対となる能力
「昭和維新だとどうして言わないのか?」
という疑問が残るのであった。
あくまでも、新しい政府は、
「占領軍」
によって統治されたことで、最終的に、統治が終わり、日本の新政府にその統治が委ねられるということになったのだから、
「さすがに、他力本願の改革」
ということで、
「昭和維新」
というわけにはいかないということになるのであろう。
この街の、南部の人たちは、これくらいの歴史認識は持っていた。
だから、閉鎖的な北部の人たちに対して、
「封建的だ」
という発想は持っていない。
あくまでも、
「封建的だ」
と考えるのは、
「江戸幕府の政策に、鎖国政策というものがあったからだ」
ということになる。
鎖国政策を行った理由としては、
「大きく二つあるのではないか?」
ということであった。
一つは、
「キリスト教を廃止させる」
という理由からであった。
そして、もう一つは、
「長崎の出島において、オランダ、清国とだけ貿易を行っているが、それはあくまでも、幕府の独占」
ということであったのだ。
豊臣時代に、秀吉が、
「バテレン追放令」
というものを発し、キリスト教の布教を禁止したが、しかし、諸外国との貿易を、優先したことで、
「バテレン追放令」
というものが、曖昧になってしまったという事実があった。
それを、幕府は警戒したのか、
「もっと徹底的にやらなければ、どちらもうまくいかない」
ということからの、
「鎖国政策」
だったのかも知れない。
そこには、諸外国の思惑もあったのかも知れない。
幕府にいろいろな入れ知恵をすることで、諸外国も利権をえようと考えるので、その言い分は、
「自分たちに有利な言い分」
でしかないだろう。
幕府とすれば、
「あくまでも、貿易の中心は自分たちだ」
と思っているとすれば、
「信じられる国だけを貿易の対象とし、それ以外は、締めだす」
ということで、
「鎖国政策」
ということになったのだろう。
それを考えると、
「オランダが選ばれた」
ということは、徳川幕府の歴史においても、その後の歴史においても、大きなことだったと言ってもいいだろう。
「国家体制において、封建制度と、大日本帝国における、立憲君主国。さらに、敗戦後の民主主義」
というものは、それぞれに、その変革において。
「外国からの大いなる影響」
というものがあったと言ってもいいだろう。
そういう意味で、
「封建制度において、日本が鎖国政策を取った」
というのは、間違いではないと思えるが、その後の開国から以降の歴史として、
「後れを取った日本において、諸外国に必死になって追い付け追い越せ」
という発想は悪くはないが、世界情勢に、日本という国が、
「国家規模として、耐えることができなかった」
というのが、一番大きな理由なのではないだろうか?
それを考えると、
「日本という国は、一度は、亡国となり復活してきた。それは、明治日本においても、昭和の日本においても言えることである」
といえるかも知れないが、
「では、今の日本を亡国と考えるとすれば、今日本が向かっている方向は、明らかに、亡国一直線ということであり、世界情勢から考えても、いくらひいき目に見たとしても、日本に対して優位な状況は、まったくない」
と言ってもいいだろう。
何といっても、今の政治家が腐り言っていて、
「ソーリには、誰がなっても同じで、最悪であるソーリの代わりすらいない」
ということが、
「日本という国が、亡国に一直線である」
ということを証明しているだろう。
国家元首が、国民のことを考えず、自分の権威や、利益だけを考えてしまえば、
「それこそが亡国なのだ」
ということになるであろう。
その初老の男性とは、そういう歴史の話であったり、タイムトラベルのような話を好きですることが多かった。
最初から、この喫茶店で、そんな話をしていたわけではないのだが、元々は、その初老の男性と話をするようになったのは、マスターの口利きがあったからだ。
歴史の話に造詣が深いということで、最初の頃はマスターに、そういう歴史の話をよくしていた。さすがに、マスターは、友達もなかなかついてこれないような歴史の話をついてきてくれた。それが、
「本当に歴史が好きなのか」
それとも、
「歴史に造詣が深いだけなのか」
それとも、
「話題性が広い中での、歴史という話題なのか?」
のどれかであろうが、正直、すぐには分からなかった。
だが、話をしてみると、次第に、あすったーとの話が噛み合わなくなってくることから、
「真から歴史が好きだということはないのだろう」
と思うようになった。
となると、普通に考えれば、
「話題性が広い中での、歴史という話題なのだろう」
と思うのだった。
では、マスターにとっての歴史というのは、何であるかを聴いてみた。
すると、
「話題としての歴史だね。学問としては、よくわからないので。造詣が深いということではないと思うんだ」
というではないか。
つまりは、マスタとすれば、
「歴史というものを、学問としてなのか、話題としてなのかということを聴きたかったという自分の考えを分かってくれているんだろうな」
と山本は思った。
だから。
「ここまで話に付き合ってくれただけでも。マスターにはお礼を言わないといけないだろうな」
と感じたのだ。
歴史という学問では、興味が湧かないと思ったので、マスターに、
「タイムトラベル」
の話をしていた。
すると、マスターは、また話に食らいついてくれた。しかし、今回は、歴史の話と違い、今回は、結構、興味を持ってくれているのが分かったのだ。
「歴史の話よりも、面白いでしょう?」
と、ある程度、タイムトラベルの話に花が咲いてきたのを感じると。山本がマスターにそういった。
マスターはまんざらでもないという思いもあったが、山本の頭の中に含みがあるということに気が付いたのか。その雰囲気に、
「やられた」
という感情が出てきたのを感じた。
山本は、
「してやったり」
という思いを抱いたが。お互いに、すでに気心が知れていたので、二人とも悪い気はしていないと思えたのだ。
山本は、マスターの気持ちを、マスターは山本の思惑を分かっていて、お互いに、
「気心が知れた会話」
というものを楽しみことができている。
これが、お互い、
「ツーといえば、カー」
ということなのであろう。
そんな、SFチックな話をしている時、話に飛び込んできたのが、この初老の男性だったのだ。
最初は、カウンターの横で話を聞いているだけだった。そして、山本は、隣に、その男がいるということを分かっていて、無視してマスターと話をしていたが、それでも、この男が、話に入ってくるということであっても、
「それはそれで別に構わない」
と思っていた。
その男性は、
「間違いなく話を聞いている」
とは思っていたが、どこまで理解できているのかまでは、正直分からなかった。
だか、時々、マスターの話に、その男性が頷いていることに気づくと、
「俺の話には何も感じないのだろうか?」