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対となる能力

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 でありながら、藩というものがあり、藩には藩主がいて、藩主が、自分の国を治めている。
 つまり、今の近代国家における、自治街というものよりも、力が強いと言ってもいいだろう。
 だから、幕府は、藩の力を恐れ、幕府の政策として、戦国の世にならないように、という建前で、藩を押さえつけようとする。
 それは領民に対しても同じことで、
「藩主である大名を押さえつけるために、最初に行ったのは、難癖をつけて、大名を改易に追い込む」
 ということであった。
 まだまだ、幕府にとって、脅威になりかねないと思われる大名がいることから、改易させるというのは、当たり前のように行われた。
 それが、
「三河以来の譜代大名」
 であったり、さらには、
「将軍家筋」
 ということであっても、何かあれば、容赦はしない。
 それにより、すっかり大名も様変わりして、大名も、
「改易させられてはかなわない」
 ということで、逆らうという気が起きなくなったということである。
 しかし、改易による問題が露呈した。
 というのは、
「改易を行いすぎて、浪人が街に溢れた」
 ということである。
 つまり、今でいえば、
「会社を潰しすぎて、失業者が増えてしまった」
 ということである。
 浪人が増えると、当然治安が悪くなる。
 浪人と言えども、食わなければ生きていけないわけで、それらが、やくざな組織を作ったり、盗賊のようになってしまったりということになり、幕府を悩ませた。
 かといって、天下泰平の世になったのだから、浪人を雇いこむという藩があるわけもなく、幕府としても、社会問題となってしまったのだ。
 それでも、幕府は、藩を締め付ける。
 反乱を起こさないようにということで、
「一国一城令」
 というものを発したり、
「参勤交代」
 というものを義務付け、金を使わせるということをしたりしたのだった。
 これは、
「幕府と藩」
 という関係においては、完全に、
「幕府の独裁政治」
 ということになるのだった。
 そして、幕府は、経済政策として、その基礎になるものが、
「年貢」
 ということで、その年貢を納めるのが、農民だということで、
「農民は生かさず殺さず」
 ということで、
「何も考えずに、農業をさせる」
 ということが当たり前ということであった。
 そこで考えられたのが、
「士農工商」
 という身分制度である。
 ここでいう身分による優劣関係というものが、表向きには、問題となっているが、そもそも、
「士農工商」
 という考え方は、
「武士に生まれたものは死ぬまで武士。農民に生まれれば死ぬまで農民」
 ということで、いわゆる、
「職業選択の自由」
 というものを奪ったのである。
 これは、あくまでも、
「年貢政策の一環」
 ということで、
「百姓が減ってしまうと、年貢が減るのは当たり前」
 ということになり、
「農民を、その土地にしばりつけておく」
 ということが基本だということになるのである。
 確かに、封建制度というのは、
「政治政策としては、建前は理屈にはかなっているが、国家体制としては、果たしていかがなものか?」
 ということを考えると、
「これほど無理のあるものではない」
 といえるだろう。
 だが、これはあくまでも、今の、
「民主主義」
 という考え方からすれば、
「無体なことだ」
 といえるだろう。
 しかし、これが、大日本帝国の時代であれば、また見方も違ってくる。
 そもそも、明治維新というものは、
「徳川幕府というものに虐げられている藩や庶民が立ち上がって起こった」
 ということではない。
 あくまでも、
「黒船来航」
 というものから、開国することによって、最初は、
「尊王攘夷」
 という考えが主流で、
「あくまでも、外国打ち払い」
 というのが目的だった。
 しかし、幕府は、自分たちで、講和条約を結んだことで、大っぴらに外国の打ち払いなどできるわけはなかった。
「条約を結んだ国に対して攻撃するということは、国際的に許されることではない」
 ということで、藩や朝廷に対して、強く出たいのだろうが、すでに、幕府の権威は失墜していて、大名もいうことを聴かなくなってきた。
 しかも、主要な藩が、
「外国の脅威」
 というものを、
「身に染みて分かった」
 ということになると、
「逆らうことができない」
 ということになり、
「世界のレベルに追い付いて、自国が先進国に名乗りを挙げるしかない」
 と考えるようになると、
「幕府では、これからの日本を守っていくことはできない」
 ということで、
「天皇を中心とした中央集権国家を築く」
 という発想になり、それが、
「尊王倒幕」
 というものになったのである。
 これが、
「封建制度の崩壊」
 ということになる。
 確かに、
「外国からの脅威」
 ということによって、開国し、明治維新に導かれたということで、
「明治維新というのは、外国の脅威という外的なものによってなされたことだ」
 といえるかも知れないが、もし、
「黒船来航」
 というものがなくても、世界情勢を鑑みれば、
「いずれは、どこかで明治維新と同じことが起こっていたに違いない」
 といえるだろう。
 これも、一つのパラレルワールドと考えると、
「結果は同じことだ」
 という意味で、
「開国による明治維新」
 というものが、まるで。歴史の真実ということで、
「起こるべくして起こったことだ」
 と考えられるが、考えられる他のパターンというものを考えると、
「史実の明治維新というのは、かなりのいびつな形だったのではないか?」
 とも考えられる。
 その後に起こった明治維新では、そのスローガンとして掲げられた、
「富国強兵」
「殖産興業」
 というのは、あくまでも、諸外国から強制的に結ばされた不平等条約の撤廃ということで、
「黒船来航」
 というものからの明らかな影響である。
 そうなると、日本において、富国強兵によって、軍に大きな権力を与えるということで、憲法の条文で、
「天皇は陸海軍を統帥す」
 というものがあり、
「軍は、天皇の命令以外は聴かなくてもいい」
 という特権を得ることになるのであった。
 大東亜戦争の前夜、
「軍が暴走したことで、あのような悲劇の戦争に突入した」
 と言われるが、まさにその通りであった。
 それもこれも、
「明治維新に、外国からの脅威が絡んでいる」
 ということからくるもので、アジアの他の国に比べれば。
「植民地にならなかっただけでもよかった」
 ということになるのだろうが、結末からいえば、大東亜戦争の敗北がすべてであったと考えれば、
「アジア諸国と大差があるわけではない」
 といってもいいだろう。
 日本が敗戦したことで、連合国から、民主主義を押し付けられる。
 それまでの体制とはまったく違った考えの元、
「日本は生まれ変わった」
 ということであれば、それを、
「封建制度が崩壊したことによって、新たな政府ができたことで、いろいろな改革がおこなわれ」
 それを、
「明治維新」
 というのであれば、敗戦を機に、新たな国家体制が生まれたということであれば、それを、
作品名:対となる能力 作家名:森本晃次