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もう一人が犯人

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 と自惚れてもしかたがないと言ってもいいだろう。
 結婚前も、自分なりに自信があったが、結婚後、さらに自分にうぬぼれを感じるようになったのだから、余計に、
「ちょっとでも、怪しい」
 と感じると、その自分への自信が揺らいできて、今までにない嫉妬心のようなものが浮かんできたとしても不思議はなかったのだ。
 それを分かったうえで、
「愛子という女が、浮気をする」
 ということは、自分でも信じられない」
 と思ったことであるが、実際に、
「最近の愛子の態度」
 というものを考えると、それまであった自信が、
「音を立てて崩れ去る」
 ということを感じたのだ。
 学生時代までは、自分というものに、まったく自信を持っていなかった浪川であったが、あるきっかけから、自分に自信を持つようになると、
「その自信がゆるぎないもの」
 となってしまうことを、最初から予感していたのかも知れない。
 だから、今までであれば、
「会社の社長なんて、そんなおこがましい」
 と思っていたはずなのに、自信が持てるようになると、その先は、どんどん、有頂天になっていくのであった。
 だから、
「大学時代から、愛子に疑いを抱くまで」
 というのは、
「まるで別人だった」
 と言ってもいいのかも知れない。
 ということは、
「自分の中に、二人の人間が住んでいるのではないだろうか?」
 という思いであった。
 それが、
「ジキルとハイド」
 のように、正反対の性格というのであれば、納得がいくが、
「どうもそうは思えない」
 と考えると、
「じゃあ、実際にはどっちなんだ?」
 と考えるのだ。
「自信過剰の塊だ」
 と思っていたり、
「一度気になってしまうと、どんどん悪い方に考え、どうしようもなくなってしまう」
 という考え方である。
 しかし、
「長所と短所は紙一重」
 という言葉もあるが、
「正反対であるからこそ、表裏の紙一重」
 といえるのではないだろうか?
 それを考えると、
「躁鬱症」
 ということになる。
 これは、探偵になった、
「坂本にも言えることだ」
 ということなので、案外、
「自分が躁鬱症ではないか?」
 という考えを持ったとしても、不思議はない。
 だが、浪川の場合は、その病気について調べてみるという気持ちがあった。
 実際に調べてみると、
「今は躁鬱症というよりも、双極性障害という脳の病気だ」
 ということであるという。
「躁状態と鬱状態というのが、交互に、しかも、高速で襲ってくる」
 というものだという。
 これは、
「脳の病気なので、自分で勝手な解釈をしない方がいい」
 ということで、
「医者の診断を受け、医者が処方した薬をキチンと飲まないといけない」
 ということになるのだ。
「勝手な判断で薬を辞めてしまうと、せっかくよくなりかけていたとしても、一気に、前の状態に戻ってしまう」
 ということになるだった。
 ただ、浪川は、そこまではないようだった。
 別に病院に行ったわけではないが、
「躁状態」
 というのも、
「うつ状態」
 と言われる症状も見受けられないということだったからだ。
 しかし、今回の
「奥さんへの浮気の心配」
 というものは、今までになかったものだ。
 もっといえば、
「今までに、自分に自信を持った」
 ということがなかったことで、
「躁状態からうつ状態になる」
 ということはなかった。
 ただ、
「うつだったのではないか?」
 と思うことは確かにあり、しばらく、何もしたくないというようなことになったというのも、思い出せるくらいであった。
 ただ、
「大学時代から、今までの自信過剰だった時期」
 というものが、
「実は、躁状態だったのではないか?」
 と考えれば、考えられないこともない。
 そして、双極性障害というものを調べていると、
「一番危ないのは、意外にも躁状態の時だ」
 と書かれているではないか。
 つまり、躁状態というのが、何よりも、自分に自信が過剰になる時で、それは分かっていることであるが、そのせいか、
「なんでもできる」
 と思い込んでしまうのである。
 そうなると、
「本当の自分というものを見失っていたとしても、自分では分かっている」
 という思いが強くなることから、
「本当の自分」
 というものが分からなくなるということであった。
 奥さんの浮気というものが、信憑性を帯びてくると、それまでの、自分が、
「躁状態」
 という、
「なんでもできる」
 という状態から、
「実際には、夢幻を見ていた」
 ということでの、
「信じられない自分」
 というものが実際にいて、
「それをいかに受け入れるか?」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「愛子が今までの愛子ではない」
 ということの理由は、
「すべて自分にある」
 と感じるのであった。
 とにかく、
「自分中心」
 という考え方をずっと持ってきた。
 子供の頃の気が弱い時でも、
「自分中心にしか考えられないから、うまくいかない」
 ということを、自分なりに理解しているが、それをどうすることもできないということで、
「気が弱いのも仕方がない」
 と考えるようになったのであろう。
「俺にとって、女房というのがどういう存在なのか?」
 ということも、いまさら思い知らされた気がした。
「女房は、黙って俺に従ってくれる存在だ」
 と思っていた。
 それを自分では、
「亭主関白だ」
 という感覚になったことはない。
「奥さんというものが、旦那と相性が合わないと感じ始めると、どういう行動をとるのだろうか?」
 というものを考え始めた。
 すると、
「俺が独自に調べたとすれば、必ず、俺の方でどこかドジってしまい、中途半端に下手なことになりかねない」
 ということで、
「だったら、探偵に依頼するか?」
 と考えた。
「日本の探偵は、浮気調査などというのは、日常茶飯事なので、彼らに頼むのが一番いいことだろう」
 と考えたのだ。
 それを、浪川が、
「この探偵にしよう」
 と考えたかというと、そこには肩書として、
「元刑事」
 と書いていた。
 ただ、それは、少々のことでは分からないくらいの小さな文字で、申し訳なさそうにしていたからだった。
 その謙虚さが、
「浪川にとって、一番安心できる探偵」
 と考えたのだ。
「一番信頼できる」
 というのはもちろんだが、
「一番安心できる」
 と考えたのは、ある意味、
「正解だったのではないか?」
 と感じたのだった。
 結果、それが本当によかったのか?
 現実は正反対に見えたのだった。
 殺された男は、元弁護士で、迫田探偵という。
 彼は知らなかったが、何と、同じような事件の捜査を、坂本探偵にもしていた。
 もちろん、坂本探偵はそのことを明かそうとはしない。そんなことを言えば、
「自分も容疑者の一人」
 ということにされてしまうからだった。
 そして、今回の依頼を二重でしているということを、坂本探偵がどこから知ったのかというと、それは、浪川本人からだったというのは、実に不可思議なことだった。
作品名:もう一人が犯人 作家名:森本晃次