいらした海外逃亡した犯人の引き渡しや、捜査協力を断った」
 という前歴があることで、
「捜査の継続は、ほぼ不可能ということになり、迷宮入りということで、未解決事件として、書類の山の中に埋もれてしまった」
 ということであった。
 だから、坂本刑事は、
「そもそも、同僚が撃たれた時点で、警察を辞める」
 と考えていた。
 しかし、
「犯人は自分の手で」
 ということで、この事件が解決するまでは、警察官として頑張ると思っていたのに、肝心なところで、海外逃亡を許ししてしまったことに、憤りしかなかったのだ。
 しかも、本来なら、
「身柄の拘束」
 というものはできたはずだった。
 しかし、警察や裁判所が、もたもたしていたことで、タッチの差で海外に逃げられたのだ。
 それこそ、坂本刑事のトラウマとなった、
「同僚が射殺される」
 ということよりも、
「本当であれば、その罪はもっと重い」
 ということになる。
 さらに、この事件は。
「現役刑事が射殺された」
 ということでマスゴミにも取り上げられ、一時期は、毎日のように、ワイドショーで、コメンテーターが、
「ああでのない、こうでもない」
 と、
「小田原評定」
 を繰り返していたのだった。
 それなのに、ある時期を過ぎると、ピタリと何も言われなくなった。
 何といっても、ちょうどその時、
「政治家の不祥事」
 というものが騒がれるようになって、一つの殺人事件どころではないということであろう。
 もっといえば、
「他に大きな事件がなかったので、何日も引っ張っただけのことだった」
 と言ってもいいだろう。
 だから、マスゴミが注目している時は、警察も、
「警察のメンツにかけて、事件解決を」
 ということで、それこそ、
「縄張りなど関係ない」
 ということで捜査をしていたが、裏を返したように、マスゴミが何も言わなくなると、今度は、警察も、
「今までと同じ捜査方法」
 というものに戻ってしまったのだ。
 つまりは、
「マスゴミに騒がれている時は、坂本刑事としては、やりがいやハリというものがあったが、騒がれなくなると、拍子抜けしてしまったことで、その時初めて、警察を辞めるという傑をした」
 と言ってもいいだろう。
 警察というものが、どういう組織体制なのかということを考えると、
「今まで、警察を辞めなかったのが不思議なくらいだった」
 と言ってもいいだろう。
 実際に、
「警察という仕事にやりがいはなくなっていた」
 確かに最初こそ、
「正義感を振りかざして」
 ということは間違いなくあり、それが、子供の頃から根底にあった、
「勧善懲悪」
 というものがあったことで、
「ここまで持った」
 と言ってもいい。
 もし、
「同僚の死」
 というものがなくても、最後まで勤め上げたかどうか、分かったものではない。
 と思っていたのだ。
 そんな彼が、警察を辞めたことで、年齢的にも中途半端。
「いまさら、どんな仕事に就くというのか?」
 ということを考えると、
「私立探偵」
 というものをやってみようと考えたのだ。
 これは、以前、別の所轄にいた時の先輩が、警察を辞めて、
「探偵事務所」
 というものを建ちあげたことを思い出したからだった。
 あれは、5年前のことであったが、
「刑事を辞めることがあったら。、俺のところに来い」
 と言っていたのを思い出したからで、
「そもそも、俺が警察を辞めるのは、仕事がいやで辞めるわけではなく、警察組織というものが嫌だから辞めるだけのことだ」
 ということであった。
 しかも、きっかけとしては、
「同僚の死」
 そして、
「その死の事件を警察では解決できない」
 ということを思い知らされたからだった。
 だから、
「あの時の先輩の言葉も、正直忘れていた」
 と言ってもいいくらいで、
「思い出さなければ、探偵になることもなかった」
 というものである。
 探偵事務所を訪れた時、先輩は、暖かく迎えてくれた。
 しかし、その言葉には、少し棘があった。
「これからやってもらう探偵の仕事というのは、今までの警察手帳のような国家権力が味方なわけでもなく、公務員というわけではない。それだけにかなり厳しいところもあるぞ」
 とくぎを刺されたのだ。
「それは分かっているつもりです」
 とは言ったが、
「確かに分かってはいるが、その分、これまでの、縦割り社会であったり、縄張り意識のようなものが足かせになったりはしない」
 ということは分かっていたので、
「どっちもどっち」
 ということになるだろう。
 確かに、
「勧善懲悪」
作品名:もう一人が犯人 作家名:森本晃次