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死ぬまで消えない十字架

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 ということであった。
 もっとも、そんな変なプライドがあるからこそ、
「納得できないと理解できない」
 という、他の人から見れば、
「凝り固まったような考え方しかできない」
 ということになるのだろう。
 しかし、そのプライドが、自分の中だけで完結できていれば、それで問題ないのであるが、
「他の生徒に対して、優越感を感じるようになると、余計に、プライドが邪魔をして、自分が一番偉い」
 という考えをもってしまうのだった。
 だから、
「優越感だけで人と話をするようになると、自分がまわりに対して、上から目線であるということに気づかない」
 それは、相手が小学生であれば、その態度を素直に受け取ることで、相手も、自分の考えに逆らうことができないと思ってしまうのだろう。
 そうなると、
「交わることのない平行線」
 ということだ。
 まわりから見れば、
「これほど、わがままな生徒はいない」
 と田島少年のことを思うだろう。
 一人孤立してしまっているのに、口では、憎まれ口をいう。
 確かに頭はいいのだが、相手を論破できるほどの話術があるわけでもない。
 しかも、小学生で、相手を論破できるような話術を持っていたとしても、それは、却って苛めの対象になるだろう。
 結果、
「論破できようができまいが、結果は同じで、どんどん孤立の道を歩む」
 ということにしかならないということであった。
 それが、その頃の、田島少年であった。
 田島少年は、小学生の頃、いじめられっ子であった。だが、それも、中学に入るまでに収まってきて、虐められることはなくなった。
 当時の、
「苛め」
 というのは、小学生でもあったのだろうが、田島少年がいじめられていたことに、
「理由があった」
 ということで、実際に、その苛めの理由というものがなくなってくると、苛めもなくなるというものである。
 しかし、
「本当の苛め」
 というものは、
「決定的な理由があるわけではなく、問題は自分にあるのだった。相手に理由があって、その理由がなくなれば、虐める方も、苛めを辞める」
 ということになるのではないだろうか?
 ただ、そのかわり、田島は孤立の道を選ぶことにした。
 その頃に家庭の問題などがあり、半分は誤解もあったのだが、次第に、田島が、
「素行が悪い」
 ということになり、まわりの大人からの誹謗中傷のようなもの、そして、無言の圧などがあり、結局、高校を退学して、今に至るという、ある意味、変わり種の警察官だといえるのではないだろうか?

                 死体発見

 田島巡査は、城址公園でのウワサというものに対して、最初に聞いた時に感じたのは、
「半信半疑だな」
 ということであった。
 田島巡査は、
「ひらめき」
 ということに関しては、結構鋭いと自分でも思っていた。
 そして、これに関しては、まわりも、田島の直観というものには、敬意を表するところがあったのだ。
 しかし、警察官というもの、あまり直観に頼ってしまうというのも危険なもので、
「地道な捜査」
 というものが、実を結ぶということを理解しなければいけないというのを、田島がどこまで分かっているのか?
 ということであった。
 それは、まるで、
「将棋」
 のように感じられた。
「将棋において、一番隙のない布陣は何か?」
 と聞かされた時に答えることとしての一番正解と言われているのは、
「最初に並べた布陣なんだ」
 ということであった。
 そして、
「一手さすごとに、そこに隙が生まれる」
 と言われると、
「なるほど、確かに、あの布陣には、それなりに意味があると思えるのも当たり前というものだ」
 と考えた。
 ただ、これは、一種の、
「減算法」
 と、
「加算法」
 という考え方に似ているといえるだろう。
 警察の捜査というのは、確かに、起こった事実から、
「マニュアルに則った初動捜査を行うことで、そこで出てきた事実から、さらなる捜査方針を決めていく」
 ということがその基礎と言ってもいいだろう。
 だから、まずは、目の前で起こったこと、
 例えば殺人であれば、そこから鑑識などによってもたらされる事実、そして、初動捜査からもたらされるものというのがある。
 それが、ちょうど、今回起こった事件で、立証されるのだと、田島巡査は思うのだった。
 普段であれば、
「一人の巡査ごとき」
 が、捜査本部に入ることはできないだろうが、今回は、その第一発見者というのが、
「田島巡査だ」
 ということだったので、捜査陣も、田島巡査を無視することはできなかった。
 確かに、警察官相手ではあるが、その先入観での捜査は禁物ということで、第一発見者が、ある意味、身内というのは、捜査員としても、実にやりにくいことであろう。
 今回の事件が発生したのは、深夜時間帯から、早朝の掃除の時間に差し掛かる少し前くらいであった。
 早朝の掃除に入る時間として、大体六時くらいというのが、いつもの決まりだった。
 といっても、相手はあくまでも、ボランティア集団ということで、実際には、他に仕事も持っているという人が多い。
 だから、掃除を行うとしても、まずは、
「本業中心」
 ということが最優先ということなので、なかなか人が集まらないというのも無理もないことで、そのため、
「早朝の警官と掃除の入れ替わり」
 という時間も、最初はある程度決めていたが、次第に曖昧になってくるのであった。
 だから、この日も、田島巡査が、早朝まで警備にあたっていたわけだが、時間的には、
「すでに、夜が明ける時間」
 というくらいにまで差し掛かっていた。
 まだ、バスの始発の時間までには時間があったが、電車の方の始発はすでに動いていた。
 地下道はまだ開いていない時間帯で、地上の歩道を歩く人も、少しずつ見えてきて、通勤の人間と、ジョギングや散歩の人間とが、重なる時間帯だと言ってもいいかも知れない。
 車もまだまだ少ない。
「ひょっとすると、これくらいの時間が一番車の少ない時間帯なのかも知れない」
 と感じていた。
 トラックも、そんなにいない。自家用車が通勤で出てくるには早すぎる。
 ということになると、本来なら、夜中から早朝にかけては、一番多いのは、タクシーなのではないだろうか?
 しかし、
「タクシーというのは、大体、早朝の五時くらいというのが、深夜勤務と昼の勤務の人との入れ替わりの時間だ」
 ということを聴いたことがあった。
 つまり、タクシーは、夜間の人が皆営業所に引き上げて、朝から勤務の人が、そろそろ出てくるという時間で、一番、少ないタイミングの時間帯だと言ってもいいだろう。
 さらに、それが、日の出と重なると、余計に、
「車の少なさ」
 というものを感じさせるのであった。
 実際に季節によっては、朝は、かすみがかかっている時間帯もある。それが、まるで、
「スターダスト」
 を見せているようで、きれいに感じさせることもあるが、逆に湿気を帯びさせる時期であれば、余計な疲れを呼び起こすこともある。
 それが、
「これから勤務」
 という時でもそうなのだから、余計に、けだるさを感じさせるのだ。