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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(前編))

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 灯台の海側に立って、白波が起きている海と水平線を長い間、眺めていた。
 灯台から園地に戻ってから、「ジル」の中で、簡単な昼食を取った。

 園地の中に、京丹後市内の観光名所の写真が並んでいて、そこに「琴引浜(ことひきはま)」の写真があった。
 そこは確か、汚れのないきれいな砂の砂浜で、踏むとキュッキュッと音がする「鳴き砂」で有名な砂浜だと、中学校の理科の時間に教わった記憶がある。
 それまで、「琴引浜」の場所を知らなかったが、今、行こう思えば行ける丹後半島の日本海側の付け根あたりで、R178で約20kmの距離しかない。行ってみることにした。

 R178沿いに、思いの外、小さな「琴引浜入口」の看板が出ていたので、右折して、その道に入っていった。R178を西から走って来るならば、大きな看板が見えたのだが、東側からは何故か小さな看板だった。
 入った道は観光地に向かう道とは思えないほどの道幅で、それでも進んでゆくと、また看板があり、それに従って左側の道に入ったところ、そこは舗装道路とは思えない道を上り、次は野球グランドとその幾つかの物置が並ぶ間を走り、そして下り坂が始まると、車高の高い「ジル」の屋根や両側が木の枝に接触しそうな感じで、最後は、取って付けた感じのような小屋が見え、それは駐車場の料金徴収所だった。
 この道は小屋からまだ先の海辺近くまで続いているように見えたが、「ジル」でずんずん入って行くのはちょっと大変そうで、多分、小屋の近くに停めることになるのだろう。そうなると、砂浜までは、かなりの距離がありそうだ。
 私は砂浜に下りて、砂を踏んでキュッキュッと鳴く音を聞きたいだけなのだが、それで駐車料金が1,000円もするのは、かなりもったいない。
 この地点は「琴引浜」の東端に位置するので、もう少し西に行ってみることにした。

 そして、料金小屋の人に、ここから後ろ側でのUターンは難しいので、一旦は駐車場に入るも、すぐに出てゆくと説明して、ぐるっと回って、R178まで戻り、西に向かった。

 再び、見落としそうなサイズの「琴引浜 入口」の看板があり、右折すると、先ほどの道と同様に、センターラインのない、歩道もない路地が海側に続いていた。暫く走ると、「この先 年間有料駐車場」と書かれた看板があり、さらに進むと、倉庫の前に小さな机が出ていて、そこが料金所だった。
 その前で一旦停止して、駐車料金を訊いたところ、ここも1,000円だった。
 私の予定を説明すると、砂浜に下りるならば1,000円、駐車場に停めて砂浜の写真を撮るくらいならば無料とのことで、無料のコースを選択した。

 「琴引浜」の汚れのない砂はそもそも、自然が造ったものだが、それを人の力でキープしているとのことで、駐車料金は、鳴き砂の維持・管理のための地元に人の清掃費用に充てられている。
 たとえば、強い風の翌日はかなりのゴミが打ち上げられ、その回収や清掃が必要になり、1台に付き1,000円の駐車料金を徴収しているとのことだった。
 理解できるものの、砂浜には行かず、駐車場から砂浜の写真だけを撮った。
 ここまでクルマでなく、歩いて来れば無料なのか? それを聞くことを忘れていたことに、後で気付いた。

 「琴引浜」を後にして、R178をさらに西に向かうと、間もなく「離湖(はなれこ)」の湖岸を走り、山間に入って行った。
 走行中は気付かなかったが、国道の横に「中央子午線塔(しごせんとう)」が建っていたようだ。それは、瀬戸内海側の明石の真北で、東経135度の日本の子午線の存在を示すモニュメントだった。
 少しだけ、日本の子午線について調べた結果を以下に記す。

 先ず「子午線」とは、地球の赤道に直角に交差する両極を結ぶ曲線で、いわゆる東経や西経の経線で、「子」の方角(北)から「午(うま)」の方角(南)に伸びる線なので、「子午線」と呼ばれる。
 そして、日本標準時は、春分や秋分の日に東京で太陽が南中する瞬間で決定すれば、経済的にも都合がよいと思うのだが、明石市を通る東経135度が選ばれた。その理由は、地球の一周360度を24時間で割ると15度となり、東経135度は15度で割り切れるため、世界の国々と日本の時差が1時間単位になり、ちょうど良いからだ。
 ちなみに、日本に対しインドの時差は3時間30分遅れという珍しい時差だ。仕事をしていた頃、インドには数回出張したが、その都度、私の腕時計を3時間30分の調整をやっていた。
 東経135度の子午線のある12市には、それを表示する標識やモニュメントが建っていることも初めて知った。

 R178をさらに進むと、道の駅「くみはまSANKAIKAN」(京都府京丹後市)が見えてきたので立ち寄った。
 この駅舎のフルーツや野菜の売り場面積が広く、地元の農産物の集荷・販売所のような印象だった。それに釣られた訳ではないが、美味しそうな梨を買った。好みのジビエの鹿肉があったので、焼き肉用に購入した。
 ショップのスタッフに、城崎(きのさき)温泉までの所要時間を訊くと、峠を越えれば30分くらいとのこと。峠道と聞けば、これまでの経験上、幅員の狭い道が多いため、多少の不安を感じたが、地元に人が言うならばと、その道で城崎に向かうことに決めた。
 ここまでのR178からは久美浜湾は見えなかったが、R178より少し高い場所にあるこの道の駅からは、久美浜湾の一部が見えた。

 道の駅を後にして、少し走ったあたりで、久美浜湾沿いの道になった。ところが、湾口は見えず、湖のような様相だった。後で調べたところ、この久美浜湾は、湾と称しているが、小天橋(しょうてんきょう)と呼ばれる砂州によって日本海から隔てられた汽水性の潟湖だと知った。

 湖越に見えた山は兜山(かぶとやま)で、その頂上には展望台があるとのこと。ロードマップなどで調べたところ、軽自動車ならば行けそうだが「ジル」では上れないだろう。次回の旅では、この展望台に歩いて登って、久美浜湾を俯瞰したいものだ。
 加えて、小天橋にも行って、その海岸側および湖側を眺めながら、この砂州に住んでいる人たちの生活を垣間見たいとも思った。

 ここまで走ってきたR178から府道に入り、久美浜の町を抜け、先ほどの道の駅のスタッフから教えてもらった峠道に入った。センターラインのないジグザグ道で、京都府から県境の三原峠を経て、兵庫県豊岡市に入り、走っている道は県道に変わった。
 峠からの下りは、上りほどの厳しいカーブや勾配はなくなったが、山間の道が続き、小さな峠を越したあとは円岡川(まるおかがわ)に架かる城崎大橋を渡り北上し、すぐの踏切を渡ると、JR山陰本線の城崎温泉駅の前を通過した。

 そこから、町並みが一変し、駅通りには飲食店や土産物店が続き、観光客の往来や賑わいが始まった。この先が温泉街なのだろう。
 城崎温泉といえば、志賀直哉の短編小説「城の崎にて」を思い出すが、確か途中で、つまらないと思ったのか中断した記憶がある。それより、大谿川(おおたにがわ)の左右の畔の道沿いの柳の木が印象的で、旅館や温泉が立ち並ぶ風景の写真を思い出した。