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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
novelistID. 69613
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑭西日本の旅(山陰(前編))

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 それは京都人がいう「鴨川の等間隔の法則」がここにも適用するのか? 鴨川畔はカップルたちのデートスポットで、両側のカップルとのちょうど間に、他のカップルが邪魔にならないように座ることが繰り返されるが、自分たちの横に他のカップルが座ると、居心地のいい空間を確保するためか、じわじわと右に左に移動するとのことだ。面白い。
 ここでは、釣り糸が隣と絡まないようにするためなのだろう。

 これまでの「キャンピングカーの旅」で、キャンピングカーで旅をしてる人が釣り糸を垂らしているのを見たことはなかったが、私自身は釣りをやらないので、気が付かなかっただけかもしれない。そういう目で見るならば、釣り人はいたのかもしれない。
 車窓風景を、これまでと違った目で見ることで、別の景色が見え始めるやもしれない。その「目」とは「観察眼」で、繊細な気持ちで「探す旅」を始めてみることにした。

 フェリーターミナルを後にして、R8には戻らず湾岸の道を走ると、港湾らしい幾つものストックヤードが続いた。
 先ずは、数多くのトレーラーの貨物車が並ぶ広い駐車場があり、それらはフェリーに積み込まれ、北海道に運ばれるのだろう。
 恥ずかしい話だが、並んでいる被牽引車の正式名称を知らなかったので調べたところ、「トレーラー」だった。これまで、牽引車と非牽引車をまとめて「トレーラー」と思っていたが間違いだった。次に、牽引車の名称は調べたところ、色々な呼び名があったが私には、その中でも「トラクターヘッド」が的確な感じがした。

 トレーラーの駐車場の南側には、バルク船(ばら積み貨物船)から港湾荷役機械のアンローダで陸揚げされたパルプ材や石炭の山がフェンス越しに幾つも見えた。
 最後は、ガントリークレーンが見えたので、そこには広いコンテナヤードがあるのだろう。

 私の住んでいる静岡県は太平洋に面して東西に長く、西から遠州灘、駿河湾、相模湾の海域があり、そこには幾つもの港があるが、これまで、じっくりと見たことはなかった。これこそ、灯台下暗しなのだが、暇なときにでも「ジル」で、近くの港に行って、貨物の動きや獲れた魚の運搬などを観察してみよう。

 「ジル」は金ヶ崎城(かながさきじょう:別名敦賀城)跡のある金ヶ崎公園の下の金ヶ崎臨港トンネルに入って進んだ。
 そこを抜けて敦賀市街に入ったところにある赤レンガ倉庫は、かつて訪れたことがあるので、今回は、「ジル」に乗ったままの車窓風景のひとつになった。

 ここは、「金ヶ崎の退き口(かねがさきののきくち)」で歴史的に有名な場所だ。
 戦国時代、織田信長が朝倉氏の支城だった金ヶ崎城を攻めた戦で、お市が信長に、夫の浅井長政の裏切りを知らせたことで、信長は退却するしかないと判断し、その時に殿(しんがり)を務めたのが木下藤吉郎(後の豊富秀吉)だった。その殿には徳川家康も加わっていたとの説もあり。

 私の古い話だが、中学校や高校で学ぶ科目の中で「社会」、とりわけ「地理」が好きだった一方、漢字の多い「歴史」は苦手だった。
 セカンドライフの今、キャンピングカーで日本中を旅していると自然に、地理的な視点で旅先を見てしまうが、そこには城郭や史跡があり、道をひとつとっても、そこには歴史があり、歴史を作ったのは道であり、そういうことから、歴史にも興味が湧いてきた。
 そのため、私が見ているTV番組は今、ドラマ、ニュース、旅番組、そして歴史ものの順になっているが、チャンバラの時代劇は対象外だ。

 敦賀は、古くは北前船の寄港地で栄え、その後は、大陸との貿易港でもあり、私見だが、当時は日本の表日本は日本海側だった気がする。その、人やものが行き交う港町、敦賀市街に入った。
 「気比神宮(けひじんぐう)」の、ひときわ目立つ大鳥居が見えてきた。それは京都の方角を向いているという。かつて参拝したことがあるため、その正面をかすめて、「気比の松原(けひのまつばら)」に向かった。

 佐賀県唐津市の「虹の松原」、静岡市清水区の「三保の松原」に並び、「日本三大松原」のひとつとされる「気比の松原」は国の名勝に指定され、若狭湾国定公園の一部になっている。
 ついでに、「日本五大松原」を調べたところ、「日本三大松原」に京都府宮津市の「天橋立」と秋田市の「風の松原」が加わるとのこと。この「天橋立」は「日本三景」のひとつでもある。

 長さ約1.5kmの「気比の松原」のほぼ中央の駐車場に「ジル」を停めて、砂浜まで下りて行った。
 渚では、ちゃぷちゃぷと波が繰り返し、曇り空だったためか、白砂青松とはいかなかったが、弧を描く砂浜に松が寄り添っているように思えた。 
 ここの松原について少し調べたところ、平均樹齢は約200年の17,000本の赤松と黒松が並び、日本の海岸の松林は黒松が多いが、ここでは赤松が85%を占めているとのことだった。
 ふと、夏の強い日差しの中で「気比の松原」を見たくなった。また来なくては。
 それから、道の駅「河野」から見えた敦賀半島の北端の「立石岬灯台」に向かって、敦賀湾沿いの県道を北上した。

 この紀行文を執筆していた時にテレビで偶然見たのは、敦賀を旅した放送回のNHKの旅番組「小さな旅」だった。
 私の「キャンピングカーの旅」は、主に車窓風景を楽しむ旅だが、この「小さな旅」では、この回だけかもしれないが、観光地には行かず、どちらかと言えば、そこで暮らす人たちを取材していて、テーマは「朧昆布(おぼろこんぶ)」、「敦賀ラーメン」、「水先案内」の3つが取り上げられていた。

 敦賀名物の「朧昆布」の店に訪れ、北海道産の昆布を使うとか、職人の熟練の手すき作業を見学、8割の全国シェアを持つとか、その店の夫婦についての掘り下げもあった。
 二つ目は、豚骨に鶏ガラを煮込んだ濃厚な味の名物「敦賀ラーメン」の屋台を訪れ、そこの主人や客へのインタビューから、敦賀の人たちのソールフードとして紹介されていた。
 最後は、大きな船の船長の経験を持つ高齢男性の職業の「水先案内」で、巨大な船を安全に着岸させるためにタグボートに指示を出すシーンが流れた。着岸速度は秒速8cmが求められるなどの慎重さが伝わってきた。
 以上から、いち個人の旅で、NHKの看板を背負った番組のような取材旅はできるはずもないと落胆するも、少しはそこに近付きたいと感心させられた。

 今、敦賀半島の北端の「立石岬灯台」に向かうために、半島の東側の県道を北上している。
 湾越しに見える対岸は海岸段丘の崖のはずだが、太陽光が当たる前の時間帯のため陰になっていて、残念ながら、鮮明には見えなかった。

 半島の先端に近い場所に突然に出現したのは「敦賀原発」で、道に面している部分の敷地の長さは200mくらいだが、多分、奥行きが長いのだろう。あとで調べたところ、原発は左右の山に囲まれた谷にあり、奥行きは間口の5倍はあった。その敦賀原発に隣接しているのは新型転換炉「ふげん」(廃炉)だった。

 その前を通過してトンネルを抜けるとすぐに立石漁港に到着した。道は行き止まりだ。そこには広いスペースがあり、「ジル」を駐車した。