もう一人が犯人
というものが、優先されるということになる。
ここで出てきたのが、
「民主主義の理念」
ということであり、
「憲法とどちらが、優先されるべきなのか?」
ということが、難しいということになるのであろう。
私立探偵というのは、そういう意味では、
「警察とは、お互いに補い合う」
という関係が一番いいのではないだろうか?
もっとも、探偵と警察とでは、その存在意義というものがまったく違っている。
「警察というのは、ある意味、治安を守る」
ということで、
「誰か一人をひいきする」
というわけにはいかない。
しかも、組織の中で動くもので、その組織が、公務員ということで、
「自由というものがほとんど利かない」
ということになる。
逆に私立探偵というものは、
「お金をもらうということで、依頼人を最優先とする」
というもので、どこか弁護士と似ている。
弁護士というものは、
「依頼人の利益を最優先とする」
ということで、下手をすれば、
「法律に違反しなければ、依頼人のためであれば、なんでもする」
と言ってもいい。
それこそ、
「黒いものをシロにする」
ということで、それができる弁護士が、
「優秀な弁護士だ」
ということになるのであった。
弁護士の場合は、あくまでも、起訴された人ということで、立場的には弱いということになるので、
「それを公平にして、最終的な罪状を明らかにする」
ということになるのだ。
だから、最終的に、裁判によって、
「無罪判決を勝ちとる」
ということができるのであり、それをできた弁護士が、世間では、
「優秀な弁護士」
ということになるのであった。
弁護士というものと、私立探偵というものでは、その存在意義も立場もまったく違うと言ってもいい、
しかし、最終的な着地点ということで、
「真実の追求」
というのがその理念だということに変わりはない。
「真実の追求」
というものは、
「実に難しく、地道なものだ」
と言ってもいいだろう。
つまりは、
「事実という一つしかないものを積み重ねることで、そこに見えてくるものを、真実として明らかにすることで、そこから、適正な罪状を示すことになるのが、
「裁判」
というものである。
だから、
「公平である」
という必要があり、
「警察の捜査を元にした事実と思しき証拠、つまり、状況証拠と、物的証拠を総合的に見て、検事は、起訴するかどうか」
を決めるのだ。
だから、
「その人が犯人であっても、警察の捜査で、決定的な物証が見つからず、状況証拠だけしかない場合、検事が起訴するかどうか難しいところだ」
と言ってもいいだろう。
「事実というものは、いわゆる物証ということで、真実というのは、目の前に見えていることということで、状況証拠だ」
と言ってもいいかも知れない。
「状況証拠しかなければ、起訴は難しい」
ということになり、起訴しなければ、結局、
「無罪と同じ」
ということになるのだ。
日本の法律というものの基本は、
「疑わしきは罰せず」
というものもあり、
「起訴したとして、裁判になって、最終的に無罪になれば、警察、あるいは、検察側の敗北」
ということになり、それこそ、
「冤罪だった」
ということで大きな問題となるだろう。
そして、無罪を勝ち取った弁護士は、
「優秀な弁護士」
ということで、
「正義の味方」
という祭り上げられ方をするに違いない。
弁護士が、
「正義の味方」
というのは、本当は正しくはない。
「依頼人の味方」
ということで、どんなに、
「正義の味方」
をしたとしても、そのせいで、
「依頼人の名誉であったり、利益が守られないということになれば、その弁護士は、最低の弁護士と言われることになるだろう」
何といっても、法廷に出てしまえば、
「弁護士以外の誰も、被告を助けることをしない」
ということになるからだ。
被告人というのが、
「いかに弱い立場か」
ということである。
警察の捜査で、
「物証を事実として固め、検事が公判の維持ができる」
と判断したから起訴したわけで、それを覆すには、それなりの弁護士としての、作戦がなければ、被告人の利益を守るのは難しい。
だから、被告が弁護士席巻で、
「自分がやった」
と告白した場合には、
「無罪というのは難しいだろうから、何とか、裁判官や、裁判員の心証をよくするかということで、家族や同僚などから、どれだけ被告人がいい人なのかということを引き出して、執行猶予を取ることで、何とか最低限の被告人の利益を得ようと考えるのだろう」
つまりは、
「最優先すべきは何なのか?」
ということである。
私立探偵が、裁判にかかわるということはまずない。
かかわるとすれば、
「証人」
という形で法廷に立つということくらいしかないだろう。
なかなか、私立探偵というと、昔の探偵小説のように、
「難解な事件が起こったことで、それを解決するかのように立ち回るということは、ほとんどない」
ということで、せめて。
「浮気調査」
などが、主な仕事と言ってもいいかも知れない。
そういう意味で、私立探偵というと、どうしても、
「何か胡散臭い仕事」
と思わざるを得ないのだが、それでも、まだ昔の探偵小説のイメージがあることで、まだまだ面目を保っているといってもいいだろう。
たまには、
「ストーカーに狙われているので、守ってほしい」
ということもあるだろうが、
どちらにしても、
「警察が介入できない」
ということからきているものだ。
「浮気調査」
というものは、
「最終的には、民法における、親族相続法というものにかかわることになってくる」
ということなので、
「民事」
ということになる。
しかし、警察というものは、
「公務員である」
ということもあり、
「民事不介入が原則」
ということであった。
だから、警察は、浮気調査などできないということになるのだ。
そして、次には、
「ストーカーから身を守る」
というのは、民事ということではないが、
「警察は、事件が起こらないと動かない」
ということで、確かに、今は、
「生活安全課」
というところがあり、
「もし、何かあれば、その電話から連絡があれば、緊急事態として、最優先で対応する」
ということにしているが、身近にいるわけではないので、正直、
「通報があってから駆け付けたとしても、時すでに遅し」
ということになるのも、当たり前のことだといえるだろう。
今回、
「ある男性が殺害された」
という事件が起こったわけだが、その殺された男というのは、
「坂本探偵の知り合いの探偵」
という男だった。
坂本探偵が、身近で人が殺されるというのは、警察を辞めてからなかったことなので、少し動揺していた。
「警察にいれば、殺人事件というのは、日常茶飯事に近かったので、感覚がマヒしていたのだろうか?」
と、今になって、どこからか湧き上がってくるような興奮に、自分でも驚いていた。