悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(前編))
道草を食うことになってしまうのだが、先ほどの観光案内所番屋のスタッフに勧められた「せせらぎ街道(R472)」の紅葉を見に行くことにした。実は、その先には「めいほうスキー場」があり、これまで見たことのない雪のないゲレンデの風景を見たくなった。
郡上八幡の手前で、R156から「せせらぎ街道」に入り、街を迂回するように進んだ。
この街には古い町並みがあり、その中を清流が流れ、「日本名水百選」の第1号に指定された宗祇水(そうぎすい)を始めとする湧水が幾つもあり、水の古都だ。
街の中央を流れる長良川の支流の吉田川にせり出すように建てられた3階建てや4階建ての家々の風景は見事な景観で、その近くには、子供たちが度胸試しで川に飛び込む高さ12mの新橋(しんばし)がある。
これまでに2回ほど、この街をそぞろ歩きをしたことがあるが、何故か、郡上八幡城には行ったことがなかった。次回は訪れたいと思っている。
「せせらぎ街道」は山間を流れる吉田川沿いに標高を上げていき、紅葉が見え始めると、いきなり、山全体がカラフルな紅葉劇場が始まった。それ以降は、紅葉に包まれる街道をさらに標高を上げていった。
その先の道の駅「明宝」(岐阜県郡上市)の駐車場は満車のため、そこに入る右折が込んでいて直進できず、渋滞が起きていた。結局、そこには入らず、「めいほうスキー場」に向かった。
「せせらぎ街道」から外れて、スキー場に続く道に入るとすぐに温泉が見えた。そこには帰路で立ち寄ることに決めた。
何度も行ったことのある「めいほうスキー場」の雪のない時期に訪れるのは初めてだ。
右の車窓に見えてきたのは、スキー場の手前の上り勾配の道沿いに広がる高低差のある幾つかの駐車場で、雪のない状況が新鮮に見えた。
スキーシーズン中は、静岡県から来るので、いつも、センターハウスから遠い駐車場にクルマを停めることになり、スキー靴を履き、スキー板を担ぎ、駐車場内を歩き、センターハウスまでの幾つもの階段を上がったことを思い出した。懐かしい場所だ。
センターハウスに近づいた今、その反対側の駐車場の奥に、周囲からやけに浮き上がる真っ赤に紅葉した1本の木があり、見た瞬間に気に入ってしまい、その写真を何枚も撮った。
センターハウスの山側には雪のないゲレンデが広がっていて、そこに「ジル」を乗り入れた。
誰もいない周囲を見渡した。静かで、ただただ、紅葉が見えるスキー場だった。
その横には、稼働していないクワッドリフトの乗り場があり、反対側には、まだ閉ざしている貸しスキー店の小屋が並んでいた。まもなく始まるシーズンをじっと待っているようだった。
クワッドを2本乗り継ぎ、山頂に立てば、御岳や乗鞍などの眺望があり、麓までの5,000mのロングクルージングが可能なゲレンデで、それが好きで、幾度も来たスキー場だった。
センターハウスを背景に「ジル」を入れて、セルフタイマーで自撮りした後は、センターハウスの駐車場側に回り、そこで簡単で素早くできる昼食を取った。
確か、半世紀くらい前のことだが、雪のゲレンデで食べるカップ麺のCMがTVで流れていたことを記憶しているが、それを思い出した訳ではないが、湯を沸かしてカップ麺を作り、鰯のしょう油味の缶詰を開けた。食後はコーヒーを飲みながら、チーズを食べた。
スキー場のあとは、先ほどの温泉、明宝温泉「湯星館(ゆせいかん)」に向かった。
かつては、スキーを楽しんだ後は、静岡県西部までの帰路が長かったため、入浴する気持ちの余裕がなかったため、一度も漬かったことのない温泉だった。
ぬるぬるした泉質で、自分史上、多分、最高の「ぬるぬる感」だった。手頃な入浴料でゆったりと、まったりと、貴重な体験をすることができた。
ちなみに、同じような表現の「ぬめぬめ感」とは、柔らかくなめらかで、ここまでは同じ内容だが、その感触が「良くないさま」を表すようだ。
既に2時を回っていたので、今日のゴールは福井県の道の駅「九頭竜」(福井県大野市)に決めた。県境を超す山越えはあるが、そこまでは、ざっと80kmほどなので、余裕のあるドライブになる。
温泉で温まった体は、その間に冷えた「ジル」の運転席でも無敵だ。温泉で使ったタオルをダイネットとバンクベッドの間に設けた濡れタオル専用のハンガーに掛けて、冷蔵庫から取り出したコーラを飲みながら、郡上八幡まで下り始めた。
スキー場に向かう時にパスした道の駅「明宝」はまだ混んでいたので、再びパスした。
この旅の数回あとの旅の前に、偶然知ったのは、ネット上の「全国道の駅塗りつぶし同好会」だった。
それは、訪問した道の駅にチェックを入れると、その集計値から、同好会メンバーの中の自分のランキングが分かり、且つ日本地図の中で、訪問した道の駅の周辺が赤く染まり、訪問数が増えるに連れて日本が赤く染まってゆくというもの。
私にとっては、誰かと競うというよりは、「ジル」の旅の記録そのものになるので、バイクや他のクルマでの訪問はカウントしていない。
なので、今日、パスした道の駅「明宝」、それに「せせらぎ街道」からスキー場への分岐点の少し先の道の駅「パスカル清美(きよみ)」(岐阜県高山市)にも足を延ばさず、2ポイントをカウントできなかったことを今でも後悔している。また行かねば、と思う反面、また行けるという気持ちの方が強く、楽しくなる。
なお、スキーを楽しんだ後に、道の駅「明宝」に立ち寄ったことはあるが、「ジル」ではなかったので、カウントしていない。
「せせらぎ街道」を郡上八幡まで下り、そこから、再びR156で長良川沿いに北上を始めた。
この道の西側は両白山地(りょうはくさんち)で、東側は飛騨高地、その山間を抜けるルートで、対岸に県道が走り、第三セクターの長良川鉄道も、さらには東海北陸自動車道まで走っている。
R156は岐阜市から郡上市や白川村を経由して富山県高岡市まで続き、中央分水嶺を横切る幹線道路で、その南側では伊勢湾に続く長良川沿いに、北側は富山県に流れ込む庄川沿いに走っている。
ちなみに、岐阜県と富山県にまたがる山間部は、庄川の谷の斜面を削って道を付けた区間で、かつては道幅が狭く大変危険ないわゆる「酷道」だったため、路線番号にかけて「イチコロ」と揶揄されたそうな。
スムースなクルマの流れだったR156を白鳥で左折し、すぐに始まるのはR158のループ橋、ぐるぐると上り始めると、もう両白山地(加越山地)を上り始めた気がする。白鳥以西のR158は福井市までつながる旧越前美濃街道だ。
Uターン気味に、白鳥西ICから中部縦貫自動車道の無料区間に入ると、急勾配で左右に大きくカーブする8の字のような油坂第1・2・3トンネルを抜けながら、さらに高度を稼いだ。
ここまで、ぐるぐると回ったことで、感覚的に東西南北のどこに向かっているのか分からなくなったが、直線の越美(えつみ)トンネルに入ると西の方角に向かっていることを認識した。