自殺菌がかかわる犯罪
というのが、
「エネルギー改革」
というものによって、すっかりさびれたことで、鉄道もすっかり赤字路線を抱えてしまった。
そもそも、
「地元企業」
ということではなく、全国統一の、何といっても、
「国有」
ということなので、政府や中央である本社の意向が絡むことになり、しかも、それが全国的な問題ということになると、問題の累積赤字というものを、どうすることもできなくなってしまったということであろう。
それでも、都心部への鉄道を何とか敷くようになり、全国への玄関口として都心部の駅が賑やかになることで、何とか、経営ができているということであろう。
私鉄の方は、
「国鉄がさびれてきた」
ということから、余計に、地元での発言力を増すようになり、
「国鉄の衰退と反比例」
ということになり、
「あたかも、地元の鉄道を一手に握る」
というくらいになったのだ。
それは、
「どの産業よりも、さらに群を抜いている」
ということで、
「県や市の政治にまで口を出すようになった」
ということである。
だから、
「あの県は、他の全国にある大都市とは、一風変わった土地柄なんだ」
と言われるようになったのだ。
だが、時代は流れ、
「平成になる」
というその前後に、
「国有の民営化」
ということで、
「三公社が、民間企業に生まれ変わる」
ということが行われた。
特に国鉄のように、
「国が引き起こした累積赤字を、民間に丸投げする」
という形のものもあり、体のいい、
「政府における、リストラとしての、民営化」
ということであった。
しかも、その国鉄が、JRとなって生まれ変わった時には、
「国鉄というものは、今までの、全国統一」
ということではなく、
「各地方で、それぞれの会社が生まれる」
ということになったのだ。
だから、
「JR西日本」
「JR東海」
「JR九州」
などと言った形である。
それこそ、明治に、
「国鉄として国営化される前の、私鉄時代」
のようなものであった。
それからというもの、時代が、
「バブル崩壊」
という未曽有の危機を迎えるにあたって、ただでさえ累積赤字があるということで、生まれ変わった株式会社であることから、
「営利を目的とする」
という大前提があること、
そして、
「国鉄時代の累積赤字を少しでも減らすこと」
という命題があったが、そう簡単に何とかできるわけではない。
「政府が、何十年の年月で、解消しようと思った」
いや、解消どころか、
「その考えの甘さ」
というものから、赤字を膨れ上がらせた責任を棚に上げる形で、結局は、
「民営化させた」
ということになるのだ。
いくら、
「営利の株式会社に生まれ変わり、再建を目指す」
と言っても、うまくいくものでもない。
何といっても、
「国鉄時代には悪名高き、無料パスというものを社員全員が所持していた」
というくらいだからである。
だから、
「JR」
という
「私鉄ではない民間の新規参入した鉄道会社」
というだけで、やっていることは、
「国鉄時代と、何ら変わりない」
ということになるのだろう。
しかも、その目的が、
「営利目的」
ということで、
「国鉄時代の悪いところばかりが残ってしまった」
ということになるのではないだろうか?
事故が起こった時も、やっていることは、
「本当であれば、電車のダイアを早急に元に戻し、乗客に迷惑を掛けないようにしないといけない」
というのに、
「上司への報告を優先して、本部との電話で、指示を仰ぐために、電車を遅らせ、さらには、運休する電車もたくさん作ることで、余計な混乱を招くということが平気で行われていた」
ということであった。
それこそが、
「国民のためにまったく有効な手立てを尽くしていない」
というどころか、
「自分たちのやり方に、緊急事態を合わせる」
という、それこそ、
「公務員気質」
というものを、そのまま用いているのだ。
だから、
「地震などの災害があり、帰宅難民が出た時、最終電車が出た後いつも閉め切っているということで、本来なら臨機応変に対応しなければいけないはずなのに、前例がないという理由で、寒い中、市民を表に放り出したということで、国会で問題となったりして、今では、電車をホテル代わりに使う」
ということで地域貢献するようになった。
そもそも、それくらいのことなら簡単にできるはずではないか。それをしないということは、やはり、
「公務員の時代と変わっていない」
ということであろう。
これが、すでに国鉄からJRになって、何と、二十年以上も経っているのにである。
まさに、
「信じられない暴挙だ」
と言ってもいいだろう。
そんな状態だから、人身事故が一度発生すると、連鎖反応を起こすのだった。
「今までに、何度、一週間に複数回の人身事故があったことか?」
ということであったり。
「連日発生など、毎度のことで、数日続くということさえあった」
というくらいである。
さらに、
「一日に、同じ県内で、三件の人身事故があった」
ということもあった。
最初に起こった路線は、最低でも、事故発生から、4,5時間は、
「事故の調べ」
などということで、実際に
「運転見合わせが解除されるまでにかかる」
ということで、そうなると、二件目以降の事故は、
「別の路線」
ということになる。
つまり、
「同一県の、三つの路線で、一日の間に事故が発生した」
ということになるのだ。
それを考えると、
「どれほど、体制がなってないか?」
ということになるというのである。
最初にびっくりしたのは、
「人身事故が発生した」
ということで、客が騒いでいるところを、駅員が説明しているところに出くわした時のことであった。
客とすれば、文句をいうのは当然のことである。
「先ほど、人身事故が発生しまして」
と言って、ベテランと思しき駅員が、客に説明していたのだが、それを聴いていた客が、今度は、別の若い駅員に話しかけている。
息も絶え絶えの様子で、さっきまでベテラン駅員に対して文句を言っていたということが分かりそうなくらいの勢いであった。
たぶん、先輩駅員の対応が、あまりにも落ち着いていて、却って、その落ち着きが、
「事務的だ」
ということで、客を怒らせたのだろう、
ただ、こういう場合の対応の正解というのが、どういうものなのかということが分からない。実際には、
「正解というのはないのではないだろうか?」
つまりは、その時々の臨機応変な対応を、今までの経験から悟っているからこそ、ベテランということになるのだろう。
そして、この場合の正解と言われるのは、本当であれば、
「客を納得させること」
ということになるのだろうが、実際に、人身事故は起こってしまい、その客は確実に、確実に、
「被害を被っている」
ということなので、何を言っても、その怒りを抑えることは不可能だろう。
その際に、
「これ以上、怒りを増幅させない」
ということにするのか、
「他の客を巻き込まないようにする」
作品名:自殺菌がかかわる犯罪 作家名:森本晃次