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対となる能力

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 などであれば、店の名前の先頭に、
「本家」
「元祖」
 などというものをつけることで、真剣にライバル視しているというのを見て、思わず苦笑いをしてしまいたくなる状況があったとしても、小説やドラマなどでは、必ず、その理由を示したところで、その解決策に、
「争いとなった最初の確執をいかに解消するか?」
 ということが問題になるということを考えさせられるというものである。
 そんなライバル意識を持っていることで、
「さすがに住宅地だけは、同じ構造にしているが、それ以外は、北部は北部のいいところを前面に押し出す」
 ということで、完全に、他の街とは違った特徴を醸しだしているのであった。
 だから、南部の人たちの中には、
「北部の情緒が好きだ」
 と思っている人も結構いて、北部の店で、購入している人の一定数は、南部の人だったりするのであった。
 さすがに、
「市民が、どこで購入するか?」
 ということを、行政が制限することなどできるわけもない。南部の方とすれば、あまり気持ちのいいものではなかったが、だからと言って、
「北部に歩み寄るなんてこと、できっこない」
 と思っていたのだった。
 そんな北部と南部の人の考え方は、住んでいるところの考え方が反映されると言っていいものか、
「北部の人は、考え方も情緒がある」
 と言ってもよかった。
 芸術や文芸というものを好む」
 という人が多かった。
 北部には、大学もあり、ここでは、一般の人に対しての公開講義というものを頻繁に行っていて、住民と、大学生の交流というのも、結構行われていた。
 この街の北部に住んでいる人は、ほとんどが、商いを営む家を、代々継いでいる人が多いということで、南部のように、
「入れ替わりが激しい」
 という土地ではなかった。
 北部では、そんな昔からの封建的なものに嫌気がさして、家を飛び出した、
「元跡取り」
 という人も少なくはなかった。
 彼らは、
「一度意地を張って飛び出してしまうと。二度と戻れない」
 ということもあってか、その思いは、かなりの覚悟があったことだろう。
 だから、さすがに、
「飛び出すことは最後の手段」
 ということで、飛び出すことを躊躇する人も多かった。
 そのうちに、
「この街を守るのも悪くない」
 と思うようになり、家を継ぐという人が、結果的にほとんどなのであった。
 それだけ、
「大人になった」
 と言ってもいいだろう。
 そんな中で、山本が、
「贔屓にしている店」
 というものがあった。
 その店は、
「昭和レトロを思わせるような喫茶店」
 であった。
 純喫茶と言ってもいいのだろうが、軽食もあり、その味は、まさに、
「昭和の味」
 だったのだ。
 それこそ、
「お子様ランチ」
 と呼ばれた、
「チキンライスの上に、つまようじに日の丸とかたどった国旗を付けたものが施された、昔懐かしのお子様ランチ」
 である。
 もちろん、大人が頼んでも別に構わない。
 昔のお子様ランチも、別に、
「大人が頼んでも、誰も文句をいう人はいないだろうが、まわりの目を考えると、とってもじゃないが、誰が頼むというのか」
 ということを思えば、
「大人が頼むなんて」
 ということで、結局誰も頼むことはない。
 それぞれに、けん制しあっているということで、
「意識以上に、常識だと考えると、当たり前のように、お子様ランチは、子供のもの」
 ということになるのだった。
 本当は、
「大人になってから、昔を懐かしんで頼みたい」
 と思うものが、お子様ランチではないか?
 という考えからか、
「お子様ランチは、大人専用」
 ということになっているのだった。
 ただ、他のメニューにおいて、
「子供のためのオリジナル」
 ということで、昭和の子供が好きだったような味を復刻し、それが、人気になっていたのだった。
 その評判はどこから出てきたのかは分からないが、今の、
「SNSブーム」
 ということで、いわゆる、
「バズった」
 とでもいえばいいのか、
「口コミ」
 なるネットでの宣伝を見て、結構全国から客がやってくるようになったのだ。
 だが、そもそもは、
「地元の連中のために作った店」
 ということで、店主は、
「どのようにしようか?」
 ということを考えてみたようだ。
 そこで、考えたのが、
「夕方までは、観光客用」
 ということで、夜の6時から10時までを、
「地元の人専用」
 という時間帯にしたのだった。
 営業時間は、昼の1時から開店ということであった。
 そもそも、
「金儲けというのは、二の次」
 ということであった。
「一時からでも、十分に収益がある」
 ということで、ランチタイムも、
「夕方まで」
 ということにしていた。
 つまりは、
「観光客用の時間すべてに、ランチタイム」
 ということであった。
 人も、昼の時間帯に雇うようにしていて、夜の時間帯は、
「旦那と奥さんの二人で営業」
 ということで、
「ゆっくりとした経営」
 ということになっているのであった。
 だから、夜の客というと、そのほとんどが、
「常連」
 であった。
 この店は、木造建築で、冬などでは、窓に湿気からか、いつも曇っているという雰囲気のところであった、
 入口の扉には、重厚な金属の鐘が掛けてあって。まるで、
「アルプスで飼われている家畜としての羊が、首からぶら下げている鐘のような音が、鈍さの中に、響く音を醸しだしているのだった」
 今の時代の、昔の喫茶店を知らない人は、ほとんどなじみはないかも知れない。
 今でもその音を感じることができるとすれば、
「避暑地における山小屋」
 であったり、
「ペンションのようなところ」
 ということではないだろうか。
 それを考えると、
「昭和というものが終わってから、三十年以上も経っているが、その半分の十数年前というと、そんな昔には感じないけどな」
 と思えるのだった。
 山本は、昭和という時代をほとんど知らない。
 まだ三十歳代ということで、生まれたのが、昭和末期くらいだった。だから、
「国鉄や、電電公社」
 などと言われても、
「社会科の授業で習った」
 という程度のものではないだろうか?
 山本は、歴史が好きで、特に昭和時代のことは研究していたりしたので、その分は、自分でもある程度調査をしたりしていた。
 実際に、全国にも、
「昭和レトロ」
 ということで、その時代を思わせる観光地がいくつもあるので、実際に、休暇を取って行ったりもしたというものであった。
 そもそも、そんな街に観光に行くようになったのは、
「この街を知ってからだった」
 この街に移ってきたのは、仕事の関係ということで、
「仕方がない」
 ということではあったが、実際に移ってきて、最初は不本意とも感じたが、北部に住むようになって、次第に、その情緒に触れるようになってからだった。
 この街には、昔、もう一つ昭和を思い起こされる店ということで、飲み屋があった。
 そこの女の子を気に入って、よく通ったものだったが、経営不振が原因なのか、ハッキリとはしない中で、店が閉店してしまった。
作品名:対となる能力 作家名:森本晃次