小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

死ぬまで消えない十字架

INDEX|6ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

 という何かの弱みでも握っていないとうまくいかないことに違いない。
 そんな田島巡査は、交番勤務三年目になっていたのだが、まだまだ警察官として認められるわけではなかった。
 ただ、それは、
「どうしても、警察のような公務員であれば、昔からの、年功序列なるものは、厳格に存在している」
 ということになり、経験でもなければ、ある程度の年数がいかない限りは、
「一人前ということで認められない」
 というのも当たり前ということで、一般の会社のような、
「業績」
 という形で、ハッキリ現れるわけではない警察官というのは、それこそ、
「昇進試験」
 なるものに合格し、昇進の道を歩まない限りは、その上下関係に変化がないということになるのだ。
 だから、逆に、
「昇進試験」
 というれっきとした結果が求まることで、
「その人は昇進し、昇進すれば、年齢は関係ない」
 ということになる。
 しかも、警察というところは、絶対的な、
「階級社会だ」
 と言ってもいいだろう。
 完全に階級によって、捜査権であったり、権力という力がモノをいうのだ。だから、普通のサラリーマンの肩書よりも、刑事の階級の方が、ハッキリしていると言ってもいいだろう。
「警察官になったからには、昇進して、上にいくんだ」
 ということをあからさまに考えている人も多い。
 逆にそれくらいの考えでなければ、
「何のために警察に入ったのだ?」
 ということになる。
 よくテレビドラマなどで、警察組織を叩くようなドラマがあるが、どこまでが、本当のことで、どこからが、誇張しているのかということは分からないが、
「火のないところに煙が出る」
 ということもないので、ある程度の信憑性はあるだろう。
 だからと言って、
「すべてが本当のことだ」
 というのは、あまりにも言いすぎというもので、結局は、
「中に入らないと分からない」
 ということになるのだろうが、どうしても、警察などというところは、
「まわりから見えないように、ベールに包まれている」
 と言ってもいいだろう。
 田島刑事は、そんな警察組織というものを、だいぶ分かってきた気がした。入ってから三年の間にここまで分かったというのは、
「分かりすぎ」
 なのか、それとも、
「まだまだ分かっていない」
 ということになるのかを分かるはずもない、それが、少し自分としては、不安に感じられるところであった。
 そんな彼も、
「城址公園のウワサ」
 というものは知っていた。
 しかし、そんなウワサに彼は、彼なりに違和感を覚えていたのだった。
 その一つとして、
「そのウワサの出所がハッキリしない」
 ということであった。
「どこかの組織から漏れてきたものなのか」
 それとも、
「警察内部から、出てきたものなのか?」
 あるいは、
「街でまことしやかにささやかれていることなのか?」
 ということが分からないのだ。
 それぞれに、
「どれも、あり得ることだ」
 と思うと、その逆に、
「決定的な証拠のようなものが、どれにもない」
 ということで、どうしても警察というところにいると、考え方というものが、
「疑わしきは罰せず」
 という発想から、
「信憑性がないと、信じられない」
 ということになるのであった。
 それを考えると、
「出所はハッキリとしないウワサ」
 ということで、そこに違和感を覚えるのだった。
 そしてもう一つは、
「薬物を扱う」
 ということが、そう簡単に表に漏れるのか?
 ということであった。
 もし、漏れているとすれば、そのウワサを少なくとも組織は消そうとするだろう。
 組織には関係ないとしても、変なところでウワサになって、警察が妙な動きをすると、他の場所で取引をしようとしていたとしても、警察の目が光っていることで、身動きができないということになるだろう。
 それを考えると、
「変なウワサが出ている以上、ほとぼりが冷めるまで、動くことができない」
 ということになるか?
「ウワサの元を探し出し、それを潰そうとするか?」
 ということになる。
 しかし、もしウワサというものを、どこかの組織が、故意にやっているとすれば、自分たち組織としては由々しき問題であり、
「今、動かずにやり過ごすことはできるが、いつまた、その組織が動き出しかねない」
 ということになる。
 自分たちが、その組織を確かめて、対応を考えないと、後々ややこしいことになり、
「手遅れだ」
 ということにならないためにも、少なくとも、ウワサの正体を突き止める必要があるというものであろう。
 そう考えると、ウワサというものに、少し変化があってもいいはずなのに、相変わらず、「信憑性が疑わしいウワサ」
 というだけで、
「進展も後退もしない」
 という状況であった。
 それを考えると、
「何かがおかしい」
 と田島巡査は考えるのだった。
「もしかすると、このウワサというのは、どこかの誰かが、故意に流しているものではないか?」
 という考えであり、しかも、その元になっているものは、
「ウワサを流されると困る」
 という、実際に、麻薬取引をやっていると言われているところだったりするということではないだろうか?
何かを隠す時、
「一番目立つところが、一番発見されにくい」
 という言葉もあるではないか?
「灯台下暗し」
 という言葉もあり、
「いつも目にしているものに、何か大切なものが隠れていても、意識することもない状態で通り過ぎる」
 ということになるのである。
 また、この発想は、
「石ころの心理」
 というものではないか?
 と、田島巡査は考えていた。
 田島巡査というのは、いつも、
「理屈を考えて、その理屈を自分が納得できないと、動くことができない」
 と考える方であった。
 だから、小学生の頃、算数の最初。つまり、
「基礎の基礎」
 というものを理解しようとして、できるわけもなく、そこだけにこだわったおかげで、
「最初から躓いた」
 ということになり、ずっと、算数は、0点だった。
 何しろ、最初から基礎というものが分かっていないのだから、応用が利くわけはないのだった。
 しかし、それも、ある時期をきっかけに、基礎が理解できるようになってきた。
 そのおかげで、どんどん応用が利くようになり、そして、利いてくる応用が楽しくなってきたのだから、あっという間に、他の人のレベルに追い付き、それでは満足できず、さらに先の勉強をするようになったのだ。
 だから、小学3年生くらいまでは、
「どうしようもない劣等生」
 ということで、先生も、最初こそ、
「何とかしないといけない」
 と思っていたが、
「突き放そうかどうしようか?」
 と悩んでいて、最後通牒を突きつけようとしたその頃に、急に理解できるようになったということであった。
 実は、田島巡査のような例は珍しいわけではない。どれくらいの頻度で、そんな生徒がいるのかということまでは分からないが、
「一定数存在している」
 ということは、教育者として、現場に何年もいれば、分かってくるというものであった。
 そんな生徒の一人である田島少年であったが、彼の悪いところは、
「変なプライドを持っている」